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010話 はじめてのおつかい

『で、次の演目がなんだっけ?』


 そのとき、はずしてわきに置いていたスニャッチがバイブ音をあげてふるえだした。確かにコントローラあたりに振動機能がついているが、この音と感覚は、”携帯の呼び出し”っぽい感じのやつだ。


『(これ、ひょっとして呼ばれてる?どうやって出るの?)』


 もう一回かぶればよいのかな?また取れなくなるとかないよね??


「(どうやらお時間みたい。説明終わってニャいけど、急いで向かってほしい”パーリィ”があるから、お呼びがかかってるニャ)」


 さっきのことがあるから腰が引けているが、そうこう言っている間にも呼び出しのバイブ音は続いていて、いい加減うざったい。


『(ぱ、ぱーりぃ?)』


 状況に似つかわしくない言葉がとびでてきたため、思わず聞き返す。


「(とりあえず、こいつはもっかいかぶってほしいニャ)」


 背中から触手が出てきてスニャッチ本体を拾う。そしてそのままノールックでダンクをきめるように、こちらの頭にかぶせてきた。びっくりしたがおもったよりすんなりとヘッドセットが頭におさまり、装着した瞬間、画面に映っていたものが切り替わった。


 スニャッチの起動画面が表示され、そのあとゲームのタイトル画面っぽいものが数秒表示されていた。とっさでタイトルは読めなかったが、次に画面は部屋の景色に戻る。画面の端のほうにはいくつか情報が表示されている、名前とか謎ゲージとか。時計も表示されていたが、時間は二時八分!思ったより時間がたっている!!


 そして、画面はしにあった”手紙の封筒”型のアイコンが点滅し、CGで描画された封筒がひらひらと、目の前で開封された。


「パーリィのおさそいです。こちら、時間指定の開催となります」


 ゲーム画面から、リーサとは別の声が聞こえてきた。表示されている文字は、日本語や英語表記ではなさそうで、サイズも小さいが読めない。文章の下に記載されている地図がぐりぐり動いて描画されている。スタート位置として表示されている建物は、今いるアパートの自室だ。


 そこから線がのび、部屋を出て、アパートの区画を飛び出してゆく。そこからしばらく進んだ先、さし示している場所は心当たりがあった。


『(この場所、一番近いコンビニだよな?)』


「この場所、ショウさんのおうちから最寄りのコンビニでパーリィが始まります。二時三十分に、コンビニ裏の倉庫の壁付近に”敵”が出現します。」


 矢印はコンビニの裏口でとまった。たしかコンテナ型の倉庫があって、店員が袋を担いで向かうのを見たことがある。さしたポイントの先で、半透明の赤い丸が現れ、どくどくとうごきはじめる。


「敵は、動き始めたら深夜バイトの青年のところに一目散に向かいます。被害が出る前にそれを撃破してください。」


『(パーリィとは言っているが、要はターゲット撃破のミッションだなこりゃ。でも、深夜とはいえ、これつけて出歩かなきゃならないの!?)』


「(ひとまず袋にでも隠して、つけるのは行ってから、トイレでも借りればよいニャ。さぁ、急ぐニャ。)」


 このメッセージはリーサの声で聞こえてきた。せかされるまま隅に置いていたリュックから、中身をテーブルにぶちまける。かわりにヘッドセットとコントローラ、ハンカチとティッシュを放り込む。あのコンビニまでにかかる時間も考えるとギリギリだ!急がなきゃ!!



 途中誰とも会うこともなく、街灯以外はほぼ真っ暗な道を進み、なんとかコンビニにたどり着いた。


『すいません、トイレをお借りしても?』


 なるべく自然体で、呼吸を整えつつ店員に声をかける。


「あぁ、どうぞー」


 抑揚のない声が返ってくる間にも歩みをすすめ、すべりこむようにトイレへはいる。カギをかけ、用を足すわけではないからそのまま便座に座り、リュックをあけた。ヘッドセットをかぶると、フレームやアイコンが景色にといしょにうつっている。時間表示は二時二十二分、なんとかまにあったな。


『(あと八分、こっから、どうすればいい!?)』


「敵の発生は今から七分二十秒後、”移動モード”で倉庫前まで移動し、”射撃モード”で出現しようとする瞬間の敵を狙い撃ちしてください」


 なにやらゲージやらアイコンやら、説明っぽい文字も表示されている。


 アイコン表示も出ているが、やはり文字は読めない。


「右上の銃のモード表示、現在は"くつのマーク"が表示されている状態ですが、このときトリガーをひいて撃つと、立っている場所から逆方向へ移動できます。空気をふきだして推進力にするかんじです」


『移動、これじゃすぐドアにぶつかっちゃうけど?』


「障害物は無視できます。トイレのドア、壁をすり抜けて、倉庫前までゆきましょう」


 とりあえずコントローラを銃の要領で構え、トリガーを押してみると、座った目線のまま視界が動き、視界が後ろにさがってゆく。ドアが遠のき、うしろのタンクをすり抜け、そのまま店の外に出てしまった。


「と、とりあえず外へ出たのでそのまま倉庫前へ向かいましょう」




 そうか、空気をふきだすようにとかいってたな。


『(それなら、こうすればどうだ!?)』


 コントローラを手元に戻し、持ちかたを逆にして持ってみる。この角度なら平気だろうと、少し押してみると、今度は前に進んでくれた。


『(よし!)』


 トイレに座っているだけだが、操作の分景色は動いてゆく。そのまま壁や建物に重ならないよう突き進む。どうやら長く押すとその分スピードもあがってゆくようだ。今度は曲がるための角度調整だ。


 片手のみコントローラの向きを変え、試しに撃ってみると、撃った分角度が変わる。これなら曲がることもできそうだ。


「コツをつかんだようですね。すばらしい適性です!それでは行きましょう!!」


 壁伝いに進み、店舗の端まで突き進み、角を曲がる。曲がりながら壁の端に手を伸ばしてみたが、やはり感触はない。そして倉庫の前についたところで、思わず目の前の光景に絶句する。


『なにこれ!?』


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