表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/24

菩薩と天女

 ―極楽浄土―


 二十五年前


「あわわ、あわわわわ」


 赤く点滅している記憶リセットボタンを前に、青白い顔の菩薩が転生マシンの側面をボコボコ叩く。


「菩薩様! 何をしているんですの。壊れてしまいますわ」


「あ~ん。天女ちゃ~ん。どないしよ~」


 天女の足元で菩薩が四つん這いになって首をうな垂れている。


「これ~。わし、押さなかった?」


「さぁ?」


「どないしよ~。更迭もののミスしてもうた~」


「まぁ! 菩薩様がいなくなったら、私も浄土から追い出されてしまいわすわ。私、

就労ビザですよ」


 天女が転生マシンを一点に見つめた、次の瞬間。



『ドンッ。パリン』


 天板に強烈なかかと落しを食らわせた。


 菩薩は頭を抱えて、目を白黒させている。


「故障したことにしますわ。絶対に口を割るんじゃありませんよ」


「無理じゃろ~あいつらがあの世で口を割って、この世の存在が公になったら…」


「誰が信じます? もともと、この世のことはファンタジーとしてぼんやり描かれて

いますから、今更ですよ」


「それも、そうじゃが、悪い奴は極楽浄土ビジネスするじゃろ。如来様はあれが反吐が出るほど嫌いでな、枕元に立つそうな」


「それで?」


「枕元で事情聴取じゃ」


「ばれるわね」


「ほら~」


 菩薩は天女の羽衣の裾で涙と鼻水を拭う。


 対して、天女はいたって冷静にほくそ笑んだ。その笑みはまるで悪魔の微笑だ。



「ラッキー。男の方は大金持ちの家に行きましたよ。」

 天女は転生管理システムに善人の個人番号を入力してトレースを始める。

 「ほう。さっすが天女ちゃん。それなら怪しいビジネスはせんだろ。」

 菩薩の目がパッと輝いた。

「あ~。女の方は厳しいかも知れません。」

 菩薩の目が死んだ。

「監視が必要ですわ。危ない動きがあったら、漢音様より先に枕元に立ちましょう。」

「恥ずかしながら、わしにはその能力はない。」

 天女の顔がみるみる赤くなる。

「てめぇがミスったんだろうが!無理でも行くんだよ!あの世にな!」


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ