『東京ジャーミイ』
漏れやた溜息に、傍らのその老人が顔を上げた。
「どうした、若い人よ。」
その異国の老人は、決して上手くはないが、やさしく、ゆっくりとした日本語で話しかけてきた。
「あ、いいえ、とても美しい場所だなって思って。」
「ははっは、ありがとう。私たちの文化をわかってくれて。でも、あなたの ため息は、美しい物を見たときにでるのとは、ちがうね。どうしました?」
「はぁ、わかりますか。実は、妻とケンカしまして。」
ぼくは、ここ東京ジャーミイ・トルコ文化センターに来ているせいか、それとも異国の老人だからか、ふだん人に話せない妻の愚痴をこぼした。
「ははは、おっと、いけない。静かにしないとね。まだまだ、君は、若い。これからさ。私は84になるが この年になっても、いろいろあるが、すべて神様が許してくれる。」
そう言いながら、老人は、自分の半生を僕に話はじめた。
「おっと、礼拝の時間だ。また来なさい。話をしよう。大丈夫。あなたの奥さんは、あなた、愛しているよ。」
礼拝堂から声が聞こえる。
家に帰りたくなくて、時間を潰しに、日常から離れた異文化の場所に来ただけなのに、異国の老人の おかげだろうか家への帰り道 優しい気持ちになれた。
読んでいただき誠にありがとうございます。
以前、ふと書いた短編です。
今日のトレンドで妄想が思いつかなかったってことでは、ありません。ありませんよ。絶対にないから。ないよ。ない、ない。本当に( ̄▽ ̄;)
それでは、またお会いいたしましょう。(._.)ペコッ