アスラ
「ねぇ、あなた大丈夫?すごい血が出てるけど・・・」
誰かが話しかけてきている。すごく柔らかい声だ。だめだ意識が朦朧として顔がわからない。口は...大丈夫動きそうだ。
かすれた声を絞り出す
「いや、ちょっと大丈夫じゃないな。魔獣に襲われてこのざまだ。これじゃそのうち死ぬだろうな。」
「魔獣!? 魔獣が獲物と決めたものを見逃すとは考えにくいわね。 ねぇ、襲われたのっていつ頃?」
「1時間くらい前かな。」
「ちょうど私がこっち方面に来たのと同じタイミング...偶然とは考えにくいか。と言うことは、これは私にとって魔獣からの罠の可能性が高いわね。」
そう言うと少女らしきその子は立ち上がり「少し待っててね、すぐ終わらせるから」といい茂み方へ走っていった。
すぐに響く轟音、木がなぎ倒されるような音が聞こえてきた。
(まさか あの子戦っているのか?)
するとすぐ音が鳴りやんだ。
(まさか殺されたんじゃ・・・)
しかしそれは杞憂だった。あの柔らかい声が聞こえてきた。
「終わったわよ~あの魔獣あなたを餌に私をおびき出していたみたいね。まぁ返り討ちにしてあげたわ♪それであなた魔族よね。光属性に分類される回復魔法をかけても大丈夫なのかしら?」
「あぁ問題ない、魔族が光に弱いというのは過去の話だ。今は大丈夫だ」
「そう、初級魔法しか使えないけど応急処置ぐらいはできるわ」
「君はたぶん人族だろ、魔族を助けて大丈夫なのか?」
「大丈夫よ、私は自分で見たものを信じることにしているの。第一あの魔獣に負けるあなたに負けるとは思わないわ。」
「はは、それもそうか」
そう言い少女は俺に初級回復魔法【回復】をかけてくれた。
鈍痛が収まり視界だ回復してきた。その少女は燃えるような紅の髪を肩くらいまで伸ばしており、深い蒼の瞳をしており、凛々しさの中に幼さを残したような顔立ちで、何が言いたいかと言うと
とても美しかった。
「どう?回復したかしら?傷は塞いだけどあくまで応急処置だか...って聞いてるの?」
「!?あ、ああ聞いてるよ。ありがとう。助かったよ」
「そうよかったわ、私は家に帰るけどあなたはどうするの?」
「俺にはいくところがない、追放されたんだ魔族領から」
「ふぅ~ん訳ありってわけね。じゃあうちに来ない?」
「え!人族の家にかい?俺殺されるの!?」
「殺さないわよ!そうね...私の【幻惑魔法】で角を隠すのはどうかしら?」
「闇属性の魔法も使えるのか。それなら大丈夫かもしれないな。」
「決まりね♪行きましょ。そういえば名乗ってなかったわね。私はエレノア=アレインスター。アレインスター騎士公爵家三女よ。好きに呼んでちょうだい。」
「まさかの騎士公爵家とは・・・本当に死ぬんじゃないのか俺...俺の名は“アスラ”ただのアスラだ。よろしくな。
「よろしくねアスラ♪じゃあついてきて!」
まだ日が高く涼しい風が流れ、気持ちの良い春の気候を感じるある日。
こうして私は自分の運命を大きく変える彼“アスラ”に出会った。