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真夜中のオリンピック  作者: ばつこ
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溶けたバナナ

溶けたバナナを瞳にねじ込むと太陽が雲から顔を出したので黒い斑点のついた皮を

隣のばあちゃんにあげた。ばあちゃんはお返しに溶けたタイ焼きをくれた。

風を爪の垢にしてみると指先がスースーする。むかし皮膚だったものの名残で

太陽にお返しをするんだ、ダニの死骸も蒸発してスズメの群れになるから。

雨が降ってるときの匂いってわたしたちの腐った匂いに似てない?似てないか。

でもビデオショップの18歳未満禁止コーナーってあるんだけどあそこの匂いには

似てるかもしれない、あと学校の帰り道に石ころを蹴っ飛ばしてるときのせつなさ

にも。似てないか。ばあちゃんの干からびた皮膚ってわたしたちが封印してる思い

出の中で抵抗を続ける何かに近くてそれは罪というのか恥じらいというのか知らな

いけどなんだか歯がゆい。時間にボコボコにされたじいちゃんばあちゃんたちは復

讐のためにいつかは墓の中で骨壺の周りに生えてきたタンポポをめでてみる、でも

それはとてもよいことだと思う。わたしだって昔はタンポポだったし今では鳩の糞

だけど隣のばあちゃんにかわいがられたことぐらい植物だったことのあるひとなら

きっとあるでしょ。溶けたバナナの方がおいしいよと教えてくれて初めて溶けたバ

ナナも(それはそれで)おいしいことに気付けるのがわたしたち植物経験者の最初の

学びだったのかもしれない。もし太陽もあのばあちゃんみたいな皮膚をしているの

なら用水路のほとりに立ってトンボが止まるまで指を空に突き出しているといい。

雲から何が落ちて来てもわたしたちは空に指を突き出すのをやめないだろうしとき

どき太陽をチラ見もしてみるだろう。その度まぶたの裏側に焼き付いたあのりんか

くを見つめて明日の雨が何を腐らせるのかしりたいと思う。


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