夢の少年
聞こえるだろう 君にも世界が終わる音が
あぁ、ひどい傷だね、手当てが必要だ
大丈夫、もうすぐ、もうすぐ、僕らの世界は終わる
だから安心して、君を何度だって救って見せるから
――――――――おやすみ――――――――「奏」―――――――
瓦礫の崩れる音と、瞳に映る真っ暗な闇、そして泣いている少年
「―――――――※※※※※※※――――――――」
少年の涙が頬に伝い、何かを語りかけてくる
何だというのか、身体に力は入らず、ぴくりとも手は動かない
ただ、ただ、大丈夫だと伝えたい一心で少年に視線を向けた
耳は遠く、目蓋が次第に落ちてきて、意識は遠ざかっていく
目を必死に開けば、少年は涙を流しながら、優しい笑みを浮かべて握っていた手を離していく
それがなんだか、凄く切なくて苦しくて悲しくなった。
僕は彼のことを知らないはずなのに。
分からない少年の名前が、分からない此処は何処か、自分はどうなっているのか。
何よりどうしてこんなにも心を締め付けるような痛みが彼を見ると襲ってくるのだろう。
そんな思考の中で、遠くへと足を進める彼の姿があった。
(ま…待って、待って、行かないで)
離れないで、そう叫んでいるはずなのに声は出ず
ただただ、見つめる
ノイズ音が耳にこだました
『かなで____おやすみなさい____いい夢を』
霧が少年を包み込んだ、重たい目蓋の裏に、彼の姿をやきつけて