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武具と魔法とモンスターと【VE】  作者: Pucci
-影狼- 狼
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49/60

◇1




───なぁカイト、知ってるか? 遠くの大陸には妖酒ようしゅっていう “アヤカシ” が造った酒があるんだぜ!



昔、お前が自慢気に話してくれた。破棄エリアから拾ってきた紙切れを見て、自慢気に。

俺達は酒の味も匂いも、色も、何も知らない子供だったのに、お前は見た事もない酒の話を楽しそうにしてた。



───大人になったら一緒に呑もうぜ、妖酒ってやつを! 約束な!


───何年先の話をしてるんだよお前は。


───今15だから.....5年だろ?


───5年.....お前とはもう10年の付き合いか。


───なんだぁ? 年寄りくさいぞカイト。


───お前は.....いい加減大人になれよ、トウヤ。


───俺達まだ酒も呑めない子供だろ。それより約束な!?


───わかったよ、約束だ。



5歳の時出会った俺達は15歳で他愛ない約束をして、最後は俺が───お前から眼をそらし、俺達の約束は二度と叶わないものと。



あれから10年の月日が流れ、俺は今、シルキ大陸にある【摩天楼】の四層広間で息を飲んだ。


「今度は何のアヤカシだぁ? クソネミ、アイツ何だ?」


青髪───水色髪の魔女【エミリオ】は余裕の無い声で眼の前に立つ男が何のアヤカシなのか、眠喰バク 族の生き残り【すいみん】へ訪ねる。


「あの人は......人間!? それと、アヤカシじゃなくて妖怪! アヤカシは───」


「わかったって、つーか何で人間がピンピンしてんだ?」


「私にもそれはわからないけど、サクラ病にかかってないなら早くきょうへ避難しないと.....あの人も危ないよ」


「時間ねーってのに.......。おいお前! なんでここに居るのか知らねーけど、さっさと京へ帰れ!」


魔女がそう言い、最上階への階段へ向かおうと広間を進んだ瞬間、その人間は警告するように妖術を使った。


「帰るのはお前らだ。さっさと行けば見逃してやるよ」


「お前も塔のヌシかよ.........時間ねーって言ったろ? 邪魔すんなら消すぞ、眼隠し白髪野郎」



魔女の瞳が濃い色を放ち、空気をピリつかせる。そんな中で俺は、


「エミー。ここは任せてくれないか?」


魔女を止めるように呟き、一歩進んだ。魔女は何も言わず俺を見て頷き、眠喰バクと共に上の層.....五層へ。


「.....追わなくていいのか?」


俺は自分の声が妙に震えている事に気付いたのは、発言してからだった。


「俺がお前を殺してすぐに追えばいいだけの話だ。下もここと同じように、ひとり残して登ってきたんだろ?」


この声、髪の色、そして雰囲気。似ている......似すぎている。


「俺を殺して、か.....ずいぶん変わったな。お前」


「───?」


「お前とやるのは何十年ぶりだ? 俺に勝てるまで強くなったか? トウヤ」


「───お前......カイト、か?」




俺達の約束は二度と叶わないものとなった。と 思っていたが───トウヤは生きていた。

あの状況で生き残れるわけが.......いや、そんな事はもうどうでもいい。


あの時お前が他人のためにあそこまで動けた理由、今なら少しわかる気がする。



あの時、俺は───。







武具と魔法とモンスターと

Various Episode [VE]

-影狼- 狼 ヴォルフ ヘイズ









熱帯地域、砂や鉱石、鉄屑の大陸イフリー。

その首都【デザリア】の騎士団が管理する区。通称【軍区】にある名も無い建物。大人達はここを【ラビッシュ】と呼ぶ。意味は知らない。


俺はこのラビッシュで5歳から暮らしていて、今は15歳。

実に10年もラビッシュで生活している。


「くっそー。お前少しは手加減しろよな、カイト」


カイトというのは俺の名前。

親がつけてくれた名前だが、親の記憶はない。どんな理由か知らないがこのラビッシュに集められた子供達はみんな、親と生活した事がない。俺の隣で肩に手を置き唇を尖らせる男【トウヤ】も同じく。


「手加減してちゃ意味ないだろ? それより、さっき軍の人達が見に来てたの気付いたか?」


このラビッシュを管理しているのはデザリア騎士団───軍なので、軍の人達が出入りするのは不思議ではない。さっき俺とトウヤは剣の稽古をしたのだが、それも軍の人が幼い俺達に教え込んだ事。最初は軍の大人が指導してくれていたが、10年経った今は各自稽古をする日々。


「マジか!? もしかして俺達を軍に推薦してくれるのか!?」


瞳を輝かせ歓喜の声を喉で止めるトウヤへ呆れた視線を送る俺だが、俺も同じ事を考えていた。ここで剣の腕を見込まれた子供はデザリア騎士団に入団する事になっている。もう何人、何十人とラビッシュから引き抜かれているのを俺もトウヤも間近で見た事がある。


「いいな.....軍の施設はここなんかより綺麗なんだろうなぁ」


「当たり前だろ。ここは.....鉄屑で組まれた育成施設だろ。それと、軍じゃなくて騎士団な」


俺は冷たい壁を辿るように視線を上げ、やけに高い天井へ眼を向け隙間から見えるイフリーの太陽を睨んだ。

俺達は外に出る事を許されない。逃げ出そうとすれば───。ここから出る方法はひとつ。それはデザリア騎士団に入団する事。

いつか必ずここから出て、騎士になって、今の数倍いい暮らしをしてやる。



「.....腹へったなーカイト、昼飯食いに行こうぜ」


「そうだな.....行くか」



ここにいれば食べる事に困らない。どう頑張っても美味しいとは言えない食事だが、食事は与えられる。

寝床も一応ある。シャワーも毎日ではないが浴びる事が出来る。ここにいれば困る事はないが───それ以上がない。



俺は必ずここを出てやるんだ。必ず。





昼食は味気のないスープとスジっぽい肉、それとパサつく芋だった。

それでもトウヤは喜んで食べていた。


「さっきの肉って何の肉だったんだろうな? スジマジロ?」


「あー.....ぽいな。あの固くてちょっと臭い感じ、好きにはなれないな」


「そうかー? 俺は別に嫌いじゃない.....けど、好きでもないな」


「だろ? デザートバードの方がまだ旨い」


毎日毎回、食事のあとはこんな会話が始まる。鉄板を敷き詰めただけの廊下を2人で歩き、部屋へ戻る間は必ずトウヤと食べ物の話をする。部屋に俺とトウヤのふたり部屋。他の人達もペアでひとつの部屋を与えられ、剣の稽古が終わると決まって部屋には仕事が。


「うっわ、今日は盾磨きかよ.....」


デザリア騎士団の装備品を軽く整備するのが俺達の仕事で、今日は盾だ。ノムー大陸のドメイライト騎士団は専属のスミスがいて、装備品は全てそのスミスが管理している。と、別の部屋のヤツから聞いた事がある。武具の性能やデザインはデザリアと比べ物にならないとか。

まぁ.....見た事ない俺でもそれは納得出来る。デザリアの装備はどこか無機質というか武骨というか.....ネジや鉄板、鉄屑で作られたような武具がデザリア騎士の武具だ。


「50はあるな.....頑張るか」


俺はそう言い、工具箱を取り出した。トウヤは嫌そうな顔をしつつも、仕事はキッチリ片付けるヤツなので助かる。


「なぁトウヤ.....お前は外に出たら何したい?」


「俺? そうだな......悪いその工具貸してくれ」


「おう、俺はそっちの貸してくれ」


会話しつつも手を動かし、盾の整備をする。緩んでいる部分を締めたり、表面にスジマジロの油を薄く塗って光沢をつけたり、あまり面白くない作業だが、この時間を使い俺達は色々な話をする。俺はこの時間がわりと好きだ。


「外に出たらまず、旨いもんを食いたいな。スジマジロもデザートバードも二度と食えなくなるくらい旨いもん」


「その2つは肉じゃ最低だろ」


「わかんないぜ? 世界は広いってよく聞くし、もしかしたら.....スジマジロを10倍固く臭くしたような肉があるかもしれん」


「.....それはそれで.....食べてみたいと思う俺がいる」



なんの色気もない食べ物の話を男2人でしつつ、盾磨きを終えた丁度その頃、部屋の扉が3度ノックされた。

普段部屋を訪れる者はいない。俺もトウヤも幼い頃は悪戯で別の部屋をノックした事があるものの、この年齢になってやるヤツはいない。


「なんだ? トウヤ、悪いけど対応してくれ」


「お前の方が近いだろカイト」


確かにトウヤの言う通り俺の方が扉に近い位置で作業していた。しかし、


「手にスジマジロの油がついてるんだよ。この手でいいなら対応するけど」


「あーあーやめろやめろ、そいつの油は鉄素材につくと拭き取るのに何時間もかかっちまう。俺がいくから早く手の油拭き取れよ」


スジマジロの革で作られたクロスをトウヤは俺へ投げ渡し、扉へ。

肉は不味く、油はねっとりと手に絡み付くスジマジロだが、このイフリー大陸では貴重な食料で資源にもなるモンスター。鱗や革、油も様々な事に使えるヤツなのであまりバカに出来ない。


「ついでにランプの油足しとくか」


俺はスジマジロの油をランプへ注ぎ、手に付着した油を拭き取った。


「───えぇ!? 俺とカイトが次の見習い騎士試験に!?」


「───!?」


ランプの火を揺らすほど響いたトウヤの声に俺は両眼を見開いた。見習い騎士試験、トウヤは確かにそう言った。

ここに住む子供にその言葉は、見習い騎士試験 という言葉は武具整備で与えられるヴァンズよりも、味気無い料理よりも、価値があるもの。俺はトウヤのもとへ、扉へ向かい進むとそこにはワイン色の軍服を着こなした大人、デザリア騎士が堂々とした雰囲気を纏い、立っていた。


「先程の剣劇を上の方々が見学していてな。貴様達の腕ならば一度見習い騎士試験を受けさせてやるのも悪くない、と発言なされた。カイト、トウヤ。貴様達の名を来週の試験に名を並べる。拒否権はないぞ?」


高圧的、命令の様な口調だがそれがイフリー大陸の騎士の特徴とも言える。そして俺達は幼い頃からこの言い回しに対応してきたので今さら何か思ったりはしない。


ここから先の会話は恥ずかしながら、覚えていない。

俺もトウヤも騎士の敬礼をし、全力で返事をした.....が、やはり内容は思い出せない。それくらい、俺達の心はうかれていた。


イフリー大陸 首都デザリアの騎士。

ノムー大陸 首都ドメイライトの騎士と並ぶ実力を持ち、デザリア独自の技術を使った変形武器ギミックウェポンを自在に操る騎士。


俺達【ラビッシュ】の子供達の憧れであり、目指すべき場所がデザリア騎士団。


「カイト」


「あぁ。やっと来たな」


「見せてやろうぜ、俺達の力を」


「俺だけ受かっても泣くなよ? トウヤ」


「そりゃこっちのセリフだ!」



本騎士団ではないものの、騎士になるには見習いを通る必要がある。例外もあるらしいが、俺達が辿れるルートはラビッシュで剣の実力か武具整備の実力を見出だされ、見習い騎士試験を受け、見習いから本騎士になるルートしかない。



やっとだ。やっと来た。








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