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レベル5 アルマゲドンとさけぶ君は桃色 〜コミュニケーション能力編2〜

翌日の放課後から青田鳥子の指導のもと「コミュニケーション能力」を上げるという名目のレベル上げの火蓋が切って落とされた。

彼女はその日から毎日決まってジャージ姿で俺の家に放課後通ってくる。


「わかるかしら。人の好意を操るのよ。そうすれば、あなたの対人関係がグングン伸びるわ」

彼女はまた違うジャージを着てきた。こいつはいったい何着持ってるんだ。一昨日は黒、昨日は紫、そして今日は桃色である。


「まあ、それは分かったさ。だけど好意ってのはどうやって操るんだよ」


よくぞ聞いてくれたわね。と言わんばかりの顔つきで彼女はフッフッフと笑った。


鞄からいくつか物を取り出しテーブルに並べた。

置かれたものはそれぞれデザインが異なる文房具やノートだ。

さあ。と彼女は言った。


「まずは異性の扱いね。女性というのは大体が自分のこだわりを持っているものよ。そこで超ウルトラビギナー向けの方法を教えてあげるわ」

ところでと繋げる。

「あなたの今日のTシャツオシャレでカッコいいわ。どこで売ってたの?」


む?何故この流れで?


「おう。まあなこのTシャツは親父がイタリアから送ってくれた特別なものさ。お前も見る目があるな」

流れはなんでもよいがこの良さに気づくのは中々いないもんだ。素直に嬉しかった。


「今、あなた嬉しかったでしょ?Tシャツ褒められて」

「ああ。やはり付き合いが長いから鳥子もセンスがよく分かってきたなと感心していたところだ」

彼女は蔑む眼を光らせた。


「安直ねコータロー。あなたは人を疑った方が良いわ。これはお世辞ってやつよ。人の事をひたすら褒める。それだけで大方の人物は悪い気持ちをもたずに好意を抱いてくれるわ」

「ふうん」

なんだ。要は分かりやすく説明するためにわざわざ思ってもないことを言うってことか。

ってことは今のTシャツのくだりも嘘だったのか。くそう…


「となると分かったぞ。この机の上にある物で褒めろと言いたかったのか」

「話が早いわね。まずはこの私をアイテムを使って褒める。地道だけどレベル上げのようなものよ」


ならばと俺はテーブルの文房具を凝視する。

20本ほどはあるだろうか。色が様々だ。可愛らしい水玉のボールペンから無機質なシルバーのものまであり、趣味の一貫性がない。

この中から選ぶのか。難しい問題だ。


よし、これで行こう。

「青田さんのこの鳥が描かれているポップなボールペンとても素敵だ!……どうだ?」

彼女は神妙な顔つきでこちらを見ている。


「はぁ。全然ダメよ。たぶん私の名前から連想したんだろうけど。昔言ったでしょ?私はこの鳥子っていう名前あまり好きではないって」

そうだったか?いつの話をしてるのかわからないがどうやらダメだったみたいだ。


それから他の何本で挑戦したが結果は芳しくなかった。まるで彼女はおれが失敗しその都度暴言を吐くのがこれの目的であるかのように。仕方がないこれが最期だ。訳わからんがこの羽根ペンにするか!


「青田さん!この羽根ペンとてもキュートでプリティーだ!こんなペンを使ってるなんて君はとても素敵な人なんだろうね!!」


どうだ!この口から出まかせ連続攻撃は!?

何も思いつかなかったから適当な言葉をならべただけだから、さぞかし彼女は怒るだろう。

しかしながら彼女の反応は今までのように蔑む訳でもなく怒るわけでもなかった。


「あ、あなたこのペン覚えていてくれたの?」

青田鳥子は今まで見たことない顔をしていた。頬を赤らめ、はにかむようにわらっている。

これは、もしかしたら上手くいったのか?


「お!やったぞ!適当に言えば何とかなるもんだな!これでコミュニケーション能力レベルは相当上がったな。ふむふむ確かに難しい戦いだ…った?あれどうした鳥子」

「テキトウですって…」

彼女は先ほどの反応から打って変わり鬼のような形相になった。

この様子は実にヤバい。あの最大魔法を発動するときの顔だ。


「時空から呼び覚まされたし龍の息吹きよ。今私の魔力を糧としその力を今解き放てぇ!!」

こ、これは!アルマゲドン完全詠唱か!?

鳥子がこわれた!何が起きるか分からない、ひとまずベッドに逃げこむんだ。布団を盾にするしかない。

「超大魔法ッ!アルマゲドン。ハァァアアッ!!」


青田鳥子の呪文は虚しくも何を生み出すこともなく1LDKによく響いた。


「こ、こほん」

恐る恐る布団から覗くと恥ずかしがりながら咳払いした彼女がいた。


「とにかく、あなたはこのペンを忘れてしまったのね。まあいいわ。とりあえず今のは合格よ」

「そ、そうか。良かった良かった」

布団からでた俺は安堵したが、この空気の重さは耐え難い。空気を冷たくさせ、気まずくさせる魔法ならば成功したと言えるだろう。

ひとまず話しを変えなければ


「しかし。あれだなぁ。鳥子は沢山文房具持ってるんだな」

「ええ。家にあるものをこのために持ってたの」

わざわざご苦労なことだ。

「へぇ!俺のためにか?」

「そんな訳ないでしょ!?もう」

また途端に機嫌が悪くなったようだ。

なんなんだろうか。いわゆるツンデレってやつなのか?


「べつにあなたのためではなくて、私のためよ。昔の借りをかえそうと思った出け。そへれで否応無しにレベル99の件を手伝ってるのよ!」


なるほど因果関係がしっかりしてるわけだ。

しかしそういう彼女の顔はジャージと同じ桃色だった。




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