第1-4話「油断」
「さてと、やりますか」
社長室に着いたヒロは早速キーロック装置を外し、番号解読装置のコードに一部を取り替える。
コードを挿し込み終えてスイッチを入れると解読装置の番号がスロットのように回り始め解読が始まる。
(早く早く、4…5…1…0…4…7…後ひとつ)
カッカッと足音が近付いてくるおそらく氷雨隊の見回り組だろう氷雨の手回しでここら辺は警備が少ないはずなんだがやっぱり完全にというまではいかなかったらしい。
(1…よし、後は指紋を)
ピピピピピピピピ…
『アンロックナンバー、指紋認証完了扉を開きます。』
ガチャッという音の後、社長室の扉がわずかに開く。
「!誰かいるのか?」
(ヤバ、まだ角曲がってないから見えないから大丈夫だけどこのままにしてたら不審がられるな)
ヒロは急いで外した装置を簡単に直して扉のなかに静かに入っていく。
「?…いない、気のせいだったのか」
カッカッカッ…
「ふぅ~」
足音が遠ざかるのを聞きヒロは安堵の息を静かに吐く。
(と、こうしちゃいられないな)
ヒロは足音が立たないように静かに歩き、机の上にあるノートパソコンの電源を入れる。
起動完了後ヒロはゲシュペンストから外してきた読み取り装置のコードをパソコンに接続し最新の行動データと施設内の見取り図を読み取り、吸い始める。
(ん?思ったよりも結構容量があるんだな)
読み取り完了後コードを抜き、装置をポケットにしまうと静かに部屋から出ていこうとする。
(おかしい…ゲームじゃあるまいしいくらなんでも上手くいきすぎる。…こう扉から出たら警備のやつらがずらっと拳銃を構えていないだろうな)
カチャッ───シーン
周囲に人がいないことを確認し外に出ると扉を静かに閉める。
ビウィン──パシュシュシュシュシュ
(!避けきれない)
キンキンキン…カシュ
「うがあ!?」
監視カメラに備え付けられたサブレッサー付きの機関銃の弾丸を腰のサバイバルナイフで弾くがさばききれず一発の弾丸がヒロの左目を掠める。
「グッ……くそ!」
ヒロはすぐさま体勢を立て直しサバイバルナイフを投げ、カメラと銃を分断、破壊するがその音を聞かれ警備の人たちが駆けつける。
「いでで…うくっ…(とにかく目的は果たした。後はこれを届けないとな)」
ヒロは足音を聞き、まだ人の来ていない通路を走り、近くの倉庫に逃げ込み腰のバックの包帯と薬で応急手当をしてから天井の排気口に入り込む。
(くそ…あんなものが備え付けられているなんて聞いてないぞ…ていうかなんで最初来たときはなんともなかったんだ?…まさか)
──『周辺のジャミングを開始します。』
(あのときのジャミングが働いて俺の姿がカメラに映らなかったのか?でもそんなうまいことが…いや、別にそうでもないな現に今さっきしくじったわけだし…いや、違うな来たときに気付いていれば対処もできたしこんな傷も負わずに済んだ。…泥棒とかがあらかた盗み終わってしめしめと出てきたところをつかれると弱いとよく聞くが本当だな。俺も油断したせいでこんな傷を負うはめに…なんとかの放浪者とかならこの傷も格好いいのかもしれないが…まだ20にもなってない俺じゃな……がぁぁ!何を言ってんだ俺は!……いかん傷の痛み引いたらなんかすんごい萎えてきた。)
「あ~やっちまったぁ~」
ヒロは暗雲をたちこませながら排気口を進んでいく。