第1-2話「ヒロ」
『了解しましたA.Tではこれより救出を始めます』
A.Tの通信を通信室で聞き、ヒロは救出作戦を開始する。
「さて、一兵に過ぎない俺には社長の居場所は全く教えてくれないし…ゲームとかなら聞き込みしたりとかするんだけど、どうしますかね隊長?」
とヒロは隊長である氷雨の肩を叩き聞く。
「しるか、僕に聞くな」
「やっぱそうですか。…じゃあ」
「お前のGWは隠密潜入、データ取得を目的としている。」
「(あ、教えてくれるんだ)」
「社長室に忍び込んでここの最新データを取ってこれないのか」
「それ、考えたんですけど…俺、今はIDがロックされて動かせないんですよね」
「じゃあほれ」
「!?」
頭を掻きながらヒロがそう言うと氷雨は長細い金属の棒を投げて渡す。
「IDキー?」
「破棄される予定だったお前のGWのプロトタイプのものだ一応起動はするように修復はしてコアも入れてある」
「ゲシュペンストでしたっけ?あれコストダウンのために色々なところ抜いたからか起動までが色々細かくて面倒なんだけど…ていうかそんなのあるなら早く言ってくださいよ」
「仕方ないだろ、社長がそうなっていることなんて最近まで知らなかった…それにお前が裏切ったとして牢に捕らえられている間に独自で行ったものだ仕方ないだろ」
「あなたの一人でやったものか…これは期待できないかな」
馬鹿にしたように言うヒロに何かが軽く切れた氷雨は腰のピストルを彼の頭に突き付ける。
「ほう、そんなに死にたいのか」
「あ、いえありがとう…ございます。助かります」
「あの、その物騒なものをしまってもらえる?」
「……。」
「いえ、しまってもらえませんか」
「ふん!」
氷雨は鼻で笑い、ピストルを手渡す。
「こいつも持ってけ。対GW用ハンドガン「ホライズン」まぁもしもの時のために持ってけ。後社長の指紋手袋」
「おう、サンキューな」
そう言いながらヒロはそれらを受けとる。
「お礼はいいからさっさと行け」
氷雨は笑いながらしっしっと手で追い払うようなジェスチャーをする。
「了解しました隊長」
ヒロは笑い、ビシッと敬礼をして通信室を後にした。
「ああ、それからゲシュペンスト着ていかずに中の解析装置だけを持っていけよ…あれは足音がうるさいからな」
「わーてますって…それでは」
扉が閉じる音を聞き氷雨は息を吐く。
「行ったか…(しかしどうも気がかりだな最近入ってきた新兵は神矢の命令に従順だからな。無事だといいが)いや、あいつのことだどうせへらへら笑ってやり過ごすだろう…しかし見つかるなよ僕はこれ以上は手伝えないからな」
………
「えっとゲシュペンストは…たぶんあそこだよな」
ヒロは格納庫に入って奥の「第一世代」と書かれたパネルの横にIDキーを挿し込む
『ID読み取り「ゲシュペンスト」…コンテナ開きます』
煙を上げて開かれたコンテナの中にある黒い細身のGWを軍服の上からそのまま装着、起動させる。
『ゲシュペンスト起動、操縦者への最適化のためDNAサンプル摂取始め』
プシュッと空気の抜ける音が鳴り、ヒロの腕から血液が少し抜かれる。
「つぅ~…これ保存用のデータ容量のため必要なもんの一部を抜いたからか毎回起動の時にDNAサンプルとして血を抜かれるのがきっついんだよな。かといってそれで操縦できるのも、ごく一部だけだし…まぁそんなんだから棄てられるんだけどな」
『DNAの採取および読み取り完了。ゲシュペンスト操縦者への最適化開始』
数秒後最適化が完了、ヒロは装甲をパージさせる。
『パージ完了。周辺の機器にジャミング開始』
「それはいらないって……さて、まずは校長室か…あいつら待ってるし早くしないとな」
彼は解析装置をゲシュペンストから外してしまってから格納庫を後にした。