1-18「決着」
数分後
A.Tがたどり着いた時、さっきまでいたはずのそこはまさに地獄絵図だった。
地は真っ赤に染まり残っていたはずの量産型GWは全滅、生身の隊員たちも全員倒れており、そのうちの何人かは手足のどこかが切り落とされている。
氷雨もやられ倒れて、その向こうでヒロが返り血で真っ赤になった防人と交戦している。
「でゃあ!」
「……。」
キンッキンッと刀と剣をぶつかり合いそのたびに火花が散る。
「…?なんだ?」
ルナの動きが思いの外、鈍いな…やっぱり体がもう頭に追い付かないみたいだ。
「…よし」
A.Tは剣をしまい、森の手前に落ちているバズーカを拾い標的を合わせる。
「ヒロ!下がれ!」
叫ぶと同時にA.Tは引き金を引き、ロケット弾を数弾発射する。
「ー!?」
逃げ遅れた防人に弾丸が全弾直撃、手に持っていた血のり刀が離れた場所に転がる。
「着弾確認…これでどうだ?」
「……」
「ちっ…でも、武器は吹き飛んだ。なら!」
A.Tは剣を抜きつつ接近、途中スラスターで一気に加速する。
「ー!?」
「やっぱり目に見える範囲でしか予測できないか」
A.Tはニッと笑い、剣を振る。
バシイッ!!
「はぁ!」
うっ力だけでは流石に押される。ゲーム設定だとパワー重視の敵ってことになるのか。
A.Tは後ろにとんで地面に転がっているまだ使えそうなバズーカを拾い、引き金を引く。
カンッ!カンッ!
「やっぱり普通の武器は通らないか…でも飛行の防止と時間稼ぎにはなるな」
A.Tはヒロに倒れている隊員たちを運ぶように片手でジェスチャーし、防人の前に出る。
◇
センサーに友軍反応…来たか。
『おに…A.T、アレを持ってきたよ』
「ああ、確認してる。丁寧に扱えよ」
『了解』
「ヒロ!そっちはどうだ?」
「こっちはあらかた運び終えた」
「OK交替出来るか?」
「ああ、いいぞ」
二人は位置が入れ替わるように移動し、その途中にヒロはA.Tから武器を受けとる。
「A.T!」
「来たか」
M.Tは土ぼこりをあげながら地面にゆっくり着地する。
彼女の手にもっていたのはバックパック。しかしそれには赤い鉄の太い羽が計8本付いているだけで飛行の出来るようには見えない。
「スラスタパージ」
ガコンとスラスターが外れ、M.Tはバックパックを外れたそこに接続する。
とA.Tの視界にモニターとキーボードが現れる。
「素粒子システム稼働開始」
いいつつA.Tはキーボードを操作し始める。
「バックパックユニット本体とのリンク開始…」
A.Tが操作を始めて数分後、ヒロは足を地に沈め、腕装甲の回線が焼ききれんばかりに両手で力を入れ、つばぜり合いをかける。
「……。」
しかし防人は片手で軽く受け止めると先の尖った縦長の盾を彼の腹をえぐるようにつき出す。
「しまっ…」
ドスッと鈍い音がなり、ヒロを庇った氷雨に装甲を突き破った盾が突き刺さる。
「バガ…油断するな」
氷雨はかすれた声で言ってその場に倒れる。
「隊長ぉ!」
「くっM.T、こっちの援護はいい、氷雨たちの方を援護はしろ」
「う、うん」
M.Tは最大速度、全力で防人を殴り飛ばし、氷雨たちを後ろに下がらせる。
「(急げ!)…脳波最新データ読み取り及びシステムとのリンク…完了…素粒子システム稼働……完了。よし、行け!」
パシュと8本の鉄の棒≪ビット≫が外れ、各々に飛び回り防人に近づいていく。
「ー?」
防人は砂ぼこりをあげ、飛ぼうとする。
「逃がしゃしねぇ!」
ヒロはにとんでホライズンで防人の足止めをする。
「ショット!!」
敵を射線上に捉えた3本のビットが声に反応して先の銃口が光り、エメラルドのレーザーを発射する。
防人は今まで通り腕の盾で前方からとんでくる光を防ごうとする。
「ー!?」
しかし対光学兵器用ではない盾は1点に集中のレーザーで溶け、左腕の装甲を持っていく。
「ちっ外したか…」
脳波の命令を送ってからそれが反映されるまでのタイムラグは2、3秒…それからビットとGWの並列操作。
「まだまだ調整がいるな。…だが」
A.Tは8本あるビットの射線を防人で交わるようヒロに防人を足止めさせつつ操作、エメラルドのレーザーを発射する。
まず、3本のレーザーが三角形になるよう放たれ、防人の回避を中断。
次の3本が右腕、両脚を貫き、最後の2本が顔面すれすれを通りバイザーを破壊する。
「これでどうだ?」
『…システム確認…生命維持装置に以上発生…操縦者のバイパス不安定。バイザーとのリンク強制解除確認、破壊されたと断定。最上案提示不可、戦闘続行不能。活動を停止、安全のため操縦者を排出します』
プシュと空気の抜ける音と共に高熱の蒸気の中から防人が軍服姿で倒れる。
「今度こそやった…疲れた脳波命令の遠隔操作けっこう頭にくるな」
A.Tは首を軽く降って、ゆっくりと星のない暗い空を見上げる。
「隊長!!」
ヒロはボロボロになった装甲を外し、倒れている氷雨の元へ駆け寄る。後からA.T も近づく。
氷雨は出血はナノマシンの治癒力で止まっているが体の四肢のダメージは残っているらしく虫の息だった。
「おい!氷雨、無事か?」
「…ああ」
「よし、じゃあまず、装甲を外して…」
「待て」
ヒロが≪マニュアルパージ≫に伸ばそうとした手をA.Tが止める。
「何で、止める?今すぐ医務室に連れてかないと」
「そこを見てみろ」
A.Tの指差す先は氷雨の脚部。
しかしそこにあるのは鉄の鎧というよりは水晶のようだった。さらにその水晶はどんどんと氷雨の胴にまで侵食していっていた。
「これはどういうことだ?」
焦るヒロをなだめながら A.Tは口を開く。
「このGWに使われているコアはオリジナルをコピーしたゼロ製」
「だからなんだってんだ」
「まぁ落ち着け。そいつは結晶化現象だ」
「結晶化…現象?」
「ああ、GWに搭載されている生命維持及び肉体再生治療機能の最大稼働中で起こる現象。装甲は量子化によって結晶のような個体に変化、操縦者を包み込み中で肉体の再生治療を行う。このシステムはコアに内蔵されており、そのコアを入れたGW全てに使うことが出来る」
「だがそんなものは初めて見た」
「そりゃそうだろうな」
A.Tは曖昧に返事をしながら船に高度を出来るだけ下げるように伝える。




