第1-0話「プロローグ」
2076年 8月 1:10 上空1000m
光学迷彩で姿を消した船艦が風を切って雲の中を進んでいる。
アナロギアと呼ばれているその艦乗っているのはほとんどが20歳にも満たない少年少女たちでみんなコードネームらしき名前で呼びあっている。
『アナロギア作戦目標上空に到着しました』
数分後、艦はどこかの島の工場と研究所に到着、停止する。
(いよいよか)
艦内放送を聞くと少年はワインレッドの瞳を開けて立ち上がり、肩まで伸びた白銀の髪を後ろで簡単にまとめると自室を出て格納庫に向かう。
「みんな来ているか?」
「はーい」
「ええ、来てますよ」
みんなが揃っているのを確認すると少年は壁のパネルを操作して近くのコンテナを3つオープンする。
少年は一番手前のコンテナにある白い鉄のスーツを装着する。
≪WEAPONS・GEAR(通称GW)≫
かつての第三次世界大戦で開発され大きな成果を納めたパワードスーツ。
稼働エネルギーとして≪コア≫と呼ばれる結晶を使っている。
みんなのスーツの起動確認後、少年はマスクに備え付けられた通信機を艦内と仲間に繋ぐ。
すると「Sound only」と書かれたモニターが少年たちの視界に浮かぶ。『みんなの聞こえるかこれより作戦を開始する。指揮は私A.Tがとるが問題はないか』
『問題ないぜ』
『大丈夫です』
『いいっすよ』
A.Tと名乗る銀髪の少年がそう聞くと各々の返事が返ってくる。
『よし』では降下及び救出は私とM.TそしてO.Hの三人で行う。残りのみんなは艦の機能調整やこちらへの指示等を行ってもらう。…いいか』
『『『了解!!』』
みんなの返事を聞きうなずくと壁のパネルで後部ハッチを開ける。
「うわーすごい風」
「マスクちゃんと着けとけよ」
「言わなくてもわかってるわよO.H」
「静かにしろお前ら今から作戦なんだからな」
「ごめんなさい」
「全く、あなたは本当に彼にデレデレですね」
「な!違うわよ…あなただって似合わないグラサンいっつもかけているくせに」
「なんだと!」
「なによ!」
ガヤガヤと騒がしく言い合っている二人を見てA.Tは呆れたようにため息を吐くと壁のパネルで二人のGWに軽い電気ショックを流す。
「ひゃう!?」
「く!?」
「お前らいい加減にしろ訳のわからない言い争いをするんじゃない」
「は、はーい」
「す、すいません」
「よし、では」
A.Tは白いGWのパネルを開き壁のプラグにコードを接続し操作を始める。
「現地データ再入力、ここから地上までの風向き測定…よし、それをもとに最適降下ポイント予測…完了。ではいくぞ!」
「「はい!」」
「それでは作戦…」
「「「開始!」」」
彼らはハッチから一気に飛び降りた。
…これが後の経済を大きく狂わせた事件である。