1-17「負傷」
「う、うあぁぁぁぁぁぁ」
「させない」
「バカ、よせ、たいちょー!」
氷雨は負荷がかかって動けなくなったヒロから剣を奪って飛び出し隊員たちの前に、防人の刀を受け止める。
キンッと金属のぶつかり合う音が響き、火花が散る。
しかし上から押さえつけられるような形になった氷雨はルナの力に押され脚がどんどんと地面に沈んでいく。
「ぐっ」
「……」
「どぁぁ!」「てゃあー!」…
後ろから残っていた量産GWの隊員たちが刀、剣を防人に振り降ろす。
しかし防人が振り返ったかと思った瞬間に片腕をぶんっと一度風を切ると量産型が吹き飛ばされる。
「…手刀で斬撃を飛ばしやがった」
他の隊員たちが驚愕するなかA.Tは爆発の後ろから剣を握りしめ突貫する。
「ー!!」
これは予想してなかった防人は一方的のつばぜり合いを中断して刀で対応する。
「なっ!!」
パワー負けしたA.Tは森の反対側の外まで飛ばされる。
「つっ…なんだありゃ?さっきとはパワーが段違い…」
ペッと血の混じった唾を吐き出す。
「まさか、リミッターが外れてんじゃないだろうな。…だとしたらきっついな。操縦者も自分で自分を壊すだろうし…まだ試作だがあれを使うか」
A.Tは剣を地に差し込み、通信を船艦に繋げる。
「聞こえるか?」
『あ、A.Tどうかしましたか?』
「ん?O.Hなんだ、戻ってたのか?」
『いえ、工場の人達は全員乗せ終えたのですが、こっちも氷雨隊の抵抗を受けまして今、矢神からなんです。』
「なるほどな…で、M.Tは…」
言った途端に甲高い声がキンッと耳元で響く。
『呼ばれて飛び出てなんとやら…ちゃんとあたしもいますよお!!』
「うるさいうるさい、もっとボリュームを下げろ!」
『あ、ごめん』
『ところで何か用でしょうか?』
「ああ、今敵のGWと交戦中だ。そして現在思いのほか苦戦している。O.Hには矢神の捕獲を任せてもいいか?」
『了解』
「そして、M.Tにはアレを持ってきてほしい」
『え?でもあれはまだ…』
「わかっているまだ試作段階だが威力は十分だ。頼むぞ」
『…わかった。もう少しで修復と補給が終わるから、そしたら全力で持っていくね』
「…頼んだぞ」
『了解』
A.Tは通信を切り、急いで二人のもとへ戻るためにスラスターを最大で吹かす。
防人はA.Tを吹き飛ばしてすぐに氷雨に振り向き直すと刀を両手で振り上げる。
「よし、直った」
GWの自動修復の終えたヒロは急いで落ちてる仲間の刀を拾い、投げる。
「ー!!」
防人はそれに反応して弾き飛ばす。
「でゃあ!」
その刀の後ろから接近していたヒロは回し蹴りを防人の横腹に叩き込む。
「ー!?」
またもや予想外の行動、なにも対処していなかった防人は吹き飛び、数十メートル先の地面を体でえぐる。
「隊長大丈夫か?」
「大丈夫だ…問題はない」
「そうか…良かった」
「…あいつは?」
「ああ、ルナならそこで倒れてる」
「…やったのか?」
「分からない」
氷雨は腕の装甲の一部分を開き、その中に取り付けられているモニターで自GWの状態を確認する。
「タンクは無事か…なら、念のため凍らす」
「ああ、わかった。でも気を付けろよ」
「わかってる」
氷雨は軽く手を振り、防人に近づいていく。
「…放射開始」
背から腕に向けて取り付けられたチューブから特殊な冷却液が今回はホースから水を出すように放射され、防人を氷の中に包み込んでいく。
「…タンクパージ」
空になったタンクが2つ、外されてガタンと地面に落ちる。
「無事に終わった…みたいだな」
「うぉぉ!」
「ついに、倒したぁ!」
ヒロが言うと周りで 硬直してしまっていた残りの隊員たちも雄叫びをあげ、氷雨の元に集まる。
「バカ!お前ら怪我人を運ぶのが先だろう」
「コクリ」
ヒロが両手で皆を止めて、叫ぶ。
氷雨もうなずくのを見て、無事な隊員たちのうち数名がタンカーを取りに残りは腰のポーチに入った薬や包帯で応急処置を始める。
しかし
パリンッーードス!
「うっ!」「なっ!?」
ルナのバイザーが赤く光った後、防人は氷を壊して中から飛び出し氷雨を後ろから刀で腹を貫いた。
生命反応が薄れるていくのをバイザーで確認した防人は刀を引き抜き、次の標的を見つけた防人は怪我をした隊員たちのもとへ飛び込んでいく。




