1-16「意識」
「冷却装置一時停止…」
防人が呟くと霧状に放射された液体がルナに届く前に蒸発する。
「!?…そんな手が」
「だが、そんなことしたら瞬間体感温度は気温にして70度は軽く越えるぞ。そう、長くは持たないはずだ」
とA.Tは呟くが防人は顔をしかめながら手に持つ剣を振り上げる。
「僕は、ご主人に仕えるもの。この程度で音を上げられない!」
「チィ」
「くそっ!」
キンッ!と火花をあげながらA.Tとヒロは二人で剣を剣で受け止める。
「ぐ!重い」
「ぎぎぎっ」
「無駄だと言うのがまだ分からないのか」
「…そうでもないさ」
ヒロは剣を掴んでいない左手で腰のライフルを手に持つと防人に向けて引き金を引く。
「ーー!!」
1発、2発、3発…放たれる弾は全てルナの装甲によって弾かれるが弾丸の衝撃はしっかりと防人の腹に届く。
「がはっ!」
吐血。防人の力が弱まり二人は剣を弾き飛ばす。
ーバイパス不安定生命維持機能駆動
防人の視界にルナからの危険シグナルが送られる。
「どうよ。もう諦めて降参しろ」
ヒロは剣を向けて言うが防人はかすれた声で否定する。
「まだ約束を…矢神さんからの命を果たさないといけない。」
とルナがそれに反応し合成音声が防人の耳元で流れ始める。
『操縦者の思考脳波測定…完了。最良案を提示』
防人の視界にウインドウが表示される。
― 生命維持機能を保ちつつ意識コントロールを脳波による本能コントロールに移行。
「それで矢神さんの命を果たせるのなら」
『了承を確認。コントロールの移行を行います』
「ーー!!」
ドクンと防人は中になにかが入り込むような感覚に一瞬襲われる。
『移行完了』
「……」
その後、防人はなにも言うことなく体勢を建て直し、腰のサブマシンガンを手に構えて引き金を引く。
放たれる弾丸、広がる硝煙、防人はサブマシンガンを乱射しながら下に落ちてしまった剣を取りに一気に降下する。
「逃がすか」
ヒロ、氷雨の二人も地へ降りて防人に接近する。
「……ニィ」
防人は僅かに微笑むと右拳を握りしめ一気に前に打ち込む。
「ーー!!」「氷雨!」
ヒロはフィールドを展開し氷雨の前に、防人の拳を受ける。
バシィ!と防人の拳が見えない壁に衝突し火花を散らす。
「このままじゃフィールドが!」
「この距離はスナイパーライフル(こいつ)には無理か…」
A.Tは舌打ち、剣を握りしめて防人に接近する。
ドカン!!
「「ーー!!」」
その途中に爆発音、どうやら『氷雨隊』が外の戦闘に気がついたらしくグレネードランチャーやバズーカなどの対GW装備をして研究所の側で並んでいる。
「氷雨隊長を守れぇ!」
声とともにGWの操縦できる数名の隊員が地を蹴り、刀を構えて接近する。
「……。」
敵を認識したように防人のバイザーが一瞬赤く発行し、振り向くと先程の隊員に接近、そのうちの一人を殴り飛ばす。
「がっ!」
「た、退避ぃ!」
殴られた隊員は逃げ遅れた隊員たちを巻き込んで研究所の壁を破壊しつつ中の廊下を赤く染める。
「なっ!まさか一撃で…」
「いくら量産型といっても一応大戦時は戦車が破壊できるんだぞ」
「そんなバカな事が…」
隊員は目の前に広がる光景を信じられず各々の声を漏らす。
防人は吹き飛ばした際に隊員が落とした刀を拾うと固まっている中に飛び込んでいく。
「く、来るぞ!」
「バズーカ隊、てー!」
発射音とともに放たれたバズーカのロケット弾は防人によってあっさりと切られ、防人の後ろで爆発する。
「なっ何てやつだ」
「怯むな次弾構え…」
しかしその頃に防人は集団の目の前にまで接近しており刀を生身の隊員たちに振り降ろす。




