第1-8話「移動」
『こちら氷雨、現在確認した侵入者は1名。校長室前のカメラが破壊されていることより誘拐もしくは殺害が目的だと思われる。警備配置データを今から送信するので駆け足で行くように。なお室内及びジャミング濃度が濃いためGWの使用は禁止する。…以上』
施設内に流れる放送を聞きながら無事合流を果たしたA.Tたちは警備のいない通路を一気に走り抜ける。
「さすが「氷雨隊」警備の動きが早いな。お陰で少しも警備のやつらと出会わないな」
そう言いながら走るA.Tの横でO.Hが心配そうに話す。
「しかしこんなに堂々と走って大丈夫なんですか?」
「そこは問題ないだろう」
「何故?」
「さっきの放送でも言っていたが今、ジャミング濃度が濃いんだ」
そういいながら分かりやすいようにグラフメーターのモニターをO.Hに見せる。
「確かに、でもこれを誰が…」
「それはさっき我々に合流したヒロが知ってるだろう」
「ええ、俺はここにくる前に「ゲシュペンスト」というGWのジャミング装置を最大値で稼働させてきましたから」
「そうですか。あなたもGWが使えるのなら持ってきたらよかったですのに…」
「ゲシュペンストはプロトタイプでして色々欠陥も多いので逆に足手まといになると思いますよ」
「成る程」
それを聞いて納得しているO.Hの横からM.Tが顔を覗かせて言う。
「というかなんで私らのスピードについてこられるの?」
「それは俺を含む「氷雨隊」には全員ナノマシンによる肉体改造が行われてんです」
「ナノマシン?」
首をかしげるM.TにA.Tは呆れた顔で言う。
「人工的に造られた細胞でこいつを体内に打ち込むと中で増殖、細胞が活性化されて傷の治りが早くなったり、異常に力がついたりする」
「へぇ~」
「というかこれについては渡した資料の中にしっかりと書いてあったはずだが?」
「うっぐぅ……は、あははは!」
A.Tはわざとらしく笑うM.Tを見て短くため息を吐き視線を前に戻し、ヒロに問う。
「でもまだまだ未完成がところが多いはずだが。改善されているのか?」
「いや、とくに改善されてはいないすよ。』
「そうか」
「しかたないですよあれは実際社長は好いていませんでしたし、副社長の矢神も親が偉いだけですからね」
「だが、開発には関わっているから色々と交渉してみるさ」
「あの人がそう簡単に納得しますかね」
「俺が知るか」
「ですよね」
3人で納得しているなか分からないという顔でM.TがA.Tに質問する。
「未完成…どんな問題があるの?」
「ナノマシンは体に定着するまでの間拒絶反応が起こり全身が焼けるように痛み、それを過ぎても体に定着する人がとてつもなく少ない。ゆえに現在は全サンプルが凍結されている…とか言われてるがそんなことはないんだろうな」
「ふぅ~ん」
「しかし、これも書いてあったはずだが?」
「うっ…」
「まぁいい今から頭に入れておけ」
「はぁい」
それからぐだぐだと話しているうちに社長が幽閉されている独房への階段のある場所にたどり着く…のだが。
「行き止まりだね」
「そうだな」
「俺、間違ったもん持ってきちゃったのか?」
「いや、ここで間違いはないだろう」
A.Tは冷静にセンサーを稼働させ、壁を分析する。
「…ここか」
彼は呟くと手の部分の装甲を腕の中にスライドさせて開け、素手で壁をタッチする。
ガコンッ!
壁の一部がくぼみ、スライド、地下への階段が開かれる。
「よし、行くぞ」
「「はい」」
「……(すごい、こうも簡単に階段の場所を見つけるなんて)」
「何してんだ?おいてくぞ!」
「あ、待ってくださいよ~」
そして4人は地下へと下りていく。




