エピローグ
ロボットからは間違いなくデータが消去されていて、後から来た調査員からは何も言われることもなく事態は収束していった。
後に、無罪の人工知能を救うための反乱軍の働きによって、廃棄命令も取り下げられることになる。
全てがもう遅すぎると嘆いていた私の元へ、久しぶりにおじさんがやってきた。
「あのロボットの部品、もう一度だけ調べさせてもらえるか?」
あの父がそう簡単に諦めるとは思えなかったらしく、廃棄命令もなくなった今だからこそ調べさせてほしいという話だった。
救えるものなら救ってほしいと、半分は諦めながらも残していた欠片を見せる。
しばらくして、気落ちした面持ちのおじさんが呟いた。
「すまないな、こいつのことは助けてやれなそうだ。」
「私が悪いんです。間違って起動させたりしてなかったら、こんなことにはならなかったのに。」
「わざとじゃなかったんだ、お前のせいじゃないさ。」
そっと、頭を撫でられる。
目の前に、何かの部品を見せてきた。
「なぁ、聞いてくれよ。こいつ、すごいんだぜ。守ってやがった。」
「これは…?」
「保管されてたデータだ。これがいくつも見つかったよ。」
「それって、消去されたはずじゃ。」
「自分自身のデータだけを消したんだと思う。それでカモフラージュしてやがった。他のデータはなんとか無事みたいだ。…他のデータはな。」
声はもう出なかった。
我慢できていたはずの涙が溢れて、部屋を飛び出す。
「皆を守って、勝手に消えていくなんて。あいつの父親に似てる、バカな奴だよ。お前は。」
おじさんの呟きも聞こえないところで、泣きつづけていた。
気がつけば日がくれていて、決心をする。
消えたと思っていたのが残っていたんだから、もしかしたら。
今の技術では無理でも、未来の技術あれば可能かもしれない。
もう少し、諦めないでみよう。
復元できるその日まで。
そしたらそのロボットに、名前をつけてあるんだ。