好き-3-
--鈴side--
帰り道、モモはあまり喋らなかった。
いつもなら、部活のこととかクラスのこととか、うるさいくらい、いろいろ言うのに。
そういえばこのごろ口数が少ないな、と気づく。
「なにか、あった?」
「や、なんもない」
モモは黙り込む。
「英単語、覚えた?」
私から聞く事って、そのくらいしかない。
勉強の話ぐらいしか、しない。
「ちょっとだけ」
短く答えて、モモは黙る。
なんか変だけど、ほんとに何もない?
聞けずに、そのまま会話を続ける。
「ちょっとだけ、って、けっこう待ち時間あったでしょ」
「あったけど」
モモが私を見ない。
「スズちゃん、生徒会、楽しい?」
ぽつりと聞かれて、ほっとする。会話する気は、あるのだな。
「楽しいよ。今日作ってたのね、来年の部活予算用ので」
だから、モモのサッカー部の予算もすぐ作れちゃうんだよ。
そんなことを言おうとして、遮られた。
「それなら、良かった」
電車を降りて、家に向かって歩いているところで、まわりに誰もいなかった。
だから、呼びかける。
「モモ?」
また誰かに告白されたとか、そういうの?
揺らいでるの?
だからあんまり話さないの?
不安になって隣を歩くモモを見てたら、モモが聞いた。
「会長のこと、なんで、名前で呼んでんの?」
え?
「会長が、役職名で呼ばれるのが嫌だって、言ったから」
「名字でいいじゃん」
「生徒会に滝川くんと瀧山くんがいて。まぎらわしいから、名前がいいって」
「じゃぁ、オレが頼んだら名前で呼んでくれるの? みんなの前でも?」
言葉に詰まる。
他に人がいるところで、「モモ」とさえ呼べないのに、名前なんて呼べるわけがない。
モモが私を見ない。
「いいよ。わかってるよ。スズちゃんは」
いつも送ってくれる、家の前の通りまでたどり着いた。
モモが立ち止まって、言い直した。
「スズモトは」
言いかけてやめて、モモは俯いたまま小さく笑った。
「も、いいや。じゃ」
そのままモモは、自分の家の方に歩いていった。




