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セルリアンタワー殺人事件 4

さて場面は変わり今度は怨恨の路線から捜査をして行きます。


今回は粟飯原刑事視点です。

捜査の割り振りが決まり、捜査本部に戻ると、今回コンビを組む本庁の刑事がやってきた。

「粟飯原さん、ご無沙汰しております。こうしてまた一緒に捜査できるなんて思ってもいませんでした」

コイツの名は、千堂尚樹せんどう なおき。去年の11月までここの強行犯係長だった男だ。

俺がここに転属したのとほぼ同時期に捜査一課へ転属になった。一緒にいた期間は僅か1ヶ月だ。

「強行犯係も大変ですねぇ、4人と言う小所帯でそのうち二人は新人刑事ですか。私の知っている刑事はテルさんだけですから・・・」

「まぁな・・・よくやって来れたもんだ。お前の転属、ベテランの定年と重なっちまったからなぁ」

確かに俺がここに来てから殺人事件は初めてだ。あまり凶悪な事件も起こっていない(暴行等は数有るが殆どが未成年なので生安の担当になっているのもある)。だから本庁も補充を必要としていなかったのだろう。おかげで俺とテルさんはてんてこ舞いだ。しかしこの事件で補充を考えてくれるだろう。


すかさず俺は千堂に聞く。

「おい、クラックスマネジメントについてなんか知ってるか?」

「えぇ。今年の4月にここの副社長が突然辞任しているんですよ。IR情報にありました。理由は一身上の都合によるものと有りましたが、株主総会を待たずして辞任ってなんか怪しいと思いませんか?」

そのIR情報を見せてもらった。株主総会前に辞任だと?何か大きな不祥事を抱えていてそれをおっ被せたとしか考えられんな。

「よし、その元副社長、米良大樹めら だいじゅに会いに行く。ヤサは分かっているのか?」

「北参道です」

「分かった、では俺の車で行くぞ」


して、俺は千堂を助手席に乗せ、明治通りを北上した。

北参道、閑静な住宅街で高級住宅が並んでいる。元副社長の家はすぐ分かった。

インターホンを鳴らすと夫人と思われる女性が出た。

「警視庁捜査一課の千堂です」

「渋谷西署の粟飯原です、ご主人にお話をお伺いしたいのですが?」


最初は渋っていたが、なんとか通してもらえた。玄関からリビングへは米良が案内してくれた。

千堂は話を始めた。

「米良大樹さんですね?クラックスマネジメントの副社長やられてた」

「あぁ、そうだが。警察がいったい私に何のようですかな?それに、渋谷西署は管轄違いじゃないか。」

いかにも不機嫌そうだ、それもそうだな。説明しないと分かってもらえない。俺が続けた。

「実はですね、ウチの管内で起きた殺人事件に付いて調べているんです。事件の被害者は萱場邦夫、貴方が勤めていたクラックスマネジメントの社長だった方です」

米良の目の色が変わった。

「なんと・・・萱場が・・・。」

「何かご存知なんですか?」千堂が乗り出す。


「いやいや、萱場が社長になったのは今年の6月の株主総会でだ。本来なら私がと言う話であったが私ももう65だ。引き際が肝心だと思ってね・・・。引退させてもらったよ」

「しかし、4月に辞任と言うのはあまりにも不自然では有りませんか?」

「あぁ、そうだな。こうするしか無かった。株主総会まで残っていたら私が社長になっていただろう。しかしな、これからあの会社は若返るところだったんだ・・・。老人たちの意見ばかりになってしまっては、若い力が発揮できない。今までそれで一流企業が倒産して行った。私はそれを見たくなかったのだよ・・・。その矢先だったのに・・・。」


俺の刑事の勘として、この男はシロだ。クラックスマネジメントの経常利益は年々上がっている為引きずりおろす輩がいるとは思えない。

「引退した事に、後悔はしていませんか?」

俺のその問いに、葉巻に火をつけながら答える米良。

「あぁ、今は余生を楽しむことにしているよ。カミさんにも苦労かけっぱなしだったからな。だがな、心残りが一つある。つい先月、管理職のリストラがあった。その管理職は40代後半〜50代だ。それを決めたのは萱場だ。萱場はまだ44歳。ヤツもまた、会社の若返りを実現させようとしていたのだろう」

千堂が深呼吸をして訪ねた。

「リストラされた社員、分かりますか?」

「あぁ、分かるとも。この4名だ」


携帯のメモリーから名前を4名聞き出す事が出来た。

聞ける事は聞けたな。犯人の可能性が一番高いのはこの4人だ。

俺たちは礼を言って、米良の自宅を後にした。


車に乗り込むまでの道のりで何かを感づいたのか俺に言ってきた。

「粟飯原さん、このリストラされた4名、犯人の可能性有りますか?」

「今の時点では充分あり得る、本部に戻り次第調査を始めよう。・・・それにだ。今回のリストラ、米良が引退したから起きた、と思うヤツもいるだろう。としたら次に狙われるのは米良だ。」

そう言うと、千堂は携帯を取り出し電話を始めた。

『警視庁捜査一課の千堂です。現在渋谷西署で起きている殺人事件の犯人が北参道に現れるかもしれません。巡回を強化願います』

そうか、代々木署に応援要請出したな。


して、俺たちはリストラされた4名を当たることにした。

捜査も佳境に入ってきました。


果たして、粟飯原刑事の読みは当たっているのでしょうか?


次回乞うご期待

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