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渋谷の九龍城砦 6

生活安全課の仕事に首を突っ込んだテルさんと九龍城砦に向かいます。


今回は、粟飯原さん視点です。

羽根田と神ノ木に内定を命じてからすぐ、テルさんが戻ってきた。

今回の美果の捜査は見当違いだったらしく凹んでたこと、侘びとして九龍城砦で聞き込みをするってことだ。


そこで俺も一緒に九龍城砦に向かうことにした。


恐らく俺の車はナンバー控えられているだろうから歩いて向かった。勿論スーツ姿だ。

生活安全課刑事は私服で回ることが多い。この格好のほうが目立たないだろう。


この近辺での細かい事件は多々あったが、中にはいったのは久々だ。シキテン(見張り)も俺の顔までは把握してはいないだろう。俺たちは問題となっている10階のフロアに到着した。


ここは本当に日本なのかと思うくらい独特の雰囲気がある。ピンク色の照明があたりを包み、ほとんど下着姿の女性が手招きをしている。そう、かつて川崎にあったちょんの間街に酷似している。俺はその時新潟にいたのだがそのニュースはテレビで特集までしていたのでよく知っている。俺が摘発した亜細亜街にもこんな一角があったな。


「オニイサン、アソンデク?」とほうぼうから声がかかる。片言であるからして外国人であろう。しかし不法入国であるかは特定できない。ここの女は30日ないし90日の観光ビザで来て稼ぐだけ稼いで帰国する。そしてそのほとんどが二度とここに来ることはない。ようするに、女を逮捕した所で組織としては痛くも痒くもないというわけだ。


とりあえず、女の顔全て隠しカメラで撮影し終わった所で、テルさんが俺に声をかけた。


「おぅ、ちょっと俺の情報屋んとこいこうや」


?テルさんは九龍城砦に情報屋がいるのか。

「えぇ、ご一緒させてもらいますよ」


向かった場所は1階。外から入るスナック「エレガンス」


「イラッシャイマセ、Oh,テルサン!」

テルさんは顔なじみらしい。俺とテルさんはカウンターに座ることにした。


「テルサン、一緒ニイル人、ダレ?」

「あぁ、俺の上司でな、粟飯原ってんだ」


「アイハラサン、ヨロシク。ワタシ、モモッテイイマス」

「あぁ、よろしく頼む」


話によると、テルさんの情報屋はこのモモって女らしい。上海出身で学生ビザできている。違法性はなさそうだ。

テルさんがキープしている焼酎『吉四六』という酒を飲みながら話を聞いていたが、目新しい情報はない。

そこへ、もう一人女性が入ってきた。あ・・・あれは・・・


「ア、ママ。オツカレサマデス」

「お疲れぇ・・・え?・・・粟飯原さん?」


この店のママは・・・かつて俺が新宿中央署にいた時、亜細亜街とは別の店で働いていた「エリ」だ。


「なんでぇ、二人は知り合いか?」

これにはテルさんも驚いている。

「えぇ、俺が新宿中央署にいたときに、暴力団絡みでちょっと・・・」

「あの時は面倒かけました、まさかテルさんが粟飯原さんと一緒にねぇ・・・」


エリは日本ぐらしが長いせいか日本語も流暢だ。それもそのはず、旦那は日本人なのだからな。

その旦那というのが元極道で、抜けたいと俺に相談してきたやつだ。条件として新宿には立ち寄らないことで、手を引かせた。


そのエリがまさか目鼻の先の渋谷にいたとは・・・


「俺はママさんとはあまり話をしたことがなかったけど、そういう過去があったんだなぁ・・・俺が来るときあまりいないからわからなかったよ」

「それもそうですね、私この時間に来ること殆ど無いですもん」


「ママ、ワタシ、アイハラサンッテナマエニ、キキオボエアル。キョネンノジケンデ・・・」

?モモは去年の事件を知っているのか?

「そう、あの女刑事の旦那さん」


そこでテルさんが割って入る。

「ちょっと待て、ママさんよぉ、あの事件のこと知っているのか?」

「えぇ、勿論よ。粟飯原さんが一緒じゃあ話さない訳にはいかないか・・・」


エリはあの事件のことを知っているらしい、俺も話を聞くことにした。


「あの事件の犯人は女、20代後半から30代前半って行ったところ。特徴は左肩のところにバラの刺青があった。その他にも沢山あったけど遠目だったからわからない。もっとも、事件現場を見てないからなんとも言えないけど、あの寒い日にキャミソール姿だったわ。」

そこまで聞いた俺は、エリに突っかかった。


「どうしてそれ警察に言わなかった!」

「警察には言ったわ、でも信じてもらえなくて追い返された」


確かに俺は捜査を外され、別の特捜本部に行っていた。まさかこんな情報を見落としていたとは・・・


その時、俺の携帯がなった。

「粟飯原だ」

『郡だ。金井を撃った拳銃のライフルマークを照合したら、1年前の警察官殺害事件の弾丸と一致した』

「了解しました、引き続き捜査を続行いたします。無論今回は金井の件で」


俺はエリに向き直り、金井の写真を見せた。

「この男に見覚えはないか?」


「う~ん、このお店に来たことはないわねぇ・・・」

「ワタシモ、シラナイ」


この辺に来たことはない・・・一体どういうことだ。


少女売春の情報はつかめなかったが、俺が追っていた事件の情報はつかめた。

何故平良は殺されたのでしょうか・・・

そして警察官殺害事件との関連性は・・・


まだまだ続きます。

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