道玄坂の暗雲 5
club AXEAでの張り込みの続きです。
今回も粟飯原さん視点です。
club AXEAにて張り込みを続ける俺と美果。見た所変な客はフロア内にはいなさそうだ。
するとモリムラが俺に話しかけてきた。
「粟飯原さん、DJやってみます?」
何だと?DJは確かに学生時代遊びでやった事がある。しかもこのクラブでだ。
しかし当時の機器とは勝手が違って全てデジタル化されている。分かったもんじゃない。
美果も乗り出す。
「あら、あんたやってたじゃないここで。それに、ただ突っ立ってるだけじゃおかしいわよ。自分が張り込みの刑事ですって言ってるようなもんじゃない。」
何を言い出すかと思えば・・・俺はまさにその、『張り込みの刑事』だぞ。しかしそれで逃げられたら洒落にならんな。俺はモリムラにレクチャーを受け、ターンテーブルの前に立った。
「Yeah! ここでDJの交代だ!20年ぶりの復活!DJ AIHARA!!」
モリムラが叫ぶ、フロアを見ると俺を見て歓声を上げている・・・もう後戻りは出来ないぞ・・・
曲は昔俺がよくかけていた、kangarooの”promises”を選ぶ。しかしよくこの音源持ってたな・・・
「では、俺の青春の曲で盛り上がってくれ!」
もうこういうしかない・・・なんとか盛り上がってくれてるからいいものの、正直不安だ。
曲が終盤に差し掛かった時、トイレの方で血を流している女性を発見。金髪の男に暴行を受けているようだ。。。
「おいモリムラ、ちょっとDJ変われ!」
「いったいどうしたんですか??」
「トイレで女性が暴行を受けている」
というや否や俺はブースを飛び越え金髪の男をフロアに引っ張り出した。
「キャーーーーーー」
悲鳴を上げ散り散りになる客。俺は中段回し蹴りを脇腹にヒットさせ押さえ込んだ。
金髪の男は興奮して叫んできた。
「何だテメェはぁぁぁぁっ」
俺は渾身の一言。
「警察だぁぁぁっ」
男をうつぶせにして手錠をはめる。
「え・・・うそぉ・・・」
「あのDJ警察だったんだ・・・」
「そう言えば最近何かあるって言ってたよね・・・。」
そんな声が口々に聞こえたとき、DJブースにいた美果は客に向かって一言。
「ここは警察官立寄所ですから安心です。今ちょっとお騒がせしましたが、この後も大いにお楽しみください!」
そう言いながら怪我をしている女性の方に向かい、外に連れ出す。
俺も手錠をかけた男を連れ出し地域課の車に乗せて署に戻った。
「あ、粟飯原ぁ、今回のは暴行事件だから、そっちに任せるわ。あたしは怪我した女の子送ってく」
美果を見送ってから俺と男は刑事課の取調室へ向かった。
取り調べの最中に奴のポケットから覚せい剤が出てきた。それで暴行してやがったんだな。
1年前の事件と絡みがあると思い問いつめたが、その当時奴は名古屋にいた事が確認とれた。
殺人事件とは関係なさそうなので、早々に送検する事にした。警務課に引き渡し留置場へぶち込んだ。
刑事課のフロアに戻ったら、当直であるはずの羽根田がいない・・・一体どこ言ったんだ?
俺は羽根田に連絡を入れた。
『はい、こちら羽根田』
「粟飯原だ。お前今どこにいるんだ?」
『神ノ木君と、昼間通報があったミュールに向かってます』
「よし分かった。俺はもう引き上げるが何かあったら携帯に飛ばしてくれ」
『はい、お疲れさまでした』
気がついたら23時を回っていた。俺は引き上げる事にした。
クラブでの事件は小さな事件で済んだようです。
ミュールの方はどうでしょうか?