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道玄坂の暗雲 4

さて、神ノ木君を署に返し、課長代理がやってきました。


今回は、粟飯原さん視点です。

俺が署を出て美果たちのところに付いた時にはもう夕方になっていた。

クラブに行くというので俺は革ジャンにジーンズ、ワークブーツという出で立ちだ。

神ノ木を署に戻し、俺たちはタバコの吸えるファーストフード店に入り、事情を説明した。


「えぇぇ!佐波がそんな事を・・・それで、粟飯原が出てきた訳か」

「簡単に言うとそう言う事だ、だがあくまで俺は生安の手伝いってことで。いいな?」

「そう言う理由なら異存はないわ。で、佐波はどこ行ったのよ」

「別件で通報があったらしい、キャバクラらしいがその内偵の準備をしている」

「あぁ、その情報得たの神ノ木君よ。パトロール中にたれ込みあった」

「・・・こっちは準備できてる。そろそろ時間だ。行くか」


俺たちは東急本店を抜け、クラブ街へ向かった。ココは特異な街で、クラブの裏にはホテル街がある。

歴史は随分古いらしいがなにぶん俺の生まれる前の話だ。よくは分からん。

今日のターゲットは古くからあるクラブ、「Club AXEA」。俺が学生の頃からあるクラブだ。

以前友人と何度か来た事があったが、当時は楽しかったんだろうな。


ここはクラブスペースの手前がオープンカフェになっている。そこで張り込むことにした。

「おい美果、本当にここがターゲットになっているのか?」

「たれ込みあった、本店も目をつけてるみたい。ここあたし学生時代通ってたから信じがたいけど。あんた覚えてないの?」

そうだ、大学の同級生と来た時、確か美果もいた。


午後7時、客がクラブスペースに入り出した。今のところ怪しい客はいない。そこに、初老の男性が近づいてきた。

「いらっしゃいませ、渋谷西署の刑事さん達がどのようなご用件で?」

!!!俺たちのことを知っているのか?したら美果が話し出した。

「あ、こんばんわマスター」

マスターだと?この店の経営者ってことか。美果に話しかけた。

「最近ウチらでも悪い噂が多くてねぇ、こないだあそこが摘発されたでしょう。その風評被害ってやつでさ」

確かに、いつもより客入りが1割ほど少ない気がする。あの事件は大掛かりだったからなぁ・・・

そのせいだろうか、それとも日曜だからかは分からないが、今日営業しているクラブはここだけだ。

「あぁ、あれは本店が騒ぎなのよ・・・。バカの一つ覚えみたいにローラー掛けるから」

そう言えば、今年の春に薬物対策課の管理官が変わったとか言ってたな。その影響か?

暫く話していると美果が突然俺に振った。

「粟飯原、中に入れてくれるって。あたし着替えてくるからちょっと待ってて」

着替え?そうか、パンツスーツで入ったら目立つもんな。


ジーンズに着替えて戻ってきた美果と中に入り、DJブースに案内された。

「おい美果、ここで何をする気だ?」

「何って・・・張り込み。ここが一番見通せるのよ」

「そうか・・・そうだな。しかし今の機材は随分変わったなぁ。どうやって動かすんだ?」

「そりゃそうよ、あれから20年も経ってるんだもん。あんたこういうの好きだったもんねぇ」

そう言えば、普通クラブに来ると言えばナンパ目的が普通なのだが俺はプレイヤーが気に入りDJまがいの事をしていた。

ターンテーブルを回していると、DJが声をかけてきた。

「あ、刑事さん。DJに興味有り?」

「いや・・・20年ほど前に数回いじっただけだが・・・。」

「20年前?マジっすか?大先輩じゃないっすか?俺、DJ.モリムラって言います。刑事さんは?」

「渋谷西署の粟飯原だ、宜しく」俺たちはがっちり握手をした。


イベントが始まり、モリムラのDJで音楽が掛かりフロアでは客が踊っている。

俺と美果はその両脇で怪しい奴がいないかを見張っている。このクラブにVIPルームはない。数年前、このクラブが摘発された時にそこが覚せい剤の温床になっているというので取り壊してフロアを拡張したそうだ。

チークタイムになったのを見計らって俺はタバコに火をつけ、美果に話しかけた。

「おい美果、本当にここに現れるのか?」

「今日やってるクラブはここだけ、最近見ないお客さんが増えたってことで怪しい奴見たって通報があったのよ」

モリムラが話に割り込む

「その通報したの、俺っす。トイレの方で喧嘩かなんか知らないけどしょっちゅうなんか起きるんすよねぇ。変な事に巻き込まれなきゃいいけど。」

「トイレで覚せい剤を強要するって手もあるみたいね・・・。」

なるほどな、摘発されたから別の場所に動いたって事か。

俺たちは監視を続ける事にした。

ちょっと長くなりそうなので2つに分けます。

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