4:瑠偉
今一番売れていると言っても過言では無いアイドルのルイ、本名は瑠偉。瑠偉はメディアには絶対に知られてはいけない秘密を抱えていた。
自殺願望があることだ。
自殺願望があるアイドルなんて売れるわけがない。しかし、それを公表して野垂れ死ねるほどの勇気もない。取材の度に答える、『ファンの皆さんのため』という言葉。アイドルを始めたばかりの頃は本気で思っていたりもしたが、今は上辺だけになってしまった。
売れれば売れるほど、世間から求められる理想は高くなっていく。そしてそれに応えようとするほど、瑠偉の心はすり減っていった。
キラキラとした芸能界に憧れてしまった幼少期の瑠偉。今となってはなんでこんなものに憧れていたのか、不思議でしかない。
ファンの人やスタッフはもちろん、グループのメンバーにすらも暗い顔を見せることは許されない。それだけに、瑠偉にとっての『グラデーション』で得た共感者たちの存在は大きかった。
詳しいことは知らないが、それぞれに事情があって自殺願望がある。瑠偉と同じく、自殺願望があるのだ。そのことが瑠偉にとっては何よりも嬉しかった。今や瑠偉には四人もの理解者がいるというその事実が、瑠偉がまだこの世にいる理由だった。
他の四人は、瑠偉の言葉をよく聞いてくれる。相談にだって乗ってくれる。仕事で詰まれば、解決策が出るまで付き合ってくれる。いつしか瑠偉の居場所は、昔から一緒にいるアイドルグループではなく、数ヶ月前に出会ったばかりの見ず知らずの人間とのグループチャットになっていた。
誰にも気付かれることなく、瑠偉はこの四人とのあの世での生活を夢見ていた。アカリがよく言う、五人だけの世界。そんな世界があったらどれほど幸せだろう。どれほど楽だろう。
瑠偉は毎晩夢の中で四人と遊び、はしゃぎ、語り尽くす。そして目覚めるたび、ため息をこぼしてベッドから起き上がった。




