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3:祐希

 今日もまた、怒られた。理不尽に怒鳴られ、契約を切ると脅され、頭を下げた。それはもう必死に。何のため?分からない。会社のため、もしくは世間体のためだろうか。違う。周りから人がいなくなるのが怖いからだ。

 営業に就いてもう五年になる祐希は、先輩からのパワハラに悩まされ続けていた。言葉の暴力なんてものじゃない。人格否定、ひいては存在否定だ。お前は無能だ、なんて軽い方。この世のお荷物と言われた時は流石に涙が引っ込むほどの衝撃を受けた。苦しくて、しんどくて、辛かった。

 そんな日々が続く中で出会ったのが『グラデーション』というアプリ。簡潔に説明すると、死にたがりの人間を集めて、ランダムに五人に振り分ける。そしてその中でトークをしていって、人生の最後を決める。そんな内容。

 そこで振り分けられた五人。その五人は今や祐希にとってかけがえのない仲間となっていた。祐希のクタクタに疲れきった心を優しく包んでくれる。

 会社員や教師といった普通の職業の人間だけでなく、小説家やアイドル、高校生までいる。共通点なんて自殺願望があるくらいしかないのに、祐希にとってはこのバラバラな四人が世界で唯一の理解者だった。

 祐希は、怒られた後には決まって、縋るような思いでスマホを開く。いつもと変わらない、普通の会話が広がっているスマホの中。それを見て安心する。

 まだ、この世にいる意味はある。この五人で死ぬんだ。それが実現するまでは、まだ死ねない。小説家のカイトくんがよく言っている。五人だけの世界に行くんだと。死はそれのオマケ。小説家というのはどこまでも素敵な表現をするものだと感動したのを覚えていた。

 いつか五人で会えたら。その時は、五人だけの世界に行く切符を手にしたい。この先沢山の出会いがあるであろう高校生もいるのは少しばかり気が引けるが、それでも祐希はこの五人が良かった。

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