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2:海斗

 今、海斗の手の中で広がっている妄想。五人だけの、どんなファンタジーよりも素敵な最期。インターネットを通じて知り合った、顔も本名も知らない仲間。

 小説家として物語を紡いでいる海斗には、この五人で死ぬ以上の素敵な物語が思い浮かばない。これを超える物語が出てこない限り、海斗は自分自身を本物の小説家として認めることはないだろう。

 まだ二十代半ばの海斗は、世間様の顔色を伺いながら描く世界に疑問を抱いていた。こんな物語は、本当に書きたかったものと違う。何度も何度も原稿をぐしゃぐしゃに丸め、その度に涙を流した。担当の編集者からの圧に耐え、世間からの批評に耐え、それでも書き続けなければならない苦しさ。そんな苦しさを抱えてまで物語を書きたかったわけではない。こんな世界にそんな上辺だけの物語を零すくらいならもういっそ……。

 そんな時に出会ったのが、このグループチャットにいる四人だった。年齢も職業も性格も背景も、誰一人として同じ人がいない。本名すら知らないのに、こんなにも信頼出来る人達が世の中にはまだ存在している。

 この五人で、五人だけの世界に。そんなことが出来たらどれだけ良いだろう。どれだけ素敵な世界だろう。いつかそんな素敵な物語を現実にしよう。映像化なんて生温いものじゃなく、実現する。それが今の海斗の夢だった。

 お互いに深い事情は知らないし、そこまで踏み込む気もない。それでも、海斗にとってこれ以上の仲間はいないのだ。

 会話の内容だって大したことはなく、ただの友達との会話となんら変わりない。アカリの勉強をサトルが教えたり、海斗がユウキの話から小説のインスパイアを受けたり、ルイの次のツアーの話を聞いたり。少し特殊な友達、と言い換えると分かりやすいだろうか。同じ職業の人がいないからこそ、お互いに楽しんで会話が出来ている。

 いつか五人で会ってお茶でもしながら、この上なく素敵な妄想を語りたい。そしてその時には、五人だけの世界に行く方法も話すんだ。珈琲片手に、五人で。そんな光景を浮かべながら、海斗は置いていたペンを手に取った。

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