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春の学校エッセイチャレンジ 

電車通学をする

作者: 恵京玖

 高校入学から今まで電車通学だった。小学校の頃は電車に乗るのは一大イベントみたいなもので、毎日電車に乗っている大人を羨ましいと思っていた。だが高校に入れるとこんなもんかって思い初め、同じ景色に飽きてきた。これが大人になる事か……と寂しい気持ちになった。


 とはいえ、毎日電車に乗っていると色んな出来事があった。

 冬の日、朝練のため早く登校していた。日が出るのはまだ早い時間で、星もちらついていた。電車を待っている人は少なく、街灯も明かりがついていた。

 夜、乗客が少ない電車に乗っていくって言うのはちょっと銀河鉄道の夜っぽくて、その時はいいなと思っていた。だが大人になって終電に乗るようになると、この感性は失われた。大人の階段をまた登ったのである。


 非日常の風景と言えば、濃霧の日も綺麗だった。

 この日も朝練で早い時間、電車に乗っていると真っ白い霧の中に電車が入っていたのだ。危ないので電車はゆっくり走りますと言うアナウンスが流れ、電車はゆっくりと走って行った。その時の車窓は不思議な光景だった。真っ白い霧の中を走って行くのでぼんやりとした街が見え、雲の中にある世界の電車に乗っているみたいで幻想的だった。

 えー、このまま不思議な国に行ったらいいなあ……と期待したが、着いた駅はいつもの駅だった。そう、ここは非情なる現実の国なのだ。


 こういった光景以外にも、ちょっと変わった人も多かった。

 それは電車の椅子に座って熱心に新聞を見ながら、何かを書き込む老人が朝、いたのだ。

 年老いても勉強してすごいな……と思って、熱心に見ている老人の新聞を覗き見た。その新聞は一面に大きな馬の写真があった。そう、競馬新聞だ。


 ……え? 賭け事する人って、勉強するの?


 高校生の私は衝撃だった。いや、こういった賭け事する人って直感で選ぶもんだと思っていたのだ。

 頭の中で電流が走ったような衝撃を受けた私に目もくれず、老人は真剣にペンを走らせる。そうして私が学校の最寄り駅に降りるが、老人は競馬新聞片手に勉強を続けたまま乗り続けていた。


 これを父親に言うと「そりゃそうだろう」と言った。


「賭けをしている人が勉強するのは当たり前だろ。大事な金をかけてんだから」


 だがこうして勉強して賭け事するって自分はすごいなって思っていた。だって自分のためって言われる勉強もやる気が無かったし、賭け事って遊びだと思っていたから。


 あれから十数年が経った時、熱心に競馬新聞を片手に勉強する老人を思い出す。

 確かに勉強はするのは当たり前だ。でも勉強しても受験以上に裏切られることもあるのに、よくやっているよな……とも思う。


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