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【番外編】イースターエッグハント(4)

 屋敷のエントランスホールのシャンデリアの明かりを受け、初めて気が付く。


 私だけではなく、エリダヌス、マルシクもなんだかんだで服に土や枯草がつき、着替えはした方がいい状況だった。両親は友人の招待で晩餐会に出掛けていたので、ヘッドバトラーに夕食の用意と入浴の準備、そしてエリダヌスの着替えの手配を頼んだ。


 こうして入浴を終え、ダイニングルームに集合すると……。


 エリダヌスは白シャツに黒のベストに黒のテールコートと、まるでバトラーのような装い!

 その姿はコスプレをしているようで……に、似合いすぎ!


 「お嬢様、口元が緩み過ぎですよ」とでも言わせたくなる。


 一方の私は濃紺の星空をイメージしたイブニングドレスに着替えていた。


「さすがにお腹がすきましたね。まずは食事を摂りましょう」


 こうしてエリダヌスと二人で食事となる。

 マルシクも着替えていたが、その変化はよく分からない。毎日黒の衣装で、今も黒の衣装に着替えたので、ビフォーアフターが分かりにくいのだ。ただ髪がふわっとしているところが、入浴後と分かるぐらい。


「メリディアナ、実はあの迷路庭園で不思議な出来事が起きていたのですよ」


 エリダヌスの意味深な言葉に、私はドキッとして、スープを飲む手を止めてしまう。


 一体何があったのかしら……?


「悲鳴は一度だけ。それも一瞬のこと。さすがのマルシクとわたしも、おおよその方向しか掴めません。しかもメリディアナは隠しルートへ入ってしまった。本来なら発見にもう少し時間がかかったはずです。それがあれだけの短時間で駆けつけることができたのには、理由があります」


 エリダヌスは前菜のカナッペを口に運びながら話を続ける。


「左右それぞれに向かう分かれ道、そのどちらに進むかマルシクとわたしが話し始めた時。一羽の蝶が現れたのです。淡いランタンの明かりを受け、その碧い翅は不思議とキラキラ輝いているように見えます。つい、目が奪われ、その姿を追うと……」


 なんとその蝶はエリダヌスとマルシクを導くように、分かれ道の右の方へ飛んで行く。しかもその様子を眺め、動かないでいると、蝶は二人の近くへ戻って来たのだ。その上で再度、右の道の方へと飛び始める。


「不思議なことですが、マルシクも私も導かれていると感じました」


 蝶は実際、その後も何度も分かれ道で二人を誘導し、そしてあの生垣の切れ目までやってきたのだ。


「あの生垣の切れ目は、男性なら自ら通ろうと思わない幅です。マルシクと私だけであれば、見落としていた可能性が高い。でも蝶はその切れ目のところをふわふわと舞い、ここだと導くのです。そこでまずはわたしから入ることにしました」


 エリダヌスが先に入り、その後をマルシクが続く。と言ってもマルシクはその切れ目を通過するのに少し時間がかかった。装備もあるし、マルシクの方がエリダヌスより体格がいいから。そこで先にあのスペースに到達したエリダヌスは、か細い声で自分の名を呼ぶ私に気がついた。そして落とし穴に気が付き、私を助け出すことになったのだ。


 その時、蝶はどうなったか?


「正直、メリディアナが私の名を呼ぶ声を聞き取った時。しかもその声がか細いものだったのです。冷静でいられるわけがありません」


 つまり蝶よりも私を優先し、行動した。


 落ち着いた後に、エリダヌスはマルシクに蝶について尋ねたが「気がついたらいなくなっていました」とのこと。つまりあの場所にエリダヌスとマルシクを導くと、蝶はその姿を消してしまったのだ。


「メリディアナは覚えていますか? 庭園を散歩した際、青虫を助けたことを」


 覚えている。アーモンドの花びらが頭にのったところまではロマンティックな展開だった。でもその次に私の頭には、青虫がちょこんと乗っていたのだ。


「もしもあの時、青虫を振り払っていたら、道行く人に踏み潰されていたかもしれません。でも扇子に載せ、植え込みの葉に帰してあげましたよね」


 まさにその通り。虫が得意なわけではないが、それでも小さな命。生きて欲しいと思った。


「あの時の青虫。その後、立派な蛹になり、蝶へと生まれ変わったのではないでしょうか。美しい碧い翅を持つ蝶に」


「えっ、まさか!」


「わたしは現実主義者で霊的な存在には懐疑的です。ですが受けた恩を返したいとあの時、マルシクとわたしを導いてくれたのかもしれない……そんな想像、メリディアナは好きなのでは?」

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