【番外編】願い事~ホリデーシーズン(1/7)~
王都中が煌びやかに飾られ、街灯の炎に温かみを感じた。
寒さより、これから訪れるニューイヤーに、皆の心が浮かれている。
そう。
ついに十二月に入り、ホリデーシーズンが間もなく始まる。
長かった一年の終わりが近づいていた。
「メリディアナ、お待たせしました」
「!」
今日は金曜日で、エリダヌスはきっちり定時で騎士団本部を出ると宣言。
しかもレストランを予約し、ディナーを楽しむ約束を私としたのだ。
有言実行のエリダヌス。
私は十分前にレストランに入り、着席していたが、多忙であろうに五分前に彼も到着。
しかも……。
純白の騎士団長の隊服姿で、手には赤い薔薇の花束。
花屋に寄った上で、待ち合わせ五分前に到着している。
私の推しは――完璧です!
「君の寝室に似合うだろうと思い、用意しました」
この世界は前世と違い、日常的に花束を贈り合う習慣がある。
特別な日ではなくても、ちょっとした思い付きで花を贈るというのは、素晴らしい習慣だと思う!
ということで私は喜んで花束を受け取る。
店員は心得ており、食事の邪魔にならないよう、花束をすぐに預かってくれた。
そして予約時に指定していたコース料理で食事がスタートする。
「魚料理の前までロゼで頼む。少し軽口で、微発砲のものがあれば、お願いします」
明日は土曜日。
土日は王室で公務も多く、エリダヌスが出勤になることも多かった。
そういう日の前日は、お酒を口にしない。
でもロゼワインを頼んだということは。
完全オフなんだわ、明日は。
ということは明日は朝からデートができる……!
思わず笑顔になると、同じく大天使のような笑顔のエリダヌスと目が合う。
エリダヌスも同じ気持ちなのね!と嬉しくなったが……。
「さてメリディアナ。間もなくホリデーシーズンです。当然の権利として、二週間の休暇を取得するつもりですが、年内と年明け、どちらにしますか」
「! 選ぶことができるのですね!」
「ええ。立場的に」
多分、副団長と交代で取得するのね。
年内だとニューイヤーイブまでに二週間休める。
年明けだとニューイヤーイブを含めた二週間を休めるとのこと。
それなら俄然、後者だろう!
「分かりました。では年明けの方で申請を出します。楽しみですよ。疲れが癒えそうです」
「そうですよね。年内もお忙しい日々でしたから……」
「ええ。メリディアナと一緒に入浴できると思うと、今から胸が高鳴ります」
このエリダヌスの発言には、いろいろな意味で汗が吹き出しそうになる。
まず「一緒に入浴」という言葉に思い出す。
自分の過去の発言を。
――「スパが、我が家の領地には温かい湯が沸き出る場所があります。その湯を使い、スパ施設を建てました。そちらへご招待します。ホ、ホリデーシーズン、お休み、取りますよね、さすがに騎士団でも。その時にご案内します。これでどうですか?」
これまた雲海の古城と同じ!
エリダヌスの願い事を勘違いし、約束したことだった。
そう、そうだった!
ホリデーシーズンに我が領地のスパに案内すると約束していた。
大変!
帰宅したらすぐに手配をしなければ……!
本来、この後。
「一緒に入浴」の意味を思い出し、盛大に否定すべきだったのだけど……。
ドリンクとオードブルが到着したため「スパ施設へのご案内ですね。お任せください」と、私は応じただけだった。しかもスパについてこれ以上何か言われないよう、別の話題を持ち出し、お茶を濁したのだ、私は。
その結果――。
「恥ずかしがる必要はありません。いずれ一糸まとわぬ姿をお互いにさらすことになるのですから」
なんて艶めいた言葉を、後日エリダヌスから言われることになるのですが!
この時の私は……まったくそんな未来を想像できていない。
オードブルで登場したキャビアの美味しさに、クラッカーを食べる手が止まらない状態。
なにせ公爵令嬢と言えど、キャビアはやはり高級品。
日常的に食べるわけではない。
嬉しそうにパクパク食べていると、「これだけおかわりを頼みますか?」なんてエリダヌスに言われてしまう。
本当はおかわり三皿ぐらいしたいけれど、料理はスタートしたばかり。
これからさらに美味しい料理が登場するはずなので、そこは我慢。
結果としてこの選択は正解だった。
何せデザートに登場したシブーストが最高の味わい!
これこそ最後の最後でお代わりをしてしまった。
「やはり女子は甘い物ですね。しかしそれだけ甘い物好きなのに、メリディアナはほっそりとしている。一体甘い物たちは、どこへ行ってしまうのか。不思議です」
なんてエリダヌスは言いますが!
私は優雅に振る舞い、水面下で足を必死にばたつかせている白鳥だった。
だって。
憧れだった推しの婚約者になれたのだ。
ゲームの設定があるとしても、何が起きるか分からない。
毎日のティータイムで食べるスイーツの量は減らし、乗馬の練習は毎日するなど、涙ぐましい努力をしていた。効果の程は分からないが、体型はキープできているので、良しとしている。
「わたしとしては最後の締めに、メリディアナをいただきたいところですが……そろそろ帰りましょうか」
夢のようなディナータイムが終わりを告げ、帰宅した私は――。
鬼の形相でスパ滞在の手配を始めた。
お読みいただき、ありがとうございます!
今週末来週末にかけ更新していきますね~
お楽しみください^^
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