44話:ようやく。二人きりになれました
「きちんとした舞踏会ではありませんが、ダンス、いかがですか?」
「! 喜んで!」
推しとのダンス!
リアルにエリダヌスが目の前にいる日々を過ごしながらも、それはダンスとは程遠く。
ゲームでは何度もダンスしたのに、実際にエリダヌスと踊るのはこれが初めて。
なんだかドキドキする。
でも格式ばったダンスではない。
カジュアルなダンス。
ガヴォットと言われるこのダンスでは、ペアで踊るが、時に手が触れる程度。
それでもエリダヌスと踊る初めてのダンス。
舞踏会とは違うので、同じ相手と連続で何度踊ろうが、誰も文句は言わない。
それでも三曲連続で踊ると、休憩となった。
楽しかった……!
「食後のいい運動になりましたね」
「はい。ちょっと食べ過ぎたので、良かったです」
そこから歩き出すと、次第に人気が少ないエリアに来ていた。
パーゴラ(藤棚)に来ると、ベンチがあったので、腰を下ろすことになった。
エリダヌスはさっとハンカチを敷いてくれる。
その気づかいに感謝し、座ると、少し離れた場所から、あのダンスの喧噪が聞こえた。
でも周囲から聞こえるのは、虫の声だ。
今晩は三日月。
月より星が瞬いている。
「ようやく。二人きりになれました」
急にそんなことを言われ、ドキッとしたが。
「どうやら……邪魔者がいるようですね」
一旦は腰を下ろしたエリダヌスが、立ち上がったと思ったら。
さっきダンスを踊った時に、そばにいた若者五名ほどが、静かに近寄ってきていた。
五人はこちらを取り囲むようにして、それぞれ武器を……ナイフを取り出している!
「わたしが誰であるか分かった上で、その武器を手にしていますか?」
男たちはちらっ、ちらっと目を合わせている。
その様子は……分かっていない!
エリダヌスがこの国で最強の騎士であると、知らずに襲おうとしている。
知っていれば……そんなナイフなんかでエリダヌスに襲い掛かろうとは……考えないはず。
「剣を抜く価値すら感じませんね」
そう言うとエリダヌスは、腰に帯びていた剣を鞘ごと外した。
同時に男たちが動いたが――。
鞘に剣は収まったままだが、それでもエリダヌスは次々と男たちを次々と倒していく。鞘に剣を収めた状態で急所を突き、一人、また一人と男たちを沈めていた。
四人目を倒したところで、マルシクがこちらへと駆けてきた。
「団長、後ろ!」
その声に振り返ったエリダヌスはくいっと眉上げ、次の瞬間。
電光石火の動きで、彼は鞘から抜いた剣で、私を刺した。


















