31話:遂に反撃開始
ウェリントン公爵のタウンハウスでの滞在がスタートしてからは、大忙しだった。
紹介してもらった弁護士は、確かに信頼できる方々で、チーム体制で私を全力サポートしてくれるという。エリダヌスが買い取ってくれた宝石の金額で、本来このチーム体制は組めないはずだ。これもウェリントン公爵の家門とエリダヌスの紹介だからこそ、引き受けてくれたのだと思う。しかもとても気持ちよく。
「第二王子相手の裁判だなんて、腕が鳴りますよ。王家相手の裁判、勝てないとは思わないでください。我が弁護士事務所では、過去に王家と争った貴族を何度も勝利させているのですから」
王家があまり公にしたがらないので、新聞にも小さくしか載らない。だがこれまで王家が我がままを言い、交易路の権利を自分達のものと主張したり、鉱山欲しさに無理矢理領地を取り戻そうとしたり。実は地味に裁判が行われていた。そこで勝訴しているのだと言う。
「大昔でしたら、王家の力が圧倒的で、裁判なんて無理でした。ですが今は時代が違います。貴族達も力をつけていますから、自分達が間違っていないと思うことは、正々堂々主張するようになりました。それに今回はちゃんと証人もいます。そして轢き殺し未遂事件以外の彼らの主張する嫌がらせについては、犯罪として扱うレベルではないので、大丈夫です。それに第二王子が負ければ、その後はもっと面白いことになるはずですから」
そんな風に言ってくれたのだ。
これには本当に安堵することになる。ヒロインのラーンによると、メリディアナは彼女のことを見下していたと言うが……。いくら記憶を探っても、そんなことはないと思うのだ。よって言いがかりやラーンによる誤解の可能性が高かった。いずれにせよ、ラーンが言う嫌がらせの件は、今回の争点にはならない。あくまで轢き殺し未遂事件だ。
こうして弁護士と打ち合わせを始めて一週間後。
提出書類も揃い、遂に裁判所に前世で言うところの提訴を行った。
裁判所に「こんな事件があります! 証拠もあります!」と弁護士が訴状を持ち込み、受理されるのを待つことになる。
提訴した件は、エリダヌスと弁護士が新聞社に手を回したことで、大々的に記事になった。こうなると私を一方的に黒の塔に連行することは、リギルはできない。
そして新聞記事を見た王都民の反応は――。
「王室の怠慢だ。第二王子が婚約破棄し、新しい婚約者を内定させていたなんて、聞いていないぞ」
まずはそこからだった。
本来であれば、公爵令嬢による男爵令嬢轢き殺し未遂事件と共に、婚約破棄、新しい婚約者の発表という流れに第二王子のリギルはしたかったはずだ。
ところが私が失踪してしまったので、その計画が狂った。
ゆえに密やかに私の両親と婚約破棄の話を進め、ヒロインとの婚約内定に漕ぎつけていたのだ。でもそうやってこそこそと動くことを、王都民が快く思うわけがない。この時点で世論は、第二王子に対してマイナスイメージ。さらに。
「婚約破棄して即内定ということは、アンブローズ公爵令嬢と婚約している期間に、その男爵令嬢との交際が始まっていたんだよな? 轢き殺し事件も疑惑だっていうのに、次の女の尻をほいほい追いかけるのはどうなんだ? この第二王子は、二股かけていた下衆野郎なのでは?」
決して新聞ではそういう書き方はしていないが、王都民は酒場で酒を飲みながら、こういう方向で盛り上がる。井戸端会議でも同じ。そもそも過去の王家の態度から、彼らに対する不平は簡単に起きる。そこに来て格好の餌がばらまかれたのだから……。もうみんな言いたい放題だ。
この状況に貴族達はどう反応しているのか。























































