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13話:妊娠……!?

 ネックレスやイヤリングの宝石をはずすための道具を購入したマルシクが戻って来た。


 すると。


「エリス様、こちらでどうでしょうか。一応、いくつか見繕いましたが」


「ありがとう。助かります、マルク」


 そう言ってエリダヌスが受け取ったのは、かつらだ。

 そのかつらの一つを被った私の推しは……。


 銀髪のストレートの長髪、後ろで一本にまとめたそのかつらは、実に似合っている!


 なんというか「エリス」という名にぴったりだった。


「明るい時間ですからね。娼館への出入りを目撃されると面倒でしょう。これならどうですか?」


「ウェリントン団長とは思えません。別人です。かつらだけでも印象が変わりますね」


「念のためでメガネもかけます」


 騎士団の隊服を着ているので、騎士には見えるが、これはインテリ騎士だ。


「では図書館へ向かい、その後宮殿に寄り、捜査状況の情報を収集してきます。マルク、リズベルト様のこと、頼みましたよ」


「かしこまりました」


「お気をつけて」


 部屋を出て行く際、エリダヌスが私の手を取り、甲へとキスをした。

 これには完全にハートをズキューンと射貫かれてしまう。


 エリダヌスに協力を要請した時。


 それはもう首を締めあげられ、かなり大ピンチな状況だった。

 まさかこんな風に、手の甲へキスをしてもらえるようになるとは思わない。

 うっとり状態だったが、マルシクは既に真剣な表情で、ネックレスとイヤリングの宝石を取り外す作業を始めている。


 手持ち無沙汰だったので、私は一階の共同で使える炊事場へ向かおうと思った。そこで客はお湯を沸かし、自由にお茶を入れて飲むことが出来た。


「リズベルド様を一人にすることはできません。自分も同行します」

「え、それでは意味がないのだけど……」


 結局、マルシクと一緒に炊事場へ向かい、お茶を用意することになった。すると仕事明けの娼婦たちから「まあ、仲がよろしいこと」と散々からかわれることに。


「ごめんなさいね。私が変な設定を思いついちゃったから……」


 そう言いつつも、二人の娼婦ラサとラナには口止めをしている。

 ということは私の考えた設定を、今の娼婦たちは知らないはず。

 単純にお茶を用意するマルシクと私を見て、仲睦まじいと思われたようだ。


「自分こそ、本来護衛騎士の立場なのに。お嬢様の駆け落ちのお相手だなんて……恐れ多いです。旦那様が知ったらカンカンだと思います」


 そう言えば両親は、今頃どうしているだろうか。

 でも二人とも、ちょっとやそっとではへこたれない、バイタリティーを持っている。だからこそ私の件が、新聞で記事になることもなかったのだろう。うん、あの二人なら大丈夫。娘の不明を心配するより、私がヒロインを轢き殺そうとした件が事実なのか、調べていてくれそうだ。


 それを思うと、公爵邸に戻りたい気分になる。


 だが公爵邸にいると分かれば、第二王子であるリギルが連行を申し出るだろう。そしてさすがの両親でも王室からの要求は……何度かは突っぱねるが、最終的には従うしかない。


 つまりやはりこの娼館に身を潜めていることは、正解のはずだった。


「さあ、お茶の用意は完了。部屋に戻りましょう」


 トレイにティーカップなどを載せ、まさに炊事場から出ると。

 ラサとラナに励まされ、泣きながら廊下を歩く、可憐な様子の女性がいる。


 亜麻色の髪にエメラルドグリーンの瞳で、肌に張りがあり、若々しい。

 十五、六に見えた。


 どうしたのかと声をかけたくなるが、詮索するのは憚れる。

 なぜなら。

 その可憐な少女、お腹が大きいのだ。

 これはもしかすると、意図せずして客の子供を身籠ってしまい、ずっと黙っていた。しかしいよいよ隠し切れない状況になった――そんな風に思える。


「あ、お嬢さん、マルクさん!」


 ラサが気づき、私に声をかけ、結局。

 私達の部屋でお茶をすることになった。


 マルシクは例の宝石を取り出す作業をしながらお茶を飲み、私達の話に耳を傾ける状態になる。つまり実質話を聞くのは、私というわけだ。その私はベッドに座り、サイドテーブルに紅茶の入ったティーカップを置いた。ラサとラナともう一人の少女は、ソファに腰を下ろしている。


「この子、名前はロメダと言います。現在十六歳。見ての通りの姿なんですが、妊娠していないんです」

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