発見
今回かなり長くなってしまいました。
それでも良ければ一読ください。
さかのぼること1週間前。
「西側の集落が襲撃を受けている?」
「はい、そのようです。男どもは虐殺され、女どもは連れ去られた様子。惨いものです。」
俺の問いかけにセバスが答える。
さて、どうしたものか。
集落の襲撃か。
奴隷の少女も探さねばならんのにこんな厄介ごと…。
「待て、その集落にはだれか足を運んだのか?」
「マイティ殿が…。」
「どんな様子だった。」
「報告に上がっているのだと男は老若問わず殺され、女は老人以外は連れ去られておりました。また、家々は焼き払われ復興には時間がかかるかと。」
勇者である兄さんがいる領地でそんな暴挙を起こすのか?
おかしい。
もしかしてその盗賊団は兄さんのことを知らない?
兄さんのことを知らなければ当然俺のことも知らない。
俺のことを知らなければ俺の従者を拉致しても気づかない。
ないわけではなさそうだな。
当たってみるか。
「セバス、その集落に俺も行こう。準備してくれ。」
「了解いたしました。」
たどり着いた集落は無残な姿をしていた。
あちらこちらで火災の後。
地面には染みついた血。
「アルタ様。お待ちしておりました。」
騎士団長のマイティがこちらによって来た。
「こちらです。」
そう言って案内された天幕にはケガをした男が寝ていた。
「唯一の生存者です。手傷を負いながら隠れていたそうです。」
マイティはそういってその男を紹介する。
「ナナンメ領領主サルビア・オーナスの次男、アルタ・オーナスだ。」
その男に対して簡単に自己紹介をする。
「領主のご子息様。どうか、どうか娘を助けてください。」
男はそういってきた。
「落ち着け。約束…とまでは出来ないが出来る限り善処しよう。そのためにまず、襲ってきた盗賊団のことを教えてくれ。」
「あ、ありがとうございます。」
男は襲撃の時のことを話し始めた。
「1週間ほど前の夜更けです。急に外が騒がしくなってその時に初めて襲撃を受けているのだとわかりました。薄暗かったため顔は見えませんでしたが、奴らは銀狼と名乗ってました。夜更けだったとはいえ自警団もいないこの集落では若い男が日々訓練を受けておりました。そのため、多少腕に覚えがある程度の野盗には負けないつもりでした。しかし、結果はこのざまです。奴らは強い。その辺の兵士たちでは手も足も出ないほどに。」
なるほど、かなりの手練れのようだ。
俺が気付かないのも納得はいく。
おそらくだが少女を攫ったのもその銀狼だろう。
騎士団が動いたとなればおそらくこの領地外に逃げるだろう。
南か。
最短でこの領地から出るとなるとこの場所から最も近いのは南。
「マイティ、極秘に隠れ家になりそうなところを探れ。位置はここより南だ。」
「わかりました。」
「セバス、シアンを呼び戻しておけ。すぐに動くことになる。」
「了解いたしました。」
「場所がわかり次第動くぞ。」
『はっ。』
マイティの報告では領地南の洞穴が隠れ家になっている。
「アルタ様、準備は整っております。」
俺の近くにシアンが来る。
「現在、あの洞穴の周囲にアルタ騎士団100名が待機しております。」
「ふっ、少ねえな。」
鼻で笑う。
「仕方ありませんよ。まだ新設されたばかりの騎士団ですから。」
「あと名前がダサい。」
「それも仕方ないですよ。正式な名称は後々考えましょう。」
シアンとそんな軽口をたたき合う。
よし、行くか。
「いくぞ、死ぬなよ。」
「御冗談を、私がそんな簡単に死ぬように見えますか?」
「ふん、期待しているぞ。」
そんなことを言って突入する。
入り口には見張りが2人。
増援を呼ばれる前にシアンが1人、俺が1人片づける。
先遣隊を突入させ、盗賊団と思わしきやつは1人残らず殺害する。
隊列の中段に位置して洞穴を進む。
ふと、細道が目につく。
「シアン、俺はこっちを進む。そっちに捉えられている者がいなければこちらに来い。」
「御意。」
そういってシアンと別れる。
人がいない。
先ほどまであふれていたのに。
進んでいくと扉が目に入る。
中からは怒号が響いている。
どうやら当たりだったようだ。
俺は目の前にある扉を開ける。
「やっと見つけた。勝手にいなくなってんじゃねー。」
男が3人。1人は長髪の男、槍を手に持っている。1人は小太りの男、斧を手に持っている。1人は隻眼の男、左手で少女の髪をつかんで殴りかかっている。
「おい、お前。何もんだ?」
隻眼の男が問いかけてくる。
「お前が今殴っていた少女のご主人様だよ。」
「おいおい、たかだか奴隷を助けるためにご主人様自ら助けに来たってわけかよ。」
男どもが笑う。
「そしたらほら、返してやるよ。」
そう言いながら少女をこちらの方に投げてくる。
危ないな。俺じゃなかったら受け止められないぞ。
そんなことを思いながら少女を受け止める。
ひどいありさまだ。
顔は誰だか判別がつかないくらい腫れ、指もあらぬ方向に曲がっている。
すでに全身満身創痍。
こんなになるまで…。
「た、助けて…」
「初めてお前の声を聞いたな。もう大丈夫だ。安心しろ。」
「た…助けて…あげ…て…くださ…い。あ…あの…人達…を…。」
こんな有様なのに捕らえられた他の者を気にするのか。
優しく頭をなでながら壁に寄り添わせる。
「安心しろ。もとよりそのつもりだ。少し寝ていろ。すぐに終わらせる。」
「へー。男前じゃん。」
隻眼の男がちゃちゃを入れる。
「うるせーな。俺は今機嫌が悪い。悪いが手加減できんぞ。」
「ほざけ。」
そう言いながら隻眼の男が腰の剣を引き抜き斬りかかってくる。
俺は自分の剣を抜き受け止め、はじき返す。
瞬間、つぶれている左目の方に回り込み斬りつける。
読んでいたとばかりに受け止められるがすぐに態勢を整え、追撃を加え―
「おらっ!」
あぶねーな。
小太りの男が斧を振り下ろしてきた。
シュンとしたような風切り音が耳をつく。
薄皮1枚で回避する。
くそっ。
槍を持った長髪の男まで参戦してきやがった。
「なかなかやるじゃねーか、クソガキ。」
「手助けしやすぜ、親分。」
「こんなガキ、ちゃっちゃと殺してしまいましょう。」
さて、どうする。
3人の猛攻をしのぎながら考え…
考え…
かんが…
無理だ。
思考まで手が回らない。
凌ぐので手いっぱいだ。
どうする。
シアンが来るまでどうやって持ちこたえる。
ガハッ
腹を蹴られ、壁に激突する。
「おいおい、これで終わりかよ。」
「んなわけねーだろ。」
凄んでみるが打開策があるわけではない。
「魔力も使えんゴミが。」
「身体強化魔法も使えないとは、やれやれ、無能の極みですな。」
「ゲハハ、俺でも使えるっていうのに。」
身体強化魔法。魔力を体にまとい、自身の体を補強することで身体能力を向上させる。
使えないことはないが、あまり今使いたくない。
「冥途の土産に魔法というものを見せてやるよ。魔法陣展開、風魔法ウインド。」
そういうと風の刃が俺に向かって飛んでくる。
クソが。
どうにか剣ではじき返す。
「どうした?まだまだ行くぞ?ウインド、ウインド、ウインド!」
どうにかして足を動かしかわし続ける。
「ぎゃははは、あのガキ、逃げ回ることしかできてませんぜ?」
「滑稽ですな。」
取り巻きの2人は笑っている。
くそ、使うか。俺の身体強化魔法。
「身体強化魔法。」
「何?使えるのか?」
隻眼の男が少し身を引く。
「なにも起きんではないか。」
再び3人は笑う。
刹那
小太りの男に一瞬で接近し、蹴り飛ばす。
「なっ…。」
「何が起きた?」
身体強化魔法。自身の体に魔力をまとわせ、体を補強する。それが普通の身体強化魔法。
俺のは違う。
体外で回す魔力を体内で回す。
そうすると魔力のロスを極限に抑えられ、同量の魔力で倍以上の効果が得られる。
だが
欠点が2つほどある。
1つはコントロールが難しいこと。
体外で回す魔力と体内で回す魔力はコントロールの難しさが段違い。
そしてもう1つの欠点が身体への負担。
大人の体格ならともかく今の体格では負担が大きすぎて長時間使用することができない。
1分。
それが俺が身体強化魔法を使える限界。
この1分で勝負を決める。
「死ねー!!!」
長髪の男が槍と突き出す。
俺はそれを躱し、返す剣で槍を切断する。
「なっ!」
そのまま手首を切り落とし、腹部を突き刺す。
「あ、ありえん、こんなガキに…。」
長髪の男は倒れる。
あと1人。
いけるか?
いややる。
「ふ、ふざけるなよ。もう容赦せん。殺してやるよ。」
隻眼の男が吠える。
「いいからかかって来いよ。」
挑発してみる。
「おら!」
男が剣を振り下ろす。
俺はそれを躱し、再びつぶれている左目の方に回る。
死角からの一撃。
再び男は受け止める。
しかし、さっきまでとは違い今は身体強化を施している。
受け止めきれるはずがない。
男は壁まで吹き飛ばされる。
「クソが、どういう原理で。」
早く仕留めなければ、時間がもうない。
「これで終わりだ。」
隻眼の男に斬りかかる。
その時、
ブハッ。
全身から血が噴き出る。
膝をつく。
くっ、時間切れか。
隻眼の男が笑う。
「よくわかんねーが、どうやら運はこっちに傾いたようだな。」
どうする?どうする?どうする?
いや、大丈夫だ。
「ふー、ここまでか。まだ俺1人では勝てないようだ。」
「今更命乞いか?聞いてはやらんぞ?」
「そんなんじゃねーよ。」
間に合ったか。
「後は頼んだ。シアン。」
長髪の偉丈夫が隻眼の男に突っ込む。
「大丈夫ですか?アルタ様。」
「ああ。と言いたいがあまり強がっていられるほど無事ではないな。」
「軽口が叩けているのなら大丈夫ですね。あの少女のもとにいてあげてください。」
「わかったよ。」
俺は少女のもとに行く。
他の兵士によって治療されているようだ。
シアンの戦いを観察しよう。
隻眼の男は風魔法を使いながらシアンに近づく。
「水魔法ウォーターボール。」
水魔法で風魔法を相殺しながら、シアンが剣を振るう。
5合ほど打ち合った末に隻眼の男の袈裟懸けに斬りつける。
傷は浅かったが力の差を示すには十分だろう。
「おとなしくお縄につきなさい。」
ふー、と1つ息を吐く。
こうして盗賊団騒ぎはひとまず収まったのだった。
人物紹介④
マイティ・ネオン
ナナンメ領騎士団団長
大柄で筋肉質
訓練は欠かさず毎日行っている
大剣の手入れも欠かしたことはない
奥さんが4人いる




