奴隷の少女
更新がかなり遅くなってしまいました。
書いてはいたんですよ。
見切り発車は良くないですね。設定がまとまらない。
というわけで時間があれば一読ください。
ゴブリン大量発生討伐の論功行賞が行われた。
無論、第一位は我らが兄ナーバであった。一人で三百近いゴブリンを殺し、上位種もかなりの数を殺していたらしい。
さすがの一言である。
「大儀であった。ナーバよ。お前がいる限りこのナナンメ領は安泰であるな。」
父であるサルビアはいう。
「皆もよくやってくれた。」
威厳のある声でその場にいた家臣たちに声をかける。
一斉に地鳴りのような勝鬨が上がる。
これだけでサルビアが優れた領主であることが伝わってくる。
なんだ?父上。お疲れなのか?いつもより声に覇気がない気がする。
いや、気のせいだな。
つつがなく論功行賞も終わり、俺は兄ナーバに呼び出される。
今度は何だってんだ。
こちらは疲れてんだよ。
いや、それは兄さんも同じか。
そんなことを思いながら兄さんの執務室までやってくる。
「やあ、アルタ。久しいね。無事でよかったよ。」
「兄さんもね。すごい活躍だったらしいじゃん。」
「勇者の力を持っているんだ。あのぐらい働く無くてはな。それよりもシアンがビビっていたぞ。お前の実力に。」
へー。あのシアンが。
「今回、論功行賞で騎士団長のマイティを上回れたのはお前のおかげだ。って言っていた。」
「俺も結構頑張ったからね。」
「ああ、そうだとも。そこでお前にも褒美を与えようと思う。」
「本当!?」
「三日後は空いているな?」
「もちろんだ。用事があっても空ける。」
「褒美を考えに街へ出るぞ。」
「よっしゃー。兄さんと出かけられる。」
兄さんは忙しい。それこそ朝から晩まで執務に追われている。
そんな兄さんと一緒に出掛けられるのは珍しいなんてものではない。
「絶対忘れるなよ。兄さん。」
そういって勢いよく執務室を飛び出た。
三日後がやってきた。
兄さんと一緒に領内の街を練り歩いている。
あっちの武器屋に行き、こっちの魔導書屋に行き、あれでもない、これでもないを繰り返す。
いい武器や珍しい魔導書を見つけてはいるがなかなか「これだ」ってものが見つからない。
「ゆっくり決めればいい。まだまだ時間はある。」
「でもよ、兄さん。兄さんは仕事があるだろ?」
「ははは、そんなもんを気にしなくていい。だいたいはこの三日間のうちに終わらせてきた。」
そんな会話を続けていると見慣れない店が見えてきた。
「兄さん、あの店は何だ?」
「あれは…。奴隷商の店だな。」
「いらっしゃいませ。ってナーバ様にアルタ様でないですか。」
奴隷商の店主はこちらに気づき、挨拶をする。
「奴隷って違法じゃないのか?」
俺は兄さんに聞く。
「ほとんども場合、違法ではございませんな。」
そう答えたのは兄さんではなく、奴隷商の店主であった。
「ほかの国では奴隷の売買を禁止にしている国もありますがここセヤク国では禁止されてはおりません。」
「そうなのか。」
「はい。奴隷の扱いも国によって様々ですが、セヤク国は割と良い方です。国によっては人としては扱われていないこともありますが、少なくとも最低限の生活の保障が国法に記されております。」
「それ守られてんのか?」
「どうでしょうか。それは人それぞれとしか言えますまい。」
「駄目じゃねーか。」
「貴族連中ともなると国の法律でもなかなか裁けなくなるんだよ。」
兄さんが代わりにこたえる。
「まあ、生き延びれただけマシといいたいのだろうな。」
苦々しい顔で兄さんが言う。
「店主、あいつどうしますか。」
色黒の男性が話しかけてくる。
「おい、今領主のご子息が来ているんだ。後にしろ。」
「なんと。それは失礼いたしました。」
「いや、いいんだ。して、彼は?」
兄さんが聞く。
「それこそ私の保有する奴隷の一人ですよ。」
「えっ。普通の雇用関係のように見えるが…。」
「ええ。私からしてみれば奴隷をひとのように扱わない奴の方が理解に苦しむのですよ。同じ人間同士で立場が変わるなんてことあってはならない。」
「よく貴族を前にして言えるな。」
そんなことを俺がつぶやくと店主は慌てた様子で謝罪した。
「も、申し訳ありません。出過ぎたことを申しました。」
「いや、いい。言っていることはもっともだ。だが気をつけろよ。他の貴族がこうとは限らん。」
「肝に銘じておきます。」
「アルタ、言い過ぎだ。して、店主殿。何か問題のある者がいるようだが。」
兄さんが話を戻した。
「はい、こちらです。」
店主に連れられて店の中に入る。
小さな店ではあったが、店の中はよく掃除されておりきれいにされていた。
奥の部屋に通され、その中にいたのはやせ細った少女であった。
年のころは俺と同じくらいか?
深い青色の髪が無造作に伸び切っている。
体はやせ細っており、ぼろい布を一枚着ているのみとなっている。
おいおい、店主。もうちょいまともな服くらい着せてやれ。さっきと言ってることと違うじゃねーか。
「この者は元々違法の奴隷商が持っていたのです。」
店主が語り始めた。
「詳しい経緯はわかりませんがおそらく魔物か盗賊にでも襲われ、家族と別れたのちに違法奴隷商に捕まったのでしょう。そのまま、4年ほど違法奴隷商の下でこき使われておりました。その違法奴隷商が国に捕まった際に私のところに引き渡されたのです。」
「ふむ、なるほど。」
兄さんが奴隷の少女の前に行き、膝をつき話しかける。
「君はどこから来たのかな?」
返答はない。
「名前は言えるかい?」
返答はない。
「今何歳だい?」
返答はない。
「何を聞いても口を利かないのですよ。奴隷商のもとにいた影響か、はたまたそれ以前からなのか。いうことには従いますがそのぼろ衣以外服を着ようとせず、食事もまともに口をつけない。どうにかしてやりたいのですが私にはどうすればよいかさっぱりで。」
かなり困っているなこの店主。
俺はその少女のことをよく観察する。
見えている腕や足には打撲痕や鞭でたたかれた痕がある。
ほぼ骨のようになった腕、こけた頬、ぼさぼさの髪。
俺は兄さんほどできた人間ではない。
自分や自分の大切な人以外の人間がどのような状態だろうと存外どうでもいい。
だが、見てしまった。この現状を。
俺はわがままなんだ。俺の目の届く範囲で不幸な人間を見たくはない。
「兄さん。褒賞の件、まだ何にするか決めてなかったよね?」
「あぁ、そうだが。どうした。」
わかってるくせに聞いてくる。
「俺の褒賞はこの少女だ。この子が欲しい。」
設定集①
大量発生
およそ50以上1000未満の魔物の群れ
同種、異種問わず一か所に魔物が集中していたらそう呼ばれる
便宜上そう呼んでいるだけで特に決まった決まりはない
魔物大群
1000以上の魔物の群れ
1000以上が一か所に集まっていたらそう呼ばれるためこちらも決まった決まりはない




