08 謁見 ※チヒロ
※※※ チヒロ ※※※
第3王子殿下は話題を変えた。
「さて、とにかく君にはこれから南の宮で暮らしてもらうことになる」
「ハイ」
「念押しするけど、ずっとね。『空の子』は特別過ぎるくらい特別な存在なんだ。
君がどう思おうが地上にいる以上、王宮にいてもらうよ」
「……それで名前呼び、ですか」
「ようやく気付いてくれて嬉しいよ」
―――くうううううぅ
「でも特別と言われましても。私は、本当に今までの『空の子』とは違い《知識なし》です。そんな立派な扱いでなくても。
……例えば。どこかの村の片隅にでも置いてもらえば充分ですが」
えへ、と笑顔で言ってみたのだけど。
第3王子殿下はうんざりしたような顔になった。
「……君、自分の顔を鏡で見たことがある?」
―――どういう意味だ!失礼な!
「とにかく却下。やめてよね。――君はこの国に混乱を起こしたいの?」
「……え?」
「そうしかねない存在。それが『空の子』なんだ。
この国に、どんな変化を起こすかわからない。……そのドレスみたいにね」
「ドレス?」
「君が作らせたんだろう?この国にはない形だ。
ご婦人方のドレスはこれから変わっていくだろうね」
「……」
「わかるかな。君には些細な知識でも、この世界に落ちれば波紋をうむ。
どう広がるかわからない波紋をね。君はそういう人物なんだよ。
――わかったら大人しく王宮にいて、王家に保護されててくれるかな」
―――なにそれ
すごくストンと腑に落ちてしまった。
そうだったのか。
珍獣じゃなかった。
私は、ここでは宇宙人なんだ。
王族や、あの偉そうな人達(多分貴族)のいる王宮なんて御免だと思ったけど。
宇宙人を有害か無害か確かめもせず、野に放つわけにはいかないよね……うん。
「わかったかな?」
「……ワカリマシタ」
こうなったらもう従うしかない。
確かに迷惑をかけるわけにはいかないし。
と、考えていたら第3王子殿下が「妙なことになったな」とため息をついた。
ちょっとムッとした。そうだろうけどさ。
それ、全部、私のせいなの?
「色々決める事があるけど。まず初めに、君の護衛を最優先で決めようか。
君が息苦しくならずに済むように、君に決めさせてあげるよ。
宮に着いたら候補者を出すから好きに選んでくれるかな」
私は第3王子殿下を軽く睨んだ。
何が「君に決めさせてあげる」よ。
「……初めから決めてあったくせに」
「……へえ。どうしてそう思うの?」
「きたばかりの私と二人きりにして。私が彼女を選ぶように仕組んだでしょう。
理由は。同性だってこともあるだろうけど、決め手は――」
「――決め手は?」
「一人で護衛を任せておける人物だった、ってこと。賭けてもいいよ。
エリサが殿下の護衛の、女性の中で一番強い。違う?」
「ふふ。流石に、あの短時間で名前呼びするほど仲良くなってくれてるとは
思わなかったけどね」
「……なんか腹が立つ」
「なら変える?」
「………本当に腹が立つ」
第3王子殿下はぷっと小さく吹き出したあと、さも楽しそうに笑った。
くそう。
顔だけは王子様だな。