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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
999年目
79/196

04 確信 ※セバス




 ※※※セバス※※※



「びっくりしたよ。

チヒロに《姓》があって、それが母上の愛称と同じだったとは」


「はい。私も驚きました」


「いったい、『空』は何をどう考えてチヒロを僕に降ろしたんだろう。

まさか《姓》と《愛称》をかけての冗談ってことは……ないだろうけど。

本当に『空』の考えはわからないな」


「はい」


「それにしても……エリサのあの傷は何?だんだん増えてるような……」


「訓練を増やしたようです。チヒロ様の盾として精進しているのでしょう」


「そう。……良い心がけだけれど。大丈夫かな。

チヒロの『仁眼』に、もし《己の命と引き換えに人を治す能力》があったら。

チヒロはエリサに能力を使うかも――」


「――平気でしょう。

今までエリサの傷を治されないところを見て確信しました。

チヒロ様に《己の命と引き換えに人を治す能力》があったとしても、それをあの方は《無意識に》は使えない、と」


「……試していたの?」


「はい。ですが確信はしておりました。

《己の命と引き換えに人を治す能力》があるとは知らずに触れても相手を治してしまうなら、テオが死病に罹った時にチヒロ様は《治療》されていたはずです。


ですがチヒロ様は特効薬を《吐く》手を使った。


しかもテオはチヒロ様がその手で看病しても回復まで数日かかりました。

あの方が無意識に『仁眼』で《治療》したのではない証拠です。


古代の貴人たちと同じように、チヒロ様の『仁眼』に《己の命と引き換えに人を治す能力》があったとしても。


おそらく《能力がある》ことを知らなければ使えない。

ならばやはりチヒロ様に《能力があるかもしれない》と告げる方が危険です」


「そうか」


「はい。

《貴女には己の命と引き換えに、人を助ける能力があるかもしれない》などとチヒロ様に告げたら。

あの方は必ず《能力》の有無を知ろうと試します。

――例えばエリサの小さな傷などで」


「そんな馬鹿なこと、と言いたいけれど。チヒロの場合、否定できないな」


「はい。

チヒロ様がご自分で気付かれた時には仕方がないので《能力》を使わないように説得をしますが。

お伝えするにしても、あの方がもっと《大人》になられてからがよろしいかと」


「………そうだね。そうしようか」


「はい」



「セバス?どうかしたの?」


「――は」


名前を呼ばれて我にかえった。

顔を上げ執務机の方を向く。


レオン様と我が主人のお二人が怪訝そうにこちらを見ていた。


私はチヒロ様のお部屋にいた時から今、レオン様に声をかけていただくまで。

考えていたことを口にする覚悟を決めた。


少し頭を下げる。


「レオン様。あり得ないことだと承知で。それでも言わせていただきます。

チヒロ様は。王妃様に似ていらっしゃいます。

―――王妃様の生まれ変わりではないかと思えるほどに」


「は?」


「昨年テオが死病に罹ったことを隠そうとしていた私を、チヒロ様は怒り問い詰められました。

……見覚えのある表情で。威厳を持って。

あの日から時が経てば経つほど、単なる空似とは思えなくなっていたのです。

――そして今日。それが確信に変わりました」


「……セバス。チヒロが母上の生まれ変わりだと、そう言いたいの?」


「はい。その通りです」


「何を馬鹿なことを。

僕は『空』に《母上に幸せを》と言っただけで母上を欲したわけじゃない。

それに。確かに生まれ変わりはあるのかもしれないけれど、それにしても。


母上が亡くなられてまだ17年だよ?


チヒロはこことは違う世界で《天寿を全うして》亡くなり、生まれ変わってこの世界に来た、と言った。

時間が合わない」


「――承知しております。

ですがそれでも。チヒロ様はリュエンシーナ様の生まれ変わりだとしか思えないのです」


「セバス……」


頭を深く下げる。


「申し訳ありません。このような荒唐無稽なお話を。それでも――」


「――母上とチヒロは。そんなに似たところがあるの?」


「……いつもではございません。ですが時折見せられる表情。話し方。

気のせいだと片付けるには………似すぎているのです」


「そう」とレオン様は小さく呟いた。


「けれど。彼女は『チヒロ』だよ。母上じゃあない」


「はい。わかっております」


私は跪き請う。


「レオン様。お願いがございます」


「何?」


「現在、チヒロ様の侍女はいないとうかがっていますが」


「ああ。チヒロが専属は不要だと言ってね。

身の回りのことは自分でするからいらないと。

そういう訳にもいかないから今は数人の侍女を当番制で置いている。

仲良くはしているようだけど。アイシャのようにはいかないかな」


「……私の妻を、侍女に加えていただけないでしょうか」


「―――」


「チヒロ様はチヒロ様。わかっております。

ですが。会わせたいのです。チヒロ様に。………妻を」


レオン様はくすくす笑った。


「セバス……。さすがに侍女は無理だよ。申し訳なさすぎる。

話し相手なら許可はするけれど。

だけど良いのかな。勝手に決めるとまた叱られるよ?


―――我が国初の女性騎士であり、《伝説の女性騎士》エスファニアに」




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