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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
999年目
78/196

03 姓 ※チヒロ




 ※※※ チヒロ ※※※



そんなにびっくりされることだと思わなかった。


レオンと、シンと、セバス先生とエリサとジルがいた。

ほとんど習慣になっている《一日に一度のみんなで休憩》中。


私の部屋に来たシンが、机の上に置いてあった糸で繋げた折り鶴に気がついたので、折り鶴の話をしていた。


シンが折った鶴を見てから、私も折っているのだ。鶴を。一日にひとつ。


シンは折り鶴を《願い事がある時に作る物》と教わったらしいが、本当は《願い事がある時に千羽作る物》。

千羽作って糸で繋げ、飾るのだと告げたところだった。


「じゃあその《オリヅル》は『空の子シン・ソーマ』がこの国に伝えた物なの?」


レオンが聞いてきたので私は頷いた。


「うん。そうだとしか思えない。

この《オリヅル》の折り方は前世の《私》がいた小さな国、独自のもののはずなの。

『ソウマ・シン』さんがこの国の誰かに教えたんだよ、きっと」


「……それをシンの家の人達が今日まで伝えてきたということは。

シンのご先祖様が『空の子シン・ソーマ』に《オリヅル》を教えてもらったんだろうね。

そしてそれを家の者に教え、代々受け継がれシンにまで至る、と」


「だと思う。懐剣もあるし」


「《カイケン》?」


「シンが私にくれた《玩具》の剣。

あの形の剣も前世の《私》がいた小さな国にあったもので、懐剣って言うの。


あれ、《王家の盾》が持つ独特な形の剣なんでしょう?


あれも『ソウマ・シン』さんがこの国に伝えたんじゃないかな。

シンのご先祖様はよほど『ソウマ・シン』さんと近いところにいたんだね」


「そうか。……チヒロ」


「何?」


「『シン・ソーマ』や他の『空の子』たちの記録は見なくていいの?

前は見たいと言っていただろう?君が見たいなら記録書の閲覧許可をとるけど」


「――ううん。いい」


「いいの?『シン・ソーマ』のも?」


「うん。『ソウマ・シン』さんに穏やかな日もあったんだってわかったもの。

十分よ。それより今は自分がしっかり生きなくちゃね。

『空の子』の先輩たちのことがまた知りたくなったら頼むかもしれないけれど、今はいいわ」


「そうか。――ねえチヒロ」


「何?」


「ずっと気になっていたんだけど。

君は何故『シン・ソーマ』を『ソウマ・シン』と呼ぶの?」


「ああ、それ?

前世いた国では、名前は《姓》《名》の順番で呼ぶものだったの。

だから《シン・ソーマ》ではなく《ソウマ・シン》」


「……敬称もつけないよね?『シン・ソーマ』の名を呼ぶ時に」


「え?敬称?『ソウマ・シン』さんに《様》?何故?」


はっとしたようにレオンが言った。


「チヒロ。もしかしてチヒロにも、彼と同じように姓があるの?」


「え、もちろんあるよ。当然でしょう?」


「……あったんだ……。前世は平民だったと言うからてっきり――」


そこまで言われて、私はようやく気がついた。


この国で《姓》があるのは貴族や王族。身分のある人だけだ。

平民には姓がない。


私が、同じ『空の子』でも《姓》のある『ソウマ・シン』さんのことを敬称も付けず呼ぶのはおかしいとレオンは思ったんだ。

そして私にも《姓》があるのでは?と思い至った。


レオンは額に手をあて、ため息を吐いてから聞いてきた。


「では、チヒロ。教えてもらえるかな。君のフルネームは何ていうの?」



私は《ああ、そういえば言ってなかったな》と思った。


私がこの国に来て、初めて名前を名乗った相手はエリサだった。

そのエリサは騎士だから姓を名乗ることは禁止されていて、私に《エリサ》という自分の名前だけを先に名乗った。


だからそのあと名乗った私も《チヒロ》と、自分の名前だけを返したんだったわ、そういえば。


そのあとは。

私が、前世の《私》は一般市民(平民)だったと言ったからだろう。


みんなはレオンと同じように私を《姓を持たない者》だと思っていたのだろう。

姓なんて聞かれたことなかったし。私もわざわざ言わなかった。


だから私は、自分の姓を告げた。


その瞬間、全員が息を呑んだ。ジルを除いて。


それを見た私の方が驚いてしまった。

え。何?その反応??


レオンにもう一度言ってと言われ、私は戸惑いながらも告げた。


「私の姓はシイナ。

私のフルネームはシイナ・チヒロだよ」と。


また全員が息を呑んだ。


と。


レオンが言った。


「……冗談……?」


―――冗談ってなに??


意味がわからない。


誰か教えて、と思ってみんなを見回したらセバス先生が教えてくれた。


「《シーナ》はレオン様のお母様。

お亡くなりになられた王妃・リュエンシーナ様の愛称です」と。


あ、なんだ。そう言うこと!


「そうなんだ。すごい偶然だね」


私は笑った。

エリサが「そうですね。驚きました」と笑い返してくれた。


しかし男性陣は黙り込んでいる。


普段から寡黙なシンはともかく、レオンとセバス先生は何故?


私の姓が王妃様の愛称と同じだと何か問題でもあるのか。


ちょっとムッとした。




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