表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
999年目
77/196

02 新年 ※チヒロ




 ※※※ チヒロ ※※※



この国で二度目の新年を迎えた。


私はまた、みんなと一緒にひとつ歳をとった。


12歳になったのだ。


20歳になったエリサは綺麗になった。見惚れるほど。

いい恋をしているのだろうと思うと嬉しくなる。


そのエリサに「背も伸びたし、女性らしくなってきましたね」と言われて嬉しかった。


ふふん。自分でもそう思う。

この国に来てすぐにもらった男の子服は、丈も合わなくなったけど、何より胸のボタンがとめられなくなったもの。


しかし17歳になったレオンには「ようやくテオと判別できるようになったね」

と言われてしまった。


くそう。


そう言うレオンはまた背が伸びた。にょきにょき伸びちゃって。

私との身長差は開くばかりだ。私だって大きくなったのに。


シンは25歳に。

ジルといる姿を、侍女さん達が遠くから頬を染めて見つめているが、本人は全く気付いてなさそうだ。


……女心には鈍そうだもんね。私に《玩具》の懐剣をくれるくらいだし。


私の為に、わざわざテオに作らせたそうだ。……何それ。

女の子にする贈り物じゃないでしょう。どういう感覚してるのだ。


仕方がないので懐剣袋を作って入れてみたらこれが思いのほか可愛くて、結構気に入ってしまったのは悔しいから内緒だ。


テオは私と同じく12歳になった。


なんと頭ひとつ分、私より背が高くなった。

顔も身体つきも、子どもから少年へと変わった。

……確かにレオンが言うように、もう私とは間違えられようもない。


「かわいいテオが大きくなっちゃった。寂しい」

と言ったらエリサに呆れられた。


テオは今、組子細工に夢中だ。


釘も接着剤も使わず、細く切った木のパーツに切れ込みや凹凸を作って組み合わせ、美しい幾何学模様を作る細工。

寸分の狂いも許されないような難しい細工にテオは夢中になって挑戦している。


前世の《私》が一度、キットを使って小さなコースターを作った話をしたら飛びついてしまった。

《私》がいた小さな国の幾何学な文様がかなり気に入っていたから、それも原因かもしれない。


テオは本当に細かい細工物が好きだ。

新しい万華鏡にも挑戦中だったけど、今はひとやすみ。


シンの屋敷で作成しているので会えなくてちょっと寂しいけど。

どんな物を作り上げてくれるか、楽しみに待っている。


セバス先生はお元気で変わらず授業をしに来てくれる。

お歳を聞こうとしたらエリサに口を塞がれた。


王宮医師のロウエン先生にもお歳を聞こうとしたらやっぱりエリサに口を塞がれた。


……この国では男性にお歳を聞いてはいけないらしい。

理由はよくわからないけど。



死病の特効薬はまだ成功していない。

唯一手に入らない、材料となる植物にかわるものが見つかっていないのだ。


希望が見えたと思ったあの、ほんの少し黒く光っていた植物も、結局枯れてしまった。


王宮にいて、貴族の皆さんから届けられる植物を待ってだけじゃなく、もっと何かできないかな。


あの、ほんの少し黒く光る植物があるという国境近くの高山か、

唯一、あの薬が作られている国に行きたいけどレオンに「却下」されている。


……わかるけど。王宮の外にもまだ出してもらえてないし。



王太子妃様とは相変わらず仲良し。楽しい方で大好きだ。

現在、二人目を妊娠中でいらっしゃる。


第一子の王子様は、今や乳母を引き連れ走り回っている。

私が行くと喜んで、抱きついて頬にキスしてくれるのが本当に可愛い。

王太子妃様はそれを見て「チヒロは私の王子の初恋相手のようね」とからかう。


王宮の衣装係さんとお針子さん達とは、侍女さんのお仕着せを完成させた。


実際に着て働く侍女さんたちの意見をレオンがまとめ、私と衣装係さんがデザインを考え、お針子さんたちが作り。


何度も何度も試行錯誤して完成させたお仕着せは、動きやすいと侍女さんたちからとても喜んでもらえた。


寒い北の季節も温かく快適だそう。

担当する《宮》ごとに一部色を変えたのも好評。


嬉しくなる。

でもちょっと残念。アイシャにも、着て欲しかったなあ………。


アイシャは初めての赤ちゃんを授かって、侍女を辞めたのだ。

すごく幸せなことなのに、それでも別れはやっぱり寂しい。


でも「産まれたら親子で会いに来ていいですか?」と言ってくれたので、寂しいけど、その日を楽しみにしている。


どうか親子共に無事に出産してくれますように。

ちなみに子どもは男女どちらでも《チヒロ》と名付けるそうだ。嬉しい!


「嬉しいけどシンの部下の騎士さんの子と名前が一緒になっちゃうよ?」

と言ったら、それを聞いていたシンが


「――ああ、いつか私が言ったあれは嘘です」

と、しれっと言った。


…………うん。わかってた。そうかも、とは思ってた。


私が落ち込んでた時に、私の名を付けられた赤ちゃんの話ができる、なんてタイミング良すぎだよね。


話を聞いたレオンは大笑いした。なんだか悔しい。


ムッとしてシンに「嘘つき」と言うと、シンは


「嘘ではありません。今度、屋敷の者が産まれる子どもに《チヒロ》と名付けるそうですので、本当になります」


と、またしれっと言った。


レオンはさらに笑った。


なんて人なのだ。

私も可笑しくなって笑うしかなかった。


そんなシンのおかげで、もう『空』に戻された『空の子ソウマ・シン』さんのことを思い出しても気持ちは穏やかだ。


私は相変わらず、やっぱりシンには頭があがらない。



テオが作ったフライングディスクは今や騎士さんの遊びの定番になっている。


練習場で行うそれはまるで格闘技のようだとエリサに聞いた。

多分、エリサも混ざっているんだろう。あちこち傷を作っている。


第2王子は臣下籍になり、王宮を去った。

今後はリューク公と呼ばれるらしい。


王太子妃様から元・王子妃であり現リューク公夫人のシャナイア様が、私に感謝していたと聞いたが理由がわからない。


王太子妃様は、ただ笑って次の3人でのお茶会はいつにする?と聞いて下さったので悪い意味ではないのかな?と思う。

シャナイア様には幸せでいて欲しい。一応、リューク公も。



ねえ、見えていますか?



私は変わらず毎日、空を見上げて祈る。


この幸せがあなたに届きますように、と。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ