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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
998年目
75/196

46 真相 ※レオン




 ※※※ レオン ※※※



あの日は忙しかった。


急ぎの執務が重なり朝からいくつもの打ち合わせや面会が入っていた。


それなのに


国王の「王女はいないから王子に儀式をさせる」

なんていう一言のために突然、呼ばれた。


舌打ちしながら予定していた執務の変更を指示した。

そして儀式の為に正装に着替え、王宮の森へ向かった。


腹が立って仕方なかった。


国王のくだらない思いつきのせいで、その日予定していた執務は台無しになった。

見たくもない《奴ら》の顔まで見る羽目になって余計に苛々した。


訳の分からない祭壇が現れたからなんだと言うのだ。


こんな茶番に何の意味がある。


さっさと終わらせて《南の宮》へ帰ろう。

そう思って参道の入口へ向かうと入れ違いに戻ってきた第2王子と目が合った。


奴は僕の顔を見て――笑った。

それだけだ。


それだけで――かあっと頭に血がのぼるのがわかった。


もとから苛々していたからだろうか。

全身の血が逆流したと思うほどの怒りを抑えきれなかった。


仰々しく祈るフリをしながら、心の中ではずっと悪態をついていた。


バカバカしい。

何が『空』だ

何もできないくせに

助けてなどくれないくせに!


―――叶えられるものなら叶えてみろ!



――「『空』になんと《言って》喧嘩を売られたんですか?」――



シンに言われるまで気が付かなかった。


可笑しくてたまらない。


僕は『空』の存在を信じていなかった。

チヒロという『空の子』がいる、今も完全に信じているかどうか怪しい。


そう思っていたのに。


――「王家は常に『空』と共に」――


長年にわたる王家の教育の賜物だろう。

なんのことはない。心の奥底では信じていたのだ。


『空』は確かに存在するのだと。

『空』は神で、常に王家の一員である僕を見ているのだと。


『空』には小さな頃から悪態をついてきた。


バカバカしい。

何が『空』だ

何もできないくせに

助けてなどくれないくせに!


何度も、何度も。それははっきりと、口に出して《言って》きた。


そんな僕を、『空』はずっと《見続けてきた》のだ。

『空』は、僕という人間の全てを知っている。


だから儀式の時、疑いもしなかったのだ。


『空』はなんでもお見通し。

こんな儀式の時だけ大人しく、信じているふりをしたところで今更だ。


僕が胸の内で罵倒していることなど『空』には知られている。

《言葉》にしなくとも『空』には全て伝わっている。


そう信じて疑いもしなかった。


本当のところはわからない。


僕が思っていたように、『空』は僕の胸のうちまで全てお見通しかもしれない。

だがシンの言うように儀式の場で《言って》なければ伝わっていないのかもしれない。


とらえ方は人それぞれなのだ。


どうせ《本当のところはわからない》のなら。

それならシンのとらえ方を信じても良いだろうか。

彼女が現れた理由が僕の《悪態》ではないとほんの少し思っても良いだろうか。



……力を貸してくれるだろうか。


彼女を降ろした罪の重さに潰れそうな僕に


彼女の『仁眼』は他人のために己の命を削るものかもしれないと知っただけで、怖くて動けなくなっている僕に


全部告げるから。


僕とは違う目でとらえた先を教えて欲しい―――



僕はシンの質問に答えた。

僕が《声》にしたのはただひとつだと。


――――叶えられるものなら叶えてみろ!


そんな挑発が生んだ言葉だ。

『空』を睨みつけながら吐いた言葉だ。


だがシンはどう受け取るだろうか。

ただひとつ。あの儀式で《声》にした言葉を告げる。



「母上に幸せを」



『空』はどう受け取ったのだろうか―――――




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