43 対立の終わり ※レオン
※※※ レオン ※※※
「あの。あとひとつだけ。
王子妃様――シャナイア様によろしくお伝えください」
部屋を出ようとしたチヒロの言葉に、第2王子が怪訝な顔をした。
「何?……貴女が何故、私の妃を知っている。会ったこともないだろう」
「よくお会いしてました。《東の宮》の。王太子妃様のところで」
事もなげに言われて、第2王子は「……初耳だな」と呟いた。
僕も初耳だった。
エリサはチヒロに忠誠を誓った《チヒロの盾》だと宣言しているので、チヒロの行動の全てを僕に報告する義務はない。
チヒロはチヒロで僕と第2王子の仲に気付いていて、わざと言わなかったのだろう。
そう考えていたが違ったようだ。
「王太子妃様が内緒ねって」
その内緒をけろりと言ったチヒロを、エリサが一応といった様子で嗜める。
「言っちゃいましたよ。どうするんですか」
「大丈夫よ。王太子妃様、私の性格をよくご存知だもの。許してくださるわ」
「つまり内緒は無理って思われてるってわけですね。納得です」
小さく頬を膨らませたチヒロだったが「これ以上お邪魔してはダメです」とエリサに言われ、ジルを連れて執務室を後にした。
―――王太子妃様か……
僕ら王子達が個別に右往左往している間に、女性たちはしっかり王太子妃様によって結束していたようだ。
王太子妃様は、もしかしたら他にも味方を作っているのかもしれない。
いや。作っているだろう。
ご成婚されてから既に6年。あの方が何もしていなかったとは思えない。
幼い頃、まだご成婚前から王太子殿下と共によく僕を訪ねてこられた。
ああ、取り込みに来たのか、と思った。
まがりなりにも僕は第3王子だ。自分の側に取り込んでおいて損はない。
そう思われているんだろう。
いいさ、こちらとしても好都合だ。損はない。
取り込まれてやろうじゃないか。
そう思って冷めた目で見ていた。
けれど。
今、王太子妃様の話を笑ってしたチヒロを通すと違って思えてくる。
過去が変わる。
嬉しくなる。
次期王妃はあの方だ。
素晴らしい王妃になられるだろう。
前王妃は比べられ、また貶められるのかもしれない。
けれど、きっと前王妃はそれを嬉しいと笑うだろう。
仲が良かったという従妹姫の躍進を喜ぶはずだ。
何故かそう思った。




