29 近衛隊長 ※エリサ
※※※ エリサ ※※※
「――というわけで、私には前世の記憶があるのです」
チヒロ様は全部、話した。
《南の宮》からは見えにくいようにと、《南の宮》に背を向け座った木の下で。
チヒロ様の目の前には
「見つからないように、ここに座って話そう」
と入れ知恵した熊のような男がちんまり座っている。
木で隠れきれてるのか、その身体。
熊のような隊長は顎に手を当てたまま聞き入っていたが、
最後に「なるほど、それが『空の子』の仕組みか」と言った。
「それにしても前世か。生まれ変わりはあるんだな」
「それ、私も自分がこうなって初めて知りました。びっくりですよね。
多分、生き物って昔からずっと生死を繰り返しているんでしょうね」
チヒロ様の声は弾んでいる。
……さっきまで警戒していた隊長に、すっかり心を許してる。
きっと甘党の隊長からクッキーを貰ったからだろう。
ひとり私は膝を抱えていた。うう、泣きそう。
「もうレオン様や副隊長に顔向けできません………」
「何言ってるの、エリサ。
私は別に隊長さんに知られても構わないよ。だから全部話したの」
「……チヒロ様。レオン様に前世の話は秘するよう言われたのをお忘れですか」
「隊長さんに国王様以外には言わないでねってお願いすれば平気よ」
「………なんで国王様以外なんですか」
「国王様には知られても平気だから」
……もうだめだ。本当に涙が出てきた。
「私のせいです。私のせいで。レオン様にも副隊長にも了解を取らず……」
「別にいいじゃない。
国王様はレオンのお父様だし、隊長さんはシンの上司でしょう?
どうして落ち込むの?」
「そうだぞ、エリサ。いいじゃないか」
この熊野郎。にたにた笑うな!わかってるくせに!
チヒロ様は訳がわからないこの状況を、教えて欲しかったんだろう。
私は駄目だと判断して、隊長に顔を向けた。
そうだ、アンタも困ればいいのだ!熊隊長!
隊長は頭をかきながら言う。
「その……第3王子殿下と国王陛下はちょっとばかし仲がおよろしくないので」
「え?父子なのに?どうして?」
「ええと。王妃様の話はご存知で?」
―――うおう!!この熊、とんでもないことを!!
「王妃様?」
誤魔化そうとする前にしっかりチヒロ様が食いついてしまわれた。
気付いたのだろう。隊長の顔色が変わった。
ざまあみろ!とも思ったが、同時に自分も終わったと気付く。
ああ、、もう絶対レオン様にも副隊長にも許してもらえない、、
目の前が真っ暗になった。




