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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
998年目
54/196

25 模様 ※レオン

義兄→異母兄 訂正しました




 ※※※ レオン ※※※



「第3王子殿下レオン様」


話を終え、《南の宮》へ戻ろうとしていたところだった。

チヒロとエリサはすでに扉を出て、少し離れたところにいる。


僕を呼び止めた王宮医師は小声で言った。


「……今日こちらへ皆様がいらっしゃったことは王宮全体に、すぐに知れ渡るでしょう。

集めている植物のこともあります。

ここを管理されている《西》の方に『空の子』様が薬に興味を持たれていると気付かれるのもじきでしょう。

私としましても、問われればお答えしないわけにはいきません」


「ああ、そうだろうね」


「もちろん正しい情報をお伝えせねばなりません。

不確かな報告をするわけにはいきませんので、夢物語のような『眼』の話は私の心にしまっておきます。

ですが。御用心なさってください」


僕は苦笑した。


「ロウエン。―――王宮最高医師がそんなこと言っていいの?」


ロウエンはうやうやしく頭を下げると言った。


「私は『空』と共に」



「レオン。戻らないの?」


振り向くと、先に扉を出たチヒロが不思議そうな顔をしている。


「今行くよ」と返事をして、僕は医局を後にした。シンも続く。


王族の暮らす《宮殿》に帰るために選んだのは広い通りではなく、抜け道となっている狭い廊下だ。


片方は格子の入った縦細の窓が並び、もう片方は壁だ。

真ん中にいくほど高くなっているアーチ型の天井と、壁の一部にレリーフが入っている程度の《中央》の中では簡素な作りの場所。


しかしチヒロは興味津々らしく、目を輝かせてあたりを見回している。


そんなにぐるぐる見ていると目をまわしますよ、とエリサに注意された。

が、案の定、目をまわしたらしく足をもつれさせエリサに助けられた。


エリサに呆れられ、えへへ、と恥ずかしそうに笑う。


その様子は単なる子どもだ。



―――しかしその目には『仁眼』。



あの儀式を思い出す。



バカバカしい。


何が『空』だ


何もできないくせに


助けてなどくれないくせに!


――叶えられるものなら叶えてみろ!



そう僕は『空』に喧嘩を売った。


その僕に『空』は『空の子』を降ろした。


たがが人間の分際で『空』に喧嘩を売ったことを悔やみ心を改めろというのか。

苦しみ散々、足掻いてから消えろ、ということなのか。


どういう意図があったのかは知らないが感謝する。

僕に『チヒロ』をおろしてくれたおかげで僕は奴を挑発できる。


今日、僕たちが医局を訪ねたことも

『空の子』が薬に興味を持っていることも


奴は《護衛騎士》から聞いて近々知るだろう。


《仕組み》は出来上がった。

後はその時が来たらまわすだけ。


さあ。どんな模様が見えるかな。


《西》の異母兄上(あにうえ)どの。


もうすぐだ


もうすぐお前の望み通り消えてあげるよ


お前とそして

僕を《南》に捨てた男を道連れにしてね


幼いあの日から思い描いていた未来をもうすぐ実現できる―――



拳をつくる。


そのまま息を整える。


僕は笑顔を作ると歩き出した。




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