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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
998年目
47/196

18 波乱 ※空 3/16補足追加

※※※補足です※※※


後の方の話で出てきますがテオには意識がありました。

意識のない人に何か飲ませるのは危険行為です。

マネしないでくださいねー。これはお話ですよー。





 ※※※ 空 ※※※



「それは『空の子』様。貴女の分の特効薬です」


チヒロの顔色が変わった。


「私の分?」


「はい。死病の患者と同じ部屋へ入られましたね。

この国のきまりにのっとり貴女様に特効薬をお渡しさせていただきます。


稀ですが、この病はうつる事があるのです。

どうかシン様とそちらの椅子にかけ、ご自分のお身体の様子をみていてください。


そしてもし万一、お身体のどこかに傷ができたり、熱を感じたらすぐに私たち医師を呼んでください。

だがすぐに意識を失う可能性も高い。

ご自分で、安全に特効薬を飲めるかどうかは時間との勝負です。そのため先にお渡ししておきます」


「――っちょっと待ってよ!私は罹ってない!だから私の特効薬をテオに――」


「――できません」


チヒロの身体がビクッと震えた。

見習い医師は厳しく告げる。


「第3王子殿下からすでにお聞きになっているはずです。

死病の特効薬は貴族以上、または国の要職者のみ飲む権利があるものです。


それも生涯1人1本。


いくら大金を積もうと買うのは無理。王宮の医局で厳重に管理されています。

万にひとつ。平民が盗んで飲み、死病を治したところで捕縛され……極刑です」


チヒロは口を開けたが声は出なかった。


見習い医師は続ける。


「見届け役の資格を持った医師の目の前で飲むことが義務付けられています。

誤魔化しは効きません」


「国の決まりです。ご理解を」と、見習い医師は頭を下げた。


「非情だとお思いでしょう。しかしどうしようもない現実なのです。

『空の子』様、貴女は何故ここに来られたのです。この非情をみるだけなのに。

それを知る第3王子殿下は貴女を止めたのでしょう?なのに何故――」


「――トマス」


どうしても言わずにいられなかったのだろう見習い医師だったが、師の王宮医師に名を呼ばれぐっと黙った。


テオを診ていた王宮医師だったが、チヒロに顔を向けると静かに言った。


「……お渡しできるのは『空の子』様。貴女の分の、一本のみです。

それ以外持っておりませんし、持っていたとしてお渡しすることはできません」


「どうかわかって下さい」と王宮医師は締めくくる。


チヒロにも、もうわかっているのだ。


死病の患者がいる部屋に入ったというだけですぐに特効薬が渡された自分。

すでに死病に罹り虫の息だというのに特効薬を飲むことが許されないテオ。


自分とテオの間には身分という、歴然とした差があることを。


だが………どうしようもないことだ。


目の前の二人とて医師なのだ。命の選択は辛い。


長い沈黙の後。


チヒロは俯いて、わかった、と言った。


「良くわかった。……ありがとう」


「トマス」と、王宮医師は見習い医師を再び呼び、二人でテオの診察をはじめた。


ドアの外に集まった者、全員が項垂れている。侍女が目頭を押さえた。

動く者はいない。音もない。


チヒロだけがゆっくりと歩きだした。

見習い医師の後ろを通り、王宮医師の後ろを通り。

横たわるテオの枕元に行き、座るとテオの額を撫でた。


「ごめんね」


それを聞いた医師二人は思わずだろうか。うつむいた。



いつの間に蓋を開けていたのだろう。

チヒロは一気に薬を飲む。瓶を捨てる。


そしてテオを抱き起こした。


「―――っ『空の子』さまっ!」


察した見習い医師の悲鳴が響く。



口づけられた瞬間、テオの手がわずかに動いた。

しかしそれ以外、全く反応はなくチヒロも離さない。


そうこうするうちに口移しで与えられた薬液が通ったのだろう。

テオの喉がゴクリと動いた。


ゴホッと咳き込んだテオを見て、チヒロは労るようにその背中をさすり、落ち着いたのを見てゆっくりと寝かせた。


見習い医師はぶるぶると震えている。


「あ、貴女はっ!なんて事をっ!!」


「ごめんなさい!」


チヒロは立ち上げると見習い医師に向け、頭をぺこりと下げる。


「怒らないで。ごめんなさい。見てたでしょう?ちゃんと飲んだわ」


そして勢いよく顔をあげると言い切った。


「ただ、あまりの不味さに吐いちゃっただけよ」


その場にいた全員、あいた口が塞がらない。


一足先に我に返った見習い医師は叫んだ。


「――そんな屁理屈が通るとお思いかっ!!!」



チヒロは大きく息を吐いた。

そのまま今度は頭を深く下げる。


「ごめんなさい。わかっています。自分の罪は認めます。罰も受ける。

――私はどうすればいい?牢屋に行けばいいのかな」


ザッと音がした。


見習い医師が振り向き、それまで見えていなかった人間を認めて怯んだ。


ドアの外にいた屋敷の人間が部屋の中へ入り、全員でドアを塞ぐ様に立っていた。




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