04 はじまり ※チヒロ
※※※ チヒロ ※※※
もう一度、絵本を開く。
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この国には『空の子』様がやってきます。
100年に一度、王宮の森に現れる不思議な祭壇で、
時の王女様が祈りを捧げます。
その祈りが『空』に届いた時、祭壇に『空の子』様が現れるのです。
『空の子』様はひとめでわかります。
この世界の人間にはない、
黒い髪と瞳を持った男の子だからです。
そして、高い知識を持っています。
農耕・酪農・治水
鍛治・窯造・酒造
医療・学問・印刷
建築・商法・造船など
何人もの『空の子』様がその知識で、この国を豊かにしてくれました。
――『空の子』様はこの国にとって、とても大切な、特別な方なのです――
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私たちが『空の子』として、何故この国にくるのか、理由はわからない。
でもひとつわかった。
私以前の『空の子』は全員が男の子。
絵本にある『空の子』の高い知識は
農耕・酪農・治水
鍛治・窯造・酒造
医療・学問・印刷
建築・商法・造船など
―――昔は全部、男性の仕事だ。
前世でしていた仕事の記憶があるなら、この世界ではさぞ歓迎される高い知識になっただろう。
すごいな『空の子』の先輩たち。
なんだか戦友みたいに思えてきた。
あながち間違いじゃないよね。
でも、だとしても、だよ?
「……なんで今回は私?」
絵本を信じるなら、私は初めての女性の『空の子』ということになる。
それに。
そりゃ《私》も働いてはいた。多分。じゃなきゃ生活できてないし。
でも何してたっけ?
色々やってた記憶はある。でも、何かを専門にやってた記憶はない。
専門知識なんて何ひとつ、ない。
歴代の『空の子』の先輩たちと私、なんで違うんだろう?
もう一度、絵本をめくる。
えーっと。
【王女が祈る。祈りが『空』に届くと『空の子』がやってくる】
「……それが全員、男の子でしかも全員、高い知識持ち」
では今回は?
―――待って。
今回、祈ったのは王女じゃなくて王子だ。
「 ま さ か 」
頭の中に矢印が浮かんだ!
王女が祈る → 高い知識を持った、男の『空の子』がやってくる
王子が祈る → ろくな知識なしの、女の『空の子』がやってきちゃう
―――ってこと?なにそれ!
私は床に突っ伏した。
なんなの、今世………。
いったい過去の私がなにをした………。




