10 ある男 ※エリサ
※※※ エリサ ※※※
飄々とした男だった。
少し垂れた目をさらに下げて揶揄うような口調で話す男。
本気で手合わせされないことが悔しくて。
見返してやりたくて、強くなりたくて、厳しい訓練にも必死に食らいついた。
勝てたのは一度だけ。
2年前。
あの男が大怪我を負い、長い静養のあと復帰してきたその日だけだった。
その日のうちに隊を去り、しばらくして副隊長の屋敷に転がりこんでいると
アイシャから聞いて知った。
腹が立ってしかたなかった。
私には一言もなし。
裏誕生日を聞き《その日に会いたい》なんて言っておいて。
結局、何事もなかったように振る舞い何も言わずに消えた。
悔しかった。
なんだったのだ私は。
からかうだけからかって。
復帰してきたその日、私に負けたのもわざとか?
いつも挑んでくるうるさい後輩に、もう終わりだと言いたかったのか。
悔しかった。
悔しくて悔しくて。
もう気にするものか。
二度と思い出してもやるものか。
そう思ってきたのに。
またひょろりと現れた。
それも下手な変装をして。
諜報になったのは一目瞭然だった。
騎士はあっさり辞めて諜報。
あの男らしい。
腹が立つ。
腹が立つ!腹が立つ!
なんなのだ私は。
顔を見ただけで
何故こんなにも嬉しいのだ。




