06 第2王子 ※チヒロ
※※※ チヒロ ※※※
「『空の子』殿」
聞き覚えのない声に、見れば少し離れたところに赤茶色の髪の男性がいた。
後ろには護衛が二人いる。
私の頭が、男性が誰なのかを導き出す前にエリサが言った。
「第2王子殿下」
エリサが頭を下げたので、私も慌てて続く。
今日、私がこうして散歩に出ているのは私が暮らしている《南の宮》と第2王子殿下の暮らす《西の宮》との中間にある庭だ。
お会いするのは不思議ではない。
でも、そういえば今まで全くお会いしたことがなかった。
それもそうだよね。レオンと同じ。王子殿下には執務がある。
王家の方々が暮らしている《宮殿》とはいえ散歩しているのなんて私くらいだ。
だから第2王子殿下と顔を合わせたのはこの国に来た時の謁見以来。
お顔を忘れてても仕方ないよね。
失礼にならない程度にお顔を見る。
―――あれ?
意外にも国王様とは似ていない気がした。
国王様の面影がある王太子殿下にはよく似ておられるのに、不思議な感じだ。
謁見の時にレオン以外――国王様と王太子殿下、第2王子殿下の三人には何というか一体感がある、と思えたのは王太子殿下の存在があったかららしい。
王太子殿下は国王様と第2王子殿下のどちらにも似ていらっしゃるのだ。
そのお兄様である王太子殿下に似ている第2王子殿下だけど、王太子殿下とは印象が随分違う。
髪色のせいかもしれない。
王太子殿下は薄い茶色で優しい印象なのに対し、第2王子殿下は赤茶色でなんとなくきつい印象を受けた。
その第2王子殿下が近づいて来られたので、思わずちょっと身構えてしまった。
そんな私に第2王子殿下は笑顔で言う。
「もっと早くご挨拶をと思っていたのですが。なかなか……」
「――いいえ。私こそ」
「どうですか、宮殿は。退屈なのではありませんか?」
「いえ、そんなことは」
………うーん。話が弾まない。
こういうの苦手なんだよね。
早く帰りたいなあ……。
そう思い始めた頃、第2王子殿下が言われた。
「『空の子』殿。私の《西の宮》に遊びに来られませんか?」
―――はい?
え、聞き間違い……じゃないよね?
いま私、《西の宮》に誘われた?
いやいやいやいや。
笑顔が固まった。
ひとまず…………ごまかそう。
「ありがとうございます。ですがレ……第3王子殿下を通していただけますか?
殿下には私の世話役をしていただいておりますので――」
「――そうおっしゃらずに」
おおーっと、被せるように返事がきた。
ええ〜?
―――何、この人。
私は困ってしまった。これ以上なんて言って断ればいいんだろう。
行くとは言えない。レオンには勝手に他の宮に行くことを許可されていないし。
そもそも、男性に誘われていいものだっけ?
確か駄目だよね?王太子妃様にそう教わったよね?
―――どうしよう……
助けを求めて横目でエリサを見た。のだが……
何と!!
エリサは第2王子殿下の護衛を睨みつけていた!
何故!?
エリサーーーっ!!
ええーーーーっ?!待って、待って、待って!
どうするこの状況!
第2王子殿下への返答と、豹変したエリサ。
どうすることも出来ず戸惑っていたら、後ろから足音がした。
第2王子殿下も気付いたらしく私の後ろへと顔を向ける。
振り返った私は、足音の主の顔を見て心底ホッとした。
「レオン」




