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この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜  作者: ちくわぶ(まるどらむぎ)
997年目
13/196

13 告白 ※チヒロ



 ※※※ チヒロ ※※※



「それでチヒロ。前にいた国、とは?」



殿下とシンとエリサと私だけになった部屋で。

椅子に座り直すと、私は全部説明した。


こことは《違う世界》の中の、ひとつの《小さな国》に住んでいたこと。


そこで生涯を終え、その記憶を持って生まれ変わり

今、ここに存在していること。


生まれ変わってから今日までの記憶はないこと。


多分、今までの歴代の『空の子』たちも同じだと思うことも。


殿下――レオン(と、呼ぶようにと言われました)は時々私に質問しながら。

シンとエリサは黙ったまま聞いていた。


私が話し終わるとレオンが『空の子』の仕組みがわかったな、と頷いた。


レオンはもともと私がこの世界よりはるかに発展したところにいたと察していたそうだ。

私の奇想天外な話をすぐに信じてくれた。


嬉しくなった。


味方ができた気分だ。

いや、初めからそうだった、といえばそうだったんだけど。



その後で今度はシンの話を聞いた。


彼の名前は……


姓――家名は、騎士は名乗ることを禁じられているからと聞けなかったのだけど、名前は《シン・ソーマ》。


《シン》がファーストネーム・《ソーマ》がミドルネームで、《王家の盾》と呼ばれる彼の家の当主が代々、名乗る名前なんだそうだ。


でも『空の子』が先祖にいたという事実はないという。


貴族で、しっかりとした家系図があって。彼自身が遠縁から主家に入った養子なので、それを熟知しているからわかるそうだ。


この国では『空の子』にあやかって子どもに『空の子』と同じ名前をつける人も多く、そしてその名を代々受け継いでいく家も結構あるらしい。


シンの家もそうなのだろうと言う。


それでも私は小躍りしそうなくらい嬉しかった。


シン・ソーマ


『ソウマ・シン』だ。


間違いなく、《私》がいた小さな国の人の名前だ。


この国の王宮の建物や家具、燭台やティーカップなどの小物。庭園。

人々の服装。装飾品。


『空の子』が例えば全員、前世は《私》と同じ世界で生きた人だったとしても、それは別の国で生きた人ばかりだと思っていた。


けれど、いたんだ。


時が遥かに違っても。

『ソウマ・シン』という名の、《私》と同じ世界、同じ国に生きていた『空の子』が。


涙が溢れてきた。


エリサがハンカチを貸してくれた。


最後にレオンが少ししてから聞いてきた。


「――で、チヒロ。君は、本当はいくつなの?」


答えられなかった。


「自分の歳がいくつ……って意識がない、かな。私にあるのは前世の記憶だし」


「そうか」


エリサの顔が曇ったので、慌てて続ける。


「でもね、こうして生まれ変われて嬉しいの。なんといっても身体が軽いし。

前世では、最期の方は動けなくて。寝たきりで目も開けられなかったから」


えへへ、と笑って言ったんだけどエリサの顔が泣きそうに歪んだ。

いや、待って!

笑ってもらおうと思ったんだけど。


慌てて付け加える。


「――あのね、私は前世の記憶があって嬉しいの。

万華鏡ってあるでしょう?前世の記憶を思い出すのって、あんな感じなの。

くるりと回すと前世の《私》がいる光景がひとつ見える。


そこにいる《私》は大抵、笑ってるの。寝たきりだった人生の最期の時までね。

私にあるのはそんな、とても幸せな記憶なんだよ」


3人の反応がなくて戸惑っていたらレオンが言った。


「チヒロ。マンゲキョウって何?」


―――そこか。


この世界に万華鏡はなかったらしい。

今度作ってみようと決めた。


この国の役に立つものではない、とは思う。


でも見て欲しい。知って欲しい。

《私》の記憶にあるものを。


ああ。


『空の子』の先輩たちも、きっとそう思ったんじゃないかな。


絵本になるような英雄になろうとして知識を使ったんじゃない。


《自分》の記憶にあるものを知って欲しかったんだ。


遠い世界で生きた《自分》のことを、覚えていたかったのかもしれない。




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