27 帰り道 ※エリサ
※※※ エリサ ※※※
《中央》の医局を後にして、《宮殿》の《南の宮》への帰り道。
副隊長は広い廊下を使わず、抜け道となる細い廊下を使って《中央》を出た。
行きに私が使った道だ。
行きは突然現れたのだし、私たちが急いでいるのも一目瞭然だったからだろう。
すれ違った人数は少なかったし、誰も声はかけてこなかった。
しかし帰りは違った。
私たちが医局から出てくることがわかっていたので待ち伏せしていたらしい。
結構人がいた。
普段ひと気のない廊下なのに、手のあいた者たちだろうか。
廊下の両脇に二十人はいたと思う。
なんせ滅多に《中央》に姿を見せない『空の子』様に《神獣》のジル殿。
お姿を見たかっただけの者もいたようだが、お近づきになりたそうな輩も多かった。
しかし。
誰も近寄ってはこなかった。いや、近づけなかったのだろう。
………副隊長が迎えに出向いて来られた理由がわかった……。
あんな凍りつくような顔で、射殺すような視線送られたら騎士でも怯むわ。
チヒロ様はといえば、そんな副隊長の視線も、廊下にいた者たちも全く気にする様子もなく副隊長の後ろをジル殿と歩かれていた。
《中央》を抜け、王族の住む《宮殿》に入る。
暖かな日差しと柔らかい風が、もうここは人目を気にすることのない場所だと告げたようだ。
チヒロ様は伸びをして深呼吸すると、後ろの私を振り返りふふ、と笑った。
私も笑顔を返す。
そして、もうすぐ南の宮に着く辺りまで来た時。
チヒロ様は前を歩いていた副隊長に近づくと、思い出したようにお礼を言った。
「シン、迎えに来てくれてありがとう。それと素敵なお義兄さんね」
副隊長は横にきたチヒロ様に少し驚いたような顔を向け、そしてまた正面を向き告げた。
「――ええ。自慢の義兄です」
その表情は私からは見えなかった。
それでもあの、中央で見せていた凍りつくようなものではないことはわかった。
風が流れ、チヒロ様の長い黒髪が副隊長の背中を撫でるように揺れた。




