第28話 人々の笑顔が交差する。暗躍も交差する・中編
日も跨ぎ、応援で駆け付けてくれた王都の兵士たちや、冒険者たちは、先に出発して帰って行った。
中島義行……元い、アイランド・ライチャスネス一行も、町を去るため、馬と共に町の入り口で出発の準備を整えていた。
見送りとして、町長さんと防衛隊長さん、防衛隊兵士数名、情報提供者の狩人さんなどが来ていた。
町長から順番に別れの挨拶が始まる。
「冒険者、リン一行。此度は本当にありがとうございました。王都に戻ってからもその活躍を応援しております」
リンが町長と握手する。お、こういう時はキチッとしている……。
町長がこちらを向き、挨拶を求めてきた。
「ライチャスネスさん。あなたの身をもってして町を守ろうとした姿勢。私は忘れません。お気をつけて」
「ああ……。いえ、町も無事で良かったです」
私は町長さんと握手をし――。
その時である。
電気が走ったかのような達成感が自分を襲う。
新しいカルマを得る瞬間だ。
行為の結果が、自分に帰ってくる。
神様に与えられた能力が、自分の中で増幅される感覚。
自分の力として蓄積されていく感覚。
町長さんの“町を壊されずに済んだ”という思いが、カルマを通して繋がる。『壊されたくない』という私の思いが、力となって昇華していく――。
新たな感覚を確かめるように身に沁みこませる。
……。ハッ。いかんいかん。平常心平常心。
町長さんは、スタークやシティリアにも挨拶をしていた。
「スタークさん。あなたのビッグ・ゴブリンから一歩も引かない姿勢は町の者に勇気を与えました。シティリアさん。大魔法使いとしての功績はこの町に残る事でしょう」
笑顔で答えるスターク、シティリア。
防衛隊長さんや、狩人さんとも無事に別れの挨拶を済ませ、リンが出発の号令を出す。
「それでは、皆さん。また機会がありましたらお会いしましょう。さっ、みんな! 王都まで戻るわよ!」
私たちは馬に乗り、町を後にした――。
なお、私は帰りもリンの馬に同乗させてもらっている。
帰ったら誰かに騎乗訓練のお願いでもしようかな……。
その後、道中は何事も無く、王都までの道のりを進んで行った。平和なものである。それにしても、ゴブリンの大量発生は何だったんだろう。そういえば、軍神様が『今回の件で話すことがある』と言っていた。お城に戻れば……、何か分かるかもしれない。
~王都・郊外【夕暮れ】~
「ふう。何もなければ早いものね……ゆっくり帰っては来たけど」
リンが小言を漏らす。
「ま、そうは言っても隣町だったしな。本来はこんなもんだろ」
それに対しスタークが言葉を続けた。
っと、シティリアが思い出したように話しかけくる。
「そういえば、ライチャスネス。本来の目的。忘れてはいないわよね?」
「ああ。勿論だとも。シティリア……先生……って呼ばなきゃいけなんだな。これからは」
何ともかんとも。私にはお師匠様がいたり、先生が増えたり、教えを乞う人物が多いものだ。言い換えれば、それだけ私にとってまだ学ぶことがあるとも言う。
「フフッ。とりあえずギルドに戻って、落ち着いてからとなるかしら。ま、それに、ライチャスネスは馬に乗る特訓もしておいた方が良いわね」
「ウッ……。わ、分かってるさ」
「ガハハッ! 一端の冒険者になれたってのによ! 馬に乗れねえんじゃ、しょうがねぇしな!」
スタークの笑いが胸に刺さる。ああ、そうだな……。覚える事はいっぱいだ。
ん? なんだ? リンが何か言いたそうだ。
「なら、私が乗馬訓練を教えてあげるわ」
「リンが……?」
リンは鼻高々に話し始める。
「あら? これでもお城の兵士でもありますからね。訓練として兵士に乗馬教育をした事もあるのよ」
そうなのか。ん……。待てよ、ということは……。
「リン……先生?」
リンがニヤニヤしている。
「察しが良いわね。私の指導は厳しいわよ~?」
「お、おう……。お手柔らかにお願いします」
そんな事を話しながら、私たちは冒険者ギルドまで戻ってきた。中に入ると、隣町まで応援に駆けつけてくれた冒険者の顔もチラホラ。軽く挨拶を交わす。こっちの世界に来てから……いや、冒険者になってからまだ日は浅いが、一端の冒険者として認められた気分になる。
私たちは受付で報告を済まし、2階の応接室まで来るように指示される。きっとギルドマスターから話があるのだろう。
2階に上がり、部屋に入ると、既にギルドマスターのソレイドが待っていた。
「お、戻ってきたな。そろそろだと思っていたぞ」
リンが代表して挨拶をする。
「リン冒険者一行。只今戻りました」
ソレイドは笑顔で出迎えてくれた。
「まぁ座りなさい」
私たちは応接室のソファーに座り、ソレイドの話に耳を傾ける。
「みんな。よくやってくれた。ゴブリンの数がそこまで多かったとは……。いや、しかし、それも終わった話。君たちに任せて正解だったよ。おっと、そろそろ茶が来るはずだ」
コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえ、ギルドの職員がお茶を持って入ってきた。
私たちの前にお茶を差し出した職員は部屋を後にし、ソレイドは話を続ける。
「さて、出発前にも話した通り、報酬はそれ相応の金額となる事が決定した。それについて、ひとつ話しておく事がある。今回の場合、町の危機ということもあり、国からも報奨金が出る。ギルドとは別に、だ」
スタークが感嘆の声を上げる。
「おお~。それは、太っ腹だな……。って、他のメンツはたいして驚いてねぇな?」
リンが真顔で答える。
「まぁ。そうなんだろうとは予想してた」
シティリアも真顔で答える。
「普通に考えればそうなんじゃないかしら?」
俺は真顔で無言である。
……。
でも、凄いことなんだろうな。スタークの驚きを見ると。
「とりあえず、今日の所は各自、休んでいてくれ。明日の昼頃には支払いの手続きを用意しておく。ギルドの受付に来れば分かるようにしておこう」
スタークが疑問の声を上げる。
「そんなに早い手続きで大丈夫なのか?」
ソレイドが自慢気に腕を組む。
「そこはギルドマスターとしての腕の見せ所よ。お前らは現場で頑張る代わりに、私たちが陰で支えてやらねばな」
リンが思い出したようにソレイドに話しかける。
「あ、そうそう。ギルドマスター。借りた馬はギルドの馬小屋へ返しておいたわよ。ありがとうね」
「ああ、分かった。それと最後に、ライチャスネス。先行で帰ってきた冒険者からも聞いたよ。大活躍だったそうだな。お前を選んだ俺の目に狂いはなかったって事だ。これからも何かあったらよろしく頼む」
「いえ、自分の力を出し切ったまでです。これからもよろしくお願い致します」
「フッ……。随分謙虚だな。まぁ、いい。そういう所も見込んでお前を選んだわけだしな。さて、話は以上だ。本当にご苦労であった」
ギルドマスターの話も終わり、私たちはギルドの1階に場所を移し、解散する流れとなった。
まず最初にシティリアが言葉を交わす。
「それじゃ、私は最寄りの家に帰るわ~。あ、ライチャスネスは明日の昼頃にまたギルドへ来てね。それではお先に」
「またね。シッチー」
リンの挨拶に対し、笑顔で手を振り、シティリアは去って行った。
シティリアは家が二つあるんだったな。こういう時、便利だな……。
ギルドの近くに仮宿を持つ冒険者もいるって言ってたっけ。
「んじゃ、俺は飲み屋で一杯やってくかー。ライチャスネスもどうだ?」
スタークから飲みに誘われた。ありがたいが、今は城へ戻る事を優先したいな。
「いや、ありがたいお誘いだが、俺はリンと一緒に城へ戻る事にするよ」
「そうか、無理にとは言わねぇ。またな」
スタークとも別れ、私とリンはお城まで戻って行った。
~お城・内部【夜】~
リンと一緒に城まで戻ると、チャップさんが出迎えてくれた。
「おかえりなさいませ。ライチャスネス様。それと、リンも」
「ハッ。只今戻りました」
ん? ああ、そうか。お城の兵士でもあるから……。
そういえば最初に会った時もこんな感じだったな確か……。
そうだ。チャップさんに六尺棒や防具の事を話しておかないと。
「チャップさん。すみません。頂いた六尺棒を壊してしまいまして、防具もボロボロに……。今、使っているのは――という事でして」
チャップさんは急に笑いだした。
「ホッホッホ。それはそれは大活躍でございましたな。いえ、良いのですよ。役に立ったようで何よりですな。まぁ、今日の所はお疲れでしょう。明日、午前にでも、フロウ様よりお話があると思いますので、またお呼び致します」
「分かりました。今日の所はこれで失礼いたします。リンも色々助けてくれてありがとうな」
「こちらこそ。ライチャスネスと一緒で良かったと思うわ。チャップ様。私も失礼いたします」
私は浴場で体の汗を流した後、自室に戻り、そのままベッドに入る。
明日は、またやる事が色々……。
そういやマリは、何してるかな……。
スタークも、シティリアも凄かった……。
村瀬さん、軍神だったとはなぁ……。
眠くなってきた……。
お読みいただきありがとうございましたm(_ _"m)




