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第1話 神様との出会い

初めまして。行進12番と申します。

よろしくお願い致します。

「――。――よ。聞こえるか」


 誰かの声が聞こえて私は目が覚め、体の上半身を起こし、あたりを見回すと目の前に人が立っていた。


「……。」


 夢なんだろうか、確かさっきまで買い物をしていたはず、まだ目の前の風景に現実味を帯びず

 (おぼろ)げに目の前に人が立っているのが見える。


中島義行(なかじまよしゆき)よ。こちらを見るのじゃ」


 段々と意識がはっきりしてきた。目の前にいた人物が老人だという事が分かる。

 私は立ち上がり、返答をした。


「あなたは誰でしょうか? なぜ私の名前を知っているのですか?」


 老人は答える。


「私はこの世界において、神と呼ばれる存在。これといって名前は無い。私がお主の名前を知っているのも、お主の事を見ていたからじゃ。お主は買い物に出かけている途中に、車に跳ねられそうになった人を助けようとして、代わりに車に跳ねられたのじゃ」


「え、私が助けた人は? 私は死んでしまったのでしょうか?」


「……。お主が助けようとした人は生きておる。そしてお主は――」


「そうですか…。死んでしまったのですね。小説とかで読んだ事があります。これから私は転生して異世界に行くのですね?」


 自分が死んだという現実から目をそらし、未知の世界への憧れに喜々として希望を見出し


「死んでおらぬ」


「え」


「お主は死んでおらぬのじゃ」


「転生は?」


「せぬ」


 私は現実に引き戻されていくのを感じた。


「…………。では、私はこの後どうなるのでしょうか?」


「うむ、間もなくお主は病院のベッドで目が覚めるじゃろう。良かったの。お主が助けた人は無傷。お主は車との衝突で意識不明にはなったが、幸いにも左腕の骨折だけで済んだ。数日の入院のうちに退院できるほどじゃ」


「そ、そうでしたか。それは良かった? です。そして、神様とはこれでお別れという事ですね…」


「うむ、じゃが、しかし」


「しかし?」


「異世界、行ってみたかったじゃろう?」


「え? それは、そうですが――」


「魔法とか、使ってみたかったじゃろう?」


「使ってみたかったです」


「未知なる世界で冒険したかったじゃろう?」


「はい! したかったです!!!」


 お、この流れは


「うむ! 良い返事じゃ! まぁそれは出来ぬのじゃが」


「えぇ……」


「まぁ、そう気落ちするでない。話には続きがある。お主はこれまでの人生で可もなく不可もなし。だが、人当たりがよく人に愛されやすい性格をしておる。時に人を助け、時に感謝され、時に和に恵まれた良い人生を送ってきておるな。そんなお主に少しご褒美をやろうと思っての」


「ご褒美……ですか?」


「端的に言うと、今、このワシとお主がいる精紳世界は死んだ者だけがこれる場所という事。お主がさっき言うたとおり、本来であれば生前に善行をした者はここで祝福を受け、新たな世界に旅立つ――。が、何の間違いか、死んではおらぬお主がここに来てしもうた」


「はぁ……」


「そこでじゃ、お主はこれより現世に戻るが、条件付きで神の祝福を与えて進ぜよう」


「は、はい。それは、ありがとうございます」


 神様は手をかざした。


 すると空中に小さな光の玉が出現し、私の方へゆっくりと近づいてくる。光の玉は、私の中心部と重なり、一体化していく。少し温かい気持ちになった。


「一日一善。困っている人がいたら、自分のできる範囲で人助けをしなさい。その行為の結果として、ひとつお主に祝福が与えられる。例として、そうじゃな。お主は既に人を助けている。それに対し一つの祝福が与えられ、本来ならば骨折している左腕であるが、祝福を使用すれば即座に完治するであろう」


「祝福を使う……?」


「目が覚めたら心の中で唱えてみるがよい。<<カルマ>>と」


「では、私に与えられた祝福とは、治癒(ちゆ)の祝福という事でしょうか?」


「そうであり、そうではない。お主に与えたカルマという祝福は【行為としての結果】の事を指す。お主が人を助け、助けられた人は怪我をしなかった。そして代わりに怪我を受けたお主。その行為に対し、お主に【怪我から助かる】というカルマが繋がり、それが祝福となったのじゃ」


「なるほど、つまり」


1、例えば『重い荷物を持っている人』がいたとして

2、『荷物を持ってあげる』という人助けをすると

3、行為の結果として『重い荷物を持つことができるという祝福』が与えられる


「という事ですね?」


「左様。飲み込みが早いようじゃな。さて、そろそろお別れの時間じゃ。もう会うことはないであろう。良き人生を送ることを祈っておるぞ」


「あ、はい。神様、ありがとうござ―――」


 段々と意識が遠のいていく中、最後の挨拶ぐらい言わせてくれてもいいのにと思ったのだった。

お読みいただきありがとうございましたm(_ _"m)

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