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異世界で婚約者生活!冷徹王子の婚約者に入れ替わり人生をお願いされました【完結】  作者: きゆり
本編 リディア編

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第三十二話 鈍感で変わり者!?

 陛下いわくイルグスト殿下は普段は直接講師が付いて勉強をしているから、勉強以外のときに連れ出してやってくれ、ということだった。


 普段は王妃教育受けている自分と似たようなものか、と少し納得し陛下からのご要望をお受けすることになった。まあ断れないんだけどね。


「話は以上だ、リディア嬢よろしく頼むよ」

「はい……」

「イルグストにはまだ話があるから三人共戻って良いぞ」


 陛下に言われ、恭しくお辞儀をし退室した。


 外ではマニカとオルガ、それにディベルゼさんとギル兄が待っていた。

 そういえばルーには誰も付いてないんだな、とふと思った。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


 疲れたようすを見越したマニカが心配してくれた。

 ディベルゼさんも同じようにシェスレイト殿下に聞いている。


「うん、マニカありがとう。大丈夫だよ」


「リディア」


 珍しくシェスレイト殿下に声を掛けられ少しビクッとした。


「はい」

「その……、大丈夫か?」


 恐らく先程のイルグスト殿下のことを言ってるのよね?


「はい、多分大丈夫です?」

「アハハ、何で疑問系?」


 ルーが笑った。しかしシェスレイト殿下に睨まれ、ウグッとなっていた。

 無理矢理笑いを止めて変な声出てるし、と、こっちが笑いそうになった。


「いえ、まあ、イルグスト殿下がどのような方か分かりませんが、お勉強の合間に、ということですし、お茶会にでもお誘いしてみますね。仲良く出来たら良いのですが……」

「いや、そうではなく……」

「はい?」

「…………、もう良い」

「え?」


 シェスレイト殿下はそう言うと、勢い良く歩き出し去って行ってしまった。

 ディベルゼさんとギル兄もお辞儀をしその後に続く。若干苦笑していたような気がするが、気のせいだろうか。


「兄上も心配なら心配していると言えば良いのに」


 ルーがボソッと言った。


「え? 何がそんな心配? 大丈夫だよ、ちゃんとイルグスト殿下に嫌われないよう接待するし!」

「お前……」

「?」


 ルーは苦笑しながら小さく溜め息を吐いた。


「な、何!?」

「いやぁ? 別にー」


 ルーは笑って頭を撫でて来た。何かバカにされてるような……。


「何か納得いかない」

「まあまあ、あ、そういえばお前ラニールのところに行くんだろ?」

「あ! そうだった!」


 ルーはやれやれといった顔だった。何か誤魔化されたような……、まあ良いか。


 ラニールさんのところへ行くまでの間に、陛下から言われたことをマニカとオルガに説明した。

 マニカはまた心配そうな顔。


「お嬢様、大丈夫なんですか?」

「え? さっきシェスレイト殿下にも言ったけど、お勉強の合間だけだし、嫌われないようには気を付けるよ?」

「いえ、ですからお嬢様の負担が……」

「ん? 私の負担?」

「王妃教育もあり、お菓子作りの為にあちこち奔走され、魔獣研究所にまで顔出し、その上今回のイルグスト殿下のお相手とは……」

「…………、ほんとだ!! あー! シェスレイト殿下、その事を心配してくださったんだ……」


 ルーがあーあ言っちゃった、みたいな顔だ。ちゃんと教えてよ!

 マニカとオルガは苦笑してるよね。それはそうよね。


「あぁ……、シェスレイト殿下に申し訳ないことを……」


 だからディベルゼさんやギル兄が苦笑してたのね。

 さすがに鈍過ぎて自分が情けなくなった。


「まあリディの鈍さは兄上ももう分かってるんじゃないか?」

「何かそれ、嬉しくないんだけど」


 慰めになってない気がする。

 ムッとしたらルーは笑った。


「いやいや、お前らしくて良いんじゃないか? ってことだ」


 笑いながら頭に手を置く。

 いや、だからそれ慰めてないし。マニカとオルガも笑い出す始末。


「もう! そんな笑わなくても!」


 皆に宥められながらラニールさんのところへ向かった。


「そういえばルーって側近さんや近衛の人はいないんだね」

「ん? あー、俺、堅苦しいの嫌いだから」


 笑いながらルーは言う。


「近衛は元からいらんと断って、側近は振り切って来る」

「えっ」


 振り切って来るって……、苦笑した。側近さん大変だろうな、と同情した。


 そうこう話している間に騎士団控えの間に着いた。

 しかしもう夕方近い。これはラニールさん機嫌悪いかもな……。

 ハーブだけ渡して今日は帰るかな。


 控えの間に入ると時間が中途半端だからか、騎士たちは誰もいなかった。

 厨房を覗き、中を探る。ラニールさんが晩の仕込みに忙しそうだ。

 声を掛けるのを躊躇っていると、ラニールさんの方がこちらに気付いた。


「リディア」


 思っていたよりはラニールさんはにこやかだった。他の料理人たちの生暖かい目は見なかったことにしよう。


「ラニールさん、今大丈夫ですか?」

「あー、少しバタバタしているから手短に頼む」

「そうですよね、えっと、フィリルさんとハーブの選出が終わったので持って来ました」

「あぁ、ようやく決まったんだな。そこに置いておいてくれ」


 ラニールさんは入口近くの棚を指差した。


「分かりました」


 今日は本当に忙しそうだな……、打ち合わせはまた今度にするか……。


「あ、そうだ! 今日ってもうすぐ晩の食事用意になるんですよね?」

「ん? そうだが……」

「私も食べて良いですか!?」

「えっ!?」


 ラニールさんはこちらに振り向き驚いた。


「ダメですか?」

「い、いや、ダメではないが……」


 たじろぐラニールさんの後ろから他の料理人が声を掛けて来た。


「良いじゃないですか! リディア様にも食べていただきましょうよ!」


 その場にいる料理人全員が頷いていた。


「お前ら……」


 ラニールさんは思い切り睨んでいたが、あぁ、初めて会ったときの怖い顔だなー、とか懐かしい想いに駆られるだけで全く怖くない。

 それは他の料理人も同じだったようで、もうラニールさんを怖がる人はいなくなってしまったようだ。これは……、私のせい?


「ぜひぜひリディア様、食べて行ってください!」


 口々に言われ、ラニールさんもどうしようない感じだ。


「あー、まあお前が良いなら食べて行くか?」

「はい」


 ニコリと笑った。やった! ラニールさんの料理が食べられる!


「じゃあ俺も食べて行こうかな!」


 ルーが便乗した。


「ルシエス殿下もですか!?」


 ラニールさんは頭を抱えた。


「よろしいのですか? こんなところで」

「問題ない!」


 ルーの場合、好き放題やってるしなぁ……。

 仕方ないとばかりに溜め息を吐いたラニールさんは、騎士たちがやって来る時間に合わせて準備をしているので、今すぐには出せないと言った。


 ルーと二人で控えの間で待つことにした。

 しばらく控えの間で待っていると騎士たちが続々とやって来た。


「リディア様!」


 皆、こちらに気付くと声を上げて近寄って来た。

 夕食時とあっていつもお邪魔するときよりも人数が多く、屈強な男たちに囲まれ少し圧迫感が……。

 騎士たちに食事を共にすることを告げると、皆大いに喜んでくれた。


 少し後からキース団長も現れ驚いた顔をしていた。


「リディア様がまさかおられるとは、驚きましたよ。ラニールと話されたんですか?」

「えぇ、今日はお菓子作りのハーブを持って来たんです」

「あぁ、なるほど」


 キース団長はニコニコだった。

 そうこう話していると厨房から良い匂いが漂って来た。


 ラニールさんや料理人たちによって料理が運ばれて来た。大きなテーブルに並べられ、好きなように取って行くスタイルのようだ。


「まずはリディア様どうぞ」


 キース団長は勧めてくれたが、


「いえ、皆さんからお願いします。私はお邪魔しているだけなのですから」


 キース団長は、では、と料理を取りに行き、私の前に置いた。


「え、いえ、私は後で……」

「どうぞ」


 ニコリとされ、断るにもなぁ、と遠慮なくいただくことにした。


「ありがとうございます」


 ルーやマニカ、オルガは自分たちで取りに行った。

 騎士たちは各々料理を取るとすでに食べ始めている。


 キース団長も料理を取り終えると、一緒のテーブルでいただくことにした。


 出来立ての料理は湯気が立ち良い匂いが立ち上る。

 厨房からラニールさんが出て来た。


「今日の料理は白身魚を揚げたものと、鹿肉のロースト、野菜スープ、サラダとパン、くらいだな」

「どれも美味しそうです! いただきます!」


 白身魚のフライ? は一口かじるとホロホロと崩れ淡泊な味だ。それを補うためか、甘辛いタレのようなものが掛けられいて、それがフライと良いバランスで美味しい。

 鹿肉のローストもとても柔らかく、獣臭というようなものも上手く取り除かれ、全く癖がなかった。掛けられたソースの味もまろやかでとても美味しい。

 野菜スープも具沢山で、騎士たちに好まれるようにか、少しピリ辛仕上げだ。


「どれもとても美味しいですーー!!」

「ハハ、リディアは本当に美味そうに食べるな」


 ラニールさんは優しい笑顔を向けた。


「本当、リディア様を見ているとこちらも食事がとても美味いですよ」


 キース団長が嬉しそうに言う。そして案の定ラニールさんを見てニヤついているし。

 ルーもマニカ、オルガも満足そうだ。


「うん、ラニールの食事は美味いな!」

「ありがとうございます」


 ルーの言葉にラニールさんは丁寧に返した。


「あー、幸せー」


 食べながらボソッと呟くと、皆に盛大に笑われた。


「リディアは本当に変わってる」


 ラニールさんも笑っている。うん、皆楽しそうで良かった。私は笑われているけど。ラニールさんの料理が美味しいからそれは良いのよ。


 控えの間で盛り上がりながら皆で食事をしていると、一人遅れて入って来る者がいた。

 入口付近のその人に目をやると、それはレニードさんだった。


 何でこんなところにレニードさん?


補足です。

リディアが控えの間で食事をする場合、オルガもしくはマニカとオルガ同様にリディアの側に付く男女一人ずつの側仕えがメイン料理長まで変更を伝えに行きます。

リディアは城に入ったときから様々な人の元を訪れ、差し入れをしたり世間話をしに行き仲良くなっています。

そのためメイン料理長とも仲良くなり急な変更でも対応してもらえています。

詳しくは「その後編 オルガの質問コーナー」でも触れていますので参照ください。

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