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異世界で婚約者生活!冷徹王子の婚約者に入れ替わり人生をお願いされました【完結】  作者: きゆり
本編 リディア編

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第十一話 騎士団と料理長!? その一

 囲んでいた騎士たちは一斉に蜘蛛の子を散らすように私の周りから遠ざかった。

 ギル兄と一緒にやって来たのは、精悍な顔付きのギル兄よりもさらに歳上そうな、灰色の髪に青い瞳の男性だった。


「リディア様ですね、あいつらが申し訳ありません。私はキース・サスフォードと申します。この騎士団の団長を務めております」


 丁寧にお辞儀をされ、慌ててスカートを持ち上げ膝を折った。


「リディアです、ご挨拶が遅れましたことお許しください」

「いえ、とんでもございません。あいつらに囲まれてお困りでしたでしょう」


 そう言うとキース団長は騎士たちを睨んだ。

 騎士たちはビシッと整列し姿勢を正した。しかし顔が引きつっているような……。


「少し驚きましたが、気さくに声を掛けていただき嬉しかったです」


 騎士たちが怒られては気の毒だ、と思い大丈夫だと笑って見せた。


「そうですか? 本当に申し訳ない。訓練を続けろ!」


 キース団長は騎士たちに大声で再び訓練に戻るよう指示を出した。


「さて、控えの間も見学されたいとのことでしたか?」

「はい、良いですか?」

「良いのですが、むさくるしい所ですよ?」


 キース団長は苦笑しながら言った。まあ騎士さんたちみたいな屈強な男たちが大勢過ごすような場所だ、爽やかさはなさそうよね、と少し笑った。


「大丈夫です、見せていただいて良いですか?」

「リディア様は物好きですね」


 そう言いながらキース団長は笑った。笑うと少し幼い顔になるのね、と精悍な顔付からの幼い顔が何だか可愛かった。


「今は第二騎士団が休憩で控えの間にいると思います」


 今訓練を行っているのは第一騎士団らしい。キース団長が歩きながら説明をしてくれた。

 騎士団は第一、第二、第三、第四、第五まであり、それぞれ団長と副団長で指揮をし、その他に王家専属警護の近衛騎士がいるとのことだった。


 第一、第二は王宮警護のための任務に、第三、第四、第五は主に魔獣討伐等の遠征を行うことを主としているらしい。


 控えの間に着くと、第二騎士団らしき男たちが大勢くつろいでいた。


「キース団長! 何事かありましたか!?」


 入口近くにいた騎士がキース団長に気付き、慌てて立ち上がった。


「いや、何もないから気にするな。くつろいでいてくれ。シェスレイト殿下のご婚約者のリディア様がこちらを見学されたいとのことだ」

「リディア様!?」


 背の高いキース団長の後ろにすっぽりと隠れて見えなかったのだろう、私の姿を見るやいなや、全員が椅子から立ち上がり驚きの顔をした。


「お休みのところ、お邪魔してすいません。どうかくつろいでいてください」

「そういうことだ、気楽に……と言っても、気楽に出来んだろうがな」


 キース団長は固まる騎士たちを見て盛大に笑った。


「リディア様、すいませんね、こいつらあなたみたいに美しい女性に免疫がないもんで」


 笑いながらいたずらっぽくキース団長は言った。


「いや、あの……」


 何て答えたら良いのか分からない! 美人と言われ嬉しいけど、リディアの顔はカナデの顔ではないし! 複雑だし、肯定も否定も可笑しい気がして返答に困る。うん、話を逸らそう。


「こちらではお食事とかもされるんですか?」

「食事? そうですね、王宮内の厨房とは別に、ここに専属の料理人がいるので、騎士たち専用の食堂にもなっています」

「専用の食堂ですか!?」

「え? えぇ」


 あ、しまった、また前のめりに聞いてしまった。まずい。


「厨房を見ることは出来ますか?」

「厨房をですか? 大丈夫だとは思いますが、忙しい時間帯に入ると怒られますよ?」


 そう言いながらキース団長は苦笑した。


「一度ちょうど昼飯時に厨房を覗いたら、物凄い怒鳴られましてね。忙しいときに入ってくるな! と。包丁を投げつけられそうでした」


 笑いながら話すキース団長の言葉に周りの騎士たちが頷いている。

 ハハ、そんなに怖い料理長なんだ……。あの話をするのは無理かな……。

 マニカが心配そうな顔をしている。


「と、とりあえずご挨拶してもよろしいですか?」

「えぇ、今は忙しい時間ではないでしょうし、大丈夫でしょう」


 こちらです、と案内してもらい、厨房の中へと入った。

 中では夕食の仕込みをしているのか、何人かの料理人らしき人たちが忙しそうに働いている。

 うーん、やっぱりこの時間でも忙しそうだな……大丈夫かな。


「おーい、ラニール!」


 キース団長は奥にいる背の高い男性に声を掛けた。


「ん? 何だ? キースか、何の用だ」


 ラニールと呼ばれたその人はキース団長と同じくらいの歳の頃かな。茶色の髪と瞳でキース団長と同じくらい背は高いが、屈強さはないため、キース団長と並ぶととても細く見えた。


「何の用だ。今は仕込み中だ」


 怒鳴られる程は忙しくはなかったのか、思っていたよりは穏やかな印象だ。

 しかし目付きが怖い。キース団長と違って鋭い顔付きというか、ラニールさんのほうが魔獣と戦ってそうだ。


「リディア様だ」

「初めまして、リディアと申します」


 キース団長に紹介され、膝を折り挨拶をした。


「リディア様? シェスレイト殿下の婚約者の?」


 怪訝な顔をしながらじろじろと見られた。


「おい、失礼だぞ」

「いえ、大丈夫です」


 キース団長がラニールさんに注意したが、じろじろと見られるのは前にもあった気がするしね。

 大したことではない! それよりも!


「お嬢様が厨房に何の用だ?」


 鋭い目付きで睨まれる。怖い顔だなぁ。


「あの! どんなお料理を作られているのか見せていただきたくて!」


 怖がっていては舐められそうだな、となるべく強気で言った。


「どんな料理? お貴族様が食べる料理とは全然違うもんだよ」


 ふん、と聞こえてきそうな口振りで言われた。


「私も食べさせてもらえませんか?」

「えっ!」


 またしてもその場にいる全員に叫ばれた。

 えぇ、また何か可笑しな事言ってる!? 言ってるか……。


「ダメですか?」

「え、いや、ダメって言うか……おい!」


 あたふたしたラニールさんはキース団長に詰め寄った。

 何だかそのあたふたした顔が意外と可愛げのある顔で、鋭い目付きがあまり怖くなくなった。

 目付きが鋭いだけで、実際はそんなに怖い人じゃないのかも?


「おい! い、良いのか!? こんなお嬢様にここの料理食べさせて」

「え、いやぁ、どうだろうな」


 キース団長は苦笑している。

 うーん、ダメかな。どうしよう。


「お嬢様、料理長に無理をおっしゃってはいけません」


 ナイスタイミングでマニカが口を挟んでくれたね! さすが!


「あ、うん、ごめんなさい……」


 でも本当に食べてみたかったから、必要以上にしょんぼりして見せた。どんな顔するかしら。チラッとラニールさんの顔を見たらオロオロしていた。

 思わず吹き出しそうになってしまい、慌てて口を押さえて俯いた。


 何かこの人可愛いな。

 しかし吹き出しそうなことがマニカにバレて叱られた。


「お嬢様!」

「あ、はい」


「簡単なもので良いなら、今作ってやる」


 仕方ないから帰ろうとすると、ラニールさんがぼそっと呟いた。


「え?」

「だから、簡単なもので良いなら今作ってやる、って!」


 少し恥ずかしそうに顔を横に向けながら言った。

 何かもう怖い人には全く見えないな、とクスッと笑った。


「本当ですか!? ありがとうございます! 嬉しいです!」


 ラニールさんに詰め寄り、手を掴んでお礼を言った。


「おい!」

「お嬢様!」


 ラニールさんが何だか可愛くて、思わず手を握ってしまい慌てて離した。


「すいません!」


 ラニールさんがオロオロしているのを見て、キース団長が盛大に笑った。


「アッハッハ!! お前でもリディア様には敵わないんだな!」


 敵わない、ってどういう意味だろう。と、キョトンとキース団長の顔を見たが、キース団長は笑いが止まらなかった。

 お腹抱えて笑ってるし……。


「お前な!」


 顔を赤らめながら、キース団長を睨むラニールさんだが、もう迫力がないな、と可笑しかった。


「はー、苦しい。失礼しました、リディア様。では、こちらでお待ちになりますか?」


 笑いすぎて涙目になっているキース団長は指で拭いながら厨房外の控えの間を指差した。


「いえ、調理しているところを見ていても良いですか?」

「え、いや、それは……あぁ、もう良いよ! 好きにしてくれ!」


 ラニールさんはたじろいだが、諦めたのか、最終的には見せてくれることになった。

 またキース団長はクスクス笑ってるし。まあ良いか。


「おい! お前ら何見ている!」


 ラニールさんが叫び、周りを見回すと、控えの間にいた騎士たちも厨房にいた料理人たちも全員こちらを見ていた。


 ラニールさんはギロッと周りを睨み付けたが、さっきまでのやり取りを見られて、もう迫力はないかもしれない。

 睨まれた人々はギクリとし、慌てて視線を外したが、やはりチラチラとこちらを見つつ、こそこそと話している。


 後日、主に騎士団周辺で「リディア様は普段とんでもなく怖く、目付きの鋭い料理長をデレさせた」と有名になったとかならなかったとか……




挿絵(By みてみん)挿絵(By みてみん)

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